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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
1,1,2,2-テトラクロロエタン (別名:四塩化アセチレン)
作成日 2008年10月06日
改訂日 2015年3月31日
改訂日 2022年03月15日
1.化学品及び会社情報
化学品の名称1,1,2,2-テトラクロロエタン (別名:四塩化アセチレン)
化学品の英語名称1,1,2,2-Tetrachloroethane
製品コードR03-C-053-MHLW
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限溶剤 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 ※一部、ガイダンスVer.1.0 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
急性毒性(吸入:蒸気)区分3
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2A
生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分1B
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1(中枢神経系、肝臓、腎臓)、区分3(気道刺激性、麻酔作用)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1(中枢神経系、肝臓)
分類実施日
(環境有害性)
ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009)
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分2
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有害
吸入すると有毒
皮膚刺激
強い眼刺激
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれ
中枢神経系、肝臓、腎臓の障害
呼吸器への刺激のおそれ
眠気またはめまいのおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による中枢神経系、肝臓の障害
水生生物に毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
口をすすぐこと。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名1,1,2,2-テトラクロロエタン
慣用名又は別名四塩化アセチレン
英語名1,1,2,2-Tetrachloroethane
Acetylene tetrachloride
1,1-Dichloro-2-2,dichloroethane
Ethane, 1,1,2,2-tetrachloro-
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C2H2Cl4 (167.85)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号79-34-5
官報公示整理番号(化審法)2-56
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
医師に連絡すること。
気分が悪いときは医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:咳。咽頭痛。頭痛。吐き気。嘔吐。めまい。嗜眠。痙攣。意識喪失。
皮膚:吸収される可能性あり。発赤。皮膚の乾燥。他の症状については、「吸入」参照。
眼:充血。痛み。
経口摂取:腹痛。吐き気。嘔吐。他の症状については、「吸入」参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤小火災:粉末消火剤、二酸化炭素、散水
大火災:散水、水噴霧、一般の泡消火剤
使ってはならない消火剤棒状注水
火災時の特有の危険有害性火災の場合、有害物質(塩化水素、塩素、ホスゲン)が放出される可能性がある。
特有の消火方法安全にできるのであれば、火災の場所から損傷していない容器を移動する。
消火水をせき止め、後で廃棄する。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。
容器内に水を入れてはいけない。
消火後も大量の水を用いて容器を冷却する。
安全弁から音が発生したり、タンクが変色したときは直ちに避難する。
火災に巻き込まれたタンクから常に離れる。
大火災の場合は、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。これが不可能な場合にはその場所から避難し、燃えるままにしておく。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具を着用する。
密閉型防護服を着用する。
防火服は、熱に対する防護はするが、化学物質に対しては限定的である。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置適切な呼吸器用保護具を着用する。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
耐薬品用保護衣を着用する(火災の危険性がない時)
適切な防護衣を着けていないときは、破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
流出や漏れている場所から、全ての方向に適切な距離をとる。
必要により、風下に適切な隔離距離をとる。
環境に対する注意事項環境汚染を引き起こすおそれがある。
この物質を環境中に放出してはならない。
漏出物を地面や河川や下水に直接流してはいけない。
封じ込め及び浄化の方法及び機材危険でなければ、漏れを止める。
排水溝、下水溝、地下室や狭い場所への流入を防ぐ。
プラスチックシートで覆いをし、散乱を防ぐ。
乾燥した土、砂や不燃性物質で吸収し、あるいは覆って容器に移す。
容器内に水をいれてはいけない。
専門家に相談する。
換気。
漏れた液を、ふた付きの容器に集める。
地域規則に従って保管・処理する。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
強塩基、アルカリ金属から離しておく。
冷所。
暗所に保管。
床面に沿って換気。
安全な容器包装材料適切な材料:ガラス、鋼、スズ
不適切な材料:アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、プラスチック(耐性のないもの)
国連危険物輸送勧告モデル規則で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度1 ppm
許容濃度等
日本産衛学会(2021年版)許容濃度: 1 ppm、6.9 mg/m3(皮)
ACGIH(2022年版)TLV-TWA: 1 ppm(Skin)
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
作業場では全体換気を行う。
設備は可能であれば密閉系とし局所排気装置を用いる。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を着用する。
防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。
-防毒マスクは、日本工業規格(JIS T8152)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
-濃度に対応した有機ガス用吸収缶を使用する
-作業者が粉塵に暴露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。
手の保護具保護手袋を着用する。
不浸透性手袋の使用を検討すること。
眼の保護具保護眼鏡を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い特異臭、フェノール臭
融点/凝固点-42.5 ℃(ICSC(2017)、GESTIS(2022))
-42.3 ℃(PubChem(2022))
-43.8 ℃(PubChem(2022))
沸点、初留点及び沸騰範囲146 ℃(ICSC(2017)、GESTIS(2022))
146.5 ℃(PubChem(2022))
可燃性不燃性(ICSC(2017))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界20-54 〜54 %Vol.(Lange(16th, 2005))
引火点データなし
自然発火点データなし
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率1.11 mm2/s(20℃)(ICSC(2017))
溶解度水: 0.29 g/100 ml(20℃)(ICSC(2017)、GESTIS(2022))
水: 2.83 mg/L(25℃)(PubChem(2022))
n-オクタノール/水分配係数Log Kow: 2.39 (ICSC(2017)、GESTIS(2022))
蒸気圧647 Pa(20℃)(ICSC(2017))
6.4 hPa(20℃)(GESTIS(2022))
5.74 mm Hg(25℃)(PubChem(2022))
密度及び/又は相対密度1.59 (水=1)(ICSC(2017))
1.597 g/cm3(20℃)(GESTIS(2022))
1.5953 g/cu cm(20℃)(PubChem(2022))
相対ガス密度5.8 (空気=1)(ICSC(2017))
5.8 (同じ温度と圧力での乾燥空気に対する密度の比率)(GESTIS(2022))
5.79 (空気=1)(PubChem(2022))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性密閉された冷暗所で安定
危険有害反応可能性不燃性。蒸気は空気より重い。加熱や空気、紫外線および水分の影響下で分解する。空気にさらされると、ゆっくりと分解してトリクロロエチレンと微量のホスゲンが生じる。水分存在下で化合物は塩酸の発生とともに徐々に分解する。紫外線にさらされると、テトラクロロエタンは分解し、2,2-ジクロロアセチルクロリドを形成する。火災により塩化水素およびホスゲンなどの、有毒で腐食性のガスを生じる。アルカリ金属、強塩基および金属粉末と激しく反応する。有毒で腐食性のガスを生じる。プラスチック類およびゴムを侵す。
避けるべき条件熱、空気、紫外線、水
混触危険物質酸化剤、強塩基、アルカリ金属、金属粉末
危険有害な分解生成物塩化水素、ホスゲンなど

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値として、200 mg/kg (環境省リスク評価第8巻 (2010))、250 mg/kg (ATSDR (2008))、319 mg/kg (ATSDR (2008)、ACGIH (7th, 2001))、330 mg/kg (ATSDR (2008))、800 mg/kg (ATSDR (2008))、1,000 mg/kg (CICAD 3 (1998))、250-330 mg/kg (CICAD 3 (1998))、200-800 mg/kg (IRIS TR (2010))、250-800 mg/kg (SIDS (2005)) の9件 (6データ) の報告がある。分類ガイダンスに基づき、最も多くのデータ (4件) が該当する区分4とした。なお、2データは区分3に該当する。新たな情報源 (環境省リスク評価第8巻 (2010)、IRIS TR (2010)、ATSDR (2008)、SIDS (2005)) を追加して区分を見直した。
経皮ウサギのLD50値として、3,990-8,200 mg/kg の範囲で複数件の報告 (ATSDR (2008)、SIDS (2005)、ACGIH (7th, 2001)、CICAD 3 (1998)) に基づき、区分に該当しないとした。
吸入: ガスGHSの定義における液体である。
吸入: 蒸気ラットのLC50値 (4時間) として、640 ppm (SIDS (2005))、1,000 ppm (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2001))、1,200 ppm (IRIS TR (2010)、ATSDR (2008)、SIDS (2005)) との報告に基づき、区分3とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (6,078 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入: 粉じん及びミストデータ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性ウサギの皮膚に本物質の原液0.01 mLを24時間開放適用した結果、皮膚一次刺激指数6 (最大値8) で強い刺激性を示したとの報告がある (SIDS (2005))。また、ウサギを用いた別の試験では、充血、浮腫、重度の水疱形成がみられたとの報告 (ATSDR (2008)) や、紅斑がみられ皮膚一次刺激指数2.6 (最大値8) であることから中等度の刺激性ありとの報告 (IUCLID (2000)) がある。以上の結果から区分2とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性ウサギの眼に本物質の原液0.1 mLを適用した試験において眼刺激性スコアは42.5/110で「刺激性あり」 との報告 (SIDS (2005)) や、モルモットに対する蒸気ばく露で「刺激性あり」との報告 (ACGIH (7th, 2001)、CICAD 3 (1998)、ATSDR (2008)) がある。また、ヒトにおいて刺激性が認められる (ATSDR (2008))。以上の結果から区分2Aとした。
呼吸器感作性データ不足のため分類できない。
皮膚感作性データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性In vivoでは、ラットの優性致死試験で陰性、ラットの骨髄細胞の染色体異常試験で弱陽性 (雌)、陰性 (雄)、マウス (雌雄) の末梢血の小核試験で陽性、マウス肝細胞の不定期DNA合成試験で陽性、陰性、マウス及びラットの肝臓、腎臓、肺、胃のDNA結合試験で陽性である (環境省リスク評価第8巻 (2010)、ATSDR (2008)、SIDS (2005)、NTP DB (Access on September 2014)、IARC 71 (1999))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、染色体異常試験で陰性、姉妹染色分体交換試験で陽性である (環境省リスク評価第8巻 (2010)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1984)、SIDS (2005)、ATSDR (2008)、CICAD 3 (1998)、NTP DB (Access on September 2014))である。以上より、ガイダンスに従い、区分2とした。
発がん性【分類根拠】
(1)より、動物種1種(マウス)であるが適正な試験で雌雄両性に肝細胞がんの増加傾向と発生頻度の増加がみられたことから、動物実験において発がん性の十分な証拠があると判断し、区分1Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。旧分類から健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質に追加されたため、発がん性項目のみ見直した(2021年)。

【根拠データ】
(1)ラット及びマウスを用いた78週間強制経口投与(投与期間終了後ラットは32週間、マウスは12週間観察後にと殺)による発がん性試験において、マウスの試験(雌雄:0、142、282 mg/kg/day)では雌雄ともに肝細胞がんの増加傾向と発生頻度の増加がみられた。ラットの試験(雄:0、62、108 mg/kg/day、雌:0、43、76 mg/kg/day)では雄の高用量群で肝臓腫瘍(肝細胞腺腫と肝細胞がんの組合せ)の発生率に有意な増加はみられなかったが、背景データを上回った。また、2/49例に認められた肝細胞がんはこの系統(Osborne-Mendel)のラットでは稀な腫瘍であった(IARC 106 (2014)、IRIS (2010)、MOE 初期評価 (2010)、ACGIH (7th, 2001))。
(2)本物質は厚生労働省化学物質による健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質である。なお、IARCでグループ2Bに追加されていることががん原生指針の対象物質の指定根拠である(令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第27号)。
(3)国内外の評価機関による既存分類結果として、IARCではグループ2Bに(IARC 106 (2014))、日本産業衛生学会では第2群Bに(産衛学会許容濃度等の勧告 (2021):2015年提案)、EPAではL(Likely to be carcinogenic to humans)に(IRIS (2010))、ACGIHではA3に(ACGIH (7th, 2001))、DFGではCategory 4に(List of MAK and BAT values (2020))、それぞれ分類している。
生殖毒性ラットを用いた吸入経路での生殖毒性試験 (投与群の雄と無処置の雌の交配) において、雄の生殖能、児に影響がみられていない (環境省リスク評価第8巻 (2010)、ATSDR (2008)、SIDS (2005)、ACGIH (7th, 2001))。しかし、この試験は1用量 (0及び2 ppm) の試験であり、信頼性に乏しい。
ラット、マウスを用いた経口経路 (混餌) での催奇形性試験 (用量設定試験) において、母動物毒性 (体重増加抑制、死亡) がみられる用量で胎児の体重減少、胚吸収の報告がある (環境省リスク評価第8巻 (2010)、SIDS (2005)、NTP (1991))。SIDS (2005) には、限られたデータから発生毒性を正しく評価することはできないとの記載がある。
ラット、マウスを用いた経口経路での反復投与毒性試験において、精巣、精巣上体の重量減少、精巣の萎縮、精子の活動性低下、性周期の異常の報告がある (環境省リスク評価第8巻 (2010)、SIDS (2005)、CICAD 3 (1998))。しかし、体重抑制との関連性の指摘 (NTP TOX 49 (2004)) や、より長期 (78週) のラットとマウスの試験では生殖器官への影響は認められていない (環境省リスク評価第8巻 (2010)、SIDS (2005)、CICAD 3 (1998))。
一方、生殖機能や生殖能力に関するデータがほとんどない。
したがって、データ不足により分類できないとした。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)本物質は、気道刺激性及び麻酔作用がある (SIDS (2005)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2008)、CICAD 3 (1998))。本物質の主要な影響は、中枢神経系、肝臓、腎臓との記載がある (環境省リスク評価第8巻 (2010)、ACGIH (7th, 2001)、CICAD 3 (1998)、PATTY (6th, 2012))。ヒトにおいては、吸入ばく露で、腹痛、咳、咽頭痛、頭痛、吐き気、嘔吐、眩暈、嗜眠、錯乱、振戦、痙攣、経口摂取では腹痛や吐き気、嘔吐が認められている。また、経路不明ながら、自殺、事故、作業者、ボランティアのばく露などの報告で、混迷、平衡感覚喪失、眠気、痙攣、昏睡、振戦、眩暈、中枢神経系機能低下、意識喪失、協調運動障害、知覚麻痺、傾眠など中枢神経系への影響、肝細胞崩壊、肝変性、肝うっ血、肝壊死、肝脂肪変性、重度の肝障害、黄疸、肝肥大などの肝臓への影響、尿細管損傷など腎臓への影響、肺のうっ血、肺水腫、心外・内膜の出血、食道、胃粘膜のうっ血、死亡が報告されている (環境省リスク評価第8巻 (2010)、ACGIH (7th, 2001)、CICAD 3 (1998)、PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on August 2014)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1984)、SIDS (2005)、ATSDR (2008))。
実験動物では、致死量を超えない濃度のばく露で主要標的臓器は中枢神経系であり、遅延性の麻酔作用様症状及び肝細胞変性 (2週間観察期間の終わりに観察されている) の報告がある (SIDS (2005))。また、マウスの1,091 ppm (7.49 mg/L) 吸入ばく露 (30分) で、反射反応低下、ラットの200 ppm (1.37 mg/L) 吸入ばく露 (6時間) で、自発運動減少 (ACGIH (7th, 2001))、その他、運動失調、衰弱、麻酔作用の報告がある (ATSDR (2008))。
以上より、ヒトにおける中枢神経系、肝臓、腎臓への影響、気道刺激性、麻酔作用を影響とみなし、区分1 (中枢神経系、肝臓、腎臓)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。なお、肺への影響 (肺のうっ血、肺水腫)は二次的変化とみなし、区分の対象としなかった。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)本物質に63-686 mg/m3の濃度で職業ばく露を受けたインドの作業者380名の疫学調査で、中枢神経症状 (振戦、頭痛、めまい)、消化器症状 (食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛) がみられた (ATSDR (2008)、SIDS (2005)、ACGIH (7th, 2001)、CICAD 3 (1998)、環境省リスク評価第8巻 (2010)) との記述、本物質に10-1,700 mg/m3の濃度でばく露を受けたハンガリーの作業者の疫学調査で、触診と肝機能検査により約半数例が肝炎と診断され、一部は肝機能異常、肝臓の肥大もみられ、また食欲不振、頭痛、胃痛などの症状もみられた (ATSDR (2008)、CICAD 3 (1998)、環境省リスク評価第8巻 (2010))との記述より、中枢神経系、肝臓、消化管が標的臓器と考えられた。ただし、消化器症状については、特定の症状とばく露濃度との間に相関がなく、ばく露中止により早期に消失する (ATSDR (2008)) との記述があり、消化器を特定標的臓器とするには質的に客観的な証拠を欠いているものと考えた。
実験動物ではラット及びマウスに14週間混餌投与した試験において、ラットでは区分2の用量範囲 (20-80 mg/kg/day) で肝臓への影響 (肝細胞空胞化、肝細胞肥大、壊死、色素沈着、血清ALT、SDH (sorbitol dehydrogenase) の上昇) がみられ、マウスでも肝臓相対重量の増加、血清SDHの上昇が80 mg/kg/dayでみられた (IRIS (2010)、ATSDR (2008)、PATTY (6th, 2012)) との記述より、肝臓が標的臓器である。さらに、ラットに3週間混餌投与した試験で、区分2相当用量 (104-208 mg/kg/day (90日換算: 24-48 mg/kg/day相当)) で、肝臓への影響 (肝細胞の肥大、空胞化) に加え、中枢神経症状として嗜眠がみられた (SIDS (2005)、ATSDR (2008))。この他、1濃度のみの試験であるが、ラット15週間吸入ばく露試験でも、560 ppm (3,850 mg/m3: 区分に該当しない相当) のばく露で初期に中枢抑制症状がみられた (SIDS (2005)) との記述がある。
以上、ヒト及び実験動物での有害性知見から、区分1 (中枢神経系、肝臓) に分類した。
誤えん有害性*データ不足のため分類できない。なお、20℃での動粘性率は1.11 mm2/sec (計算値: HSDB (Access on August 2014)) であるが、「炭化水素」ではなく、分類の判定基準に該当しない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50=9.3mg/L(SIDS、2005)他から、区分2とした。
水生環境有害性 長期(慢性)急性毒性が区分2であるものの、甲殻類(オオミジンコ)の28日間NOEC=6.9mg/L(SIDS、2005)他から判断して、区分に該当しないとした。
残留性・分解性化審法分解度試験:難分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性化審法濃縮度試験:低濃縮性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号1702
品名(国連輸送名)1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン
国連分類6.1
副次危険-
容器等級U
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報該当しない
特別な安全上の対策該当しない
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*151
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法特定化学物質第2類物質、特別有機溶剤等(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2号、第3の2号、第3の3号)
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項)
作業環境評価基準(法第65条の2第1項)
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)(令和5年度分以降の対象)
第二種指定化学物質(法第2条第3項、施行令第2条別表第2) (令和4年度までの対象)
毒物及び劇物取締法該当しない
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)
海洋汚染防止法有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)
個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)
船舶安全法毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」