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安全データシート
メチルエチルケトン
作成日 2008年10月06日
改訂日 2015年3月31日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称メチルエチルケトン (再分類)
製品コードH26-B-0100(製品コードなし)
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限硝酸セルロース及び各種合成樹脂、ラッカー用溶剤、ブナN用接着剤、印刷インキ用、人造皮革、潤滑油精製用溶剤、加硫促進剤、中間物、洗浄剤化粧品原料(爪化粧品)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日H25.8.22、政府向けGHS分類ガイダンス(H25.7版)を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性引火性液体区分2
健康に対する有害性急性毒性 (吸入:蒸気) 区分4
皮膚腐食性及び刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性区分2A
特定標的臓器毒性(単回ばく露)区分2 (腎臓)、
区分3 (気道刺激性、麻酔作用)
特定標的臓器毒性(反復ばく露)区分1 (神経系)
分類実施日環境に対する有害性はH18.3.31、GHS分類マニュアル(H18.2.10 版)を使用
環境に対する有害性分類できない
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」に該当する。なお、健康有害性については後述の11項に、「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」の記述がある。
GHSラベル要素
絵表示炎感嘆符健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報引火性の高い液体及び蒸気
皮膚刺激
強い眼刺激
吸入すると有害
呼吸器への刺激のおそれ
眠気又はめまいのおそれ
腎臓の障害のおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系の障害
注意書き
安全対策熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地すること/アースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
気分が悪い時は医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診断、手当てを受けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名メチルエチルケトン(Methyl ethyl ketone)
別名2−ブタノン (2-Butanone)
エチルメチルケトン(MEK)
濃度又は濃度範囲99%以上
分子式 (分子量)C4H8O
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号78-93-3
官報公示整理番号(化審法)(2)-542
官報公示整理番号(安衛法)(2)-542
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
特別処置(緊急の処置が必要な場合、補足の応急処置指示を参照)。
皮膚に付着した場合皮膚を速やかに洗浄すること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する前に洗濯すること。
医師に連絡すること。
皮膚刺激が生じた場合、気分が悪い時は、医師の診断、手当てを受けること。
特別処置(緊急の処置が必要な場合、補足の応急処置指示を参照)。
眼に入った場合水で数分間、注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が持続する場合、気分が悪い時は、医師の診断、手当てを受けること。
特別処置(緊急の処置が必要な場合、補足の応急処置指示を参照)。
飲み込んだ場合医師に連絡すること。
気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
口をすすぐこと。
特別処置(緊急の処置が必要な場合、補足の応急処置指示を参照)。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入による呼吸器官への刺激、咳、息切れ。
飲込みによる胃腸の刺激、吐き気、嘔吐、下痢。
接触による皮膚の刺激と脱脂及び眼の刺激、発赤、痛み。
過度のばく露で麻酔作用、頭痛、めまい、視野狭窄、吐き気、下痢及び意識喪失。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
消火剤小火災:二酸化炭素、粉末消火剤、散水、耐アルコール性泡消火剤
大火災:散水、噴霧水、耐アルコール性泡消火剤
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性極めて燃え易い、熱、火花、火炎で容易に発火する。
加熱により容器が爆発するおそれがある。
火災によって刺激性、毒性、又は腐食性のガスを発生するおそれがある。
引火性の高い液体及び蒸気
特有の消火方法散水によって逆に火災が広がるおそれがある場合には、上記に示す消火剤のうち、散水以外の適切な消火剤を利用すること。
引火点が極めて低い:散水以外の消火剤で消火の効果がない大きな火災の場合には散水する。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
移動不可能な場合、容器及び周囲に散水して冷却する。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置漏洩物に触れたり、その中を歩いたりしない。
直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触やガスの吸入を避ける。
適切な防護衣を着けていないときは破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
漏洩しても火災が発生していない場合、密閉性の高い、不浸透性の保護衣を着用する。
風上に留まる。
低地から離れる。
密閉された場所に立入る前に換気する。
環境に対する注意事項河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
環境中に放出してはならない。
封じ込め及び浄化の方法及び機材危険でなければ漏れを止める。
漏出物を取扱うとき用いる全ての設備は接地する。
蒸気抑制泡は蒸発濃度を低下させるために用いる。

回収、中和:少量の場合、乾燥土、砂や不燃材料で吸収し、あるいは覆って密閉できる空容器に回収する。
少量の場合、吸収したものを集めるとき、清潔な帯電防止工具を用いる。
大量の場合、盛土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いて回収する。
大量の場合、散水は、蒸気濃度を低下させる。しかし、密閉された場所では燃焼を抑えることが出来ないおそれがある。

二次災害の防止策: すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。
排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策『8.ばく露防止及び保護措置』に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
『8.ばく露防止及び保護措置』に記載の局所排気、全体換気を行う。
安全取扱い注意事項周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
容器を転倒させ、落下させ、衝撃を加え、又は引きずるなどの取扱いをしてはならない。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
眼との接触を避けること。
接触、吸入又は飲み込まないこと。
屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
接触回避『10.安定性及び反応性』を参照。
保管
安全な保管条件熱、火花、裸火のような着火源から離して保管すること。-禁煙。
酸化剤から離して保管する。
容器は直射日光や火気を避けること。
容器を密閉して換気の良い場所で保管すること。
施錠して保管すること。

技術的対策:
保管場所は壁、柱、床を耐火構造とし、かつ、はりを不燃材料で作ること。
保管場所は屋根を不燃材料で作るとともに、金属板その他の軽量な不燃材料でふき、かつ天井を設けないこと。
保管場所の床は、床面に水が浸入し、又は浸透しない構造とすること。
保管場所の床は、危険物が浸透しない構造とするとともに、適切な傾斜をつけ、かつ、適切なためますを設けること。
保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
安全な容器包装材料消防法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度200ppm
許容濃度
日本産衛学会(2014年度版) 200ppm 590mg/m3
ACGIH(2014年版)TLV-TWA (200 ppm)
TLV-STEL (300 ppm)
設備対策製造業者が指定する防爆の電気・換気・照明機器を使用すること。

静電気放電に対する予防措置を講ずること。
この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行なうこと。
高熱工程でミストが発生するときは、空気汚染物質を管理濃度以下に保つために換気装置を設置する。
保護具
呼吸用保護具適切な呼吸器保護具を着用すること。
手の保護具適切な保護手袋を着用すること。
眼の保護具適切な眼の保護具を着用すること。
保護眼鏡(普通眼鏡型、側板付き普通眼鏡型、ゴーグル型)
皮膚及び身体の保護具適切な呼吸器保護具を着用すること。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状液体: ICSC(J) (1998)
無色: ICSC(J) (1998)
臭い特徴的な臭気 : ICSC(J) (1998)
臭いのしきい(閾)値情報なし
pH情報なし
融点・凝固点-86℃(融点): GESTIS(2014)
沸点、初留点及び沸騰範囲80℃(沸点): GESTIS(2014)
引火点-9℃ (closed cup): HSDB(2014)
蒸発速度(酢酸ブチル=1)情報なし
燃焼性(固体、気体)非該当
燃焼又は爆発範囲下限 1.8 vol%、上限 11.5 vol%: ICSC(J) (1998)
蒸気圧10.5kPa (20℃) : ICSC(J) (1998)
蒸気密度2.41 :ICSC(J) (1998)
比重(相対密度)0.805 (20℃/4℃): Merck (Access on June 2005)
溶解度水: 27.5% : Merck (Access on June 2005)
アルコール、ベンゼン、エーテル:可溶 :Merck (Access on June 2005)
n-オクタノール/水分配係数logPow=0.29: ICSC(J) (1998)
自然発火温度475℃:GESTIS(2014), 404℃: HSDB(2014)
分解温度情報なし
粘度(粘性率)0.40mPa・s (20℃) :Ullmanns (E) (5th, 1995)

10.安定性及び反応性
反応性情報なし
化学的安定性通常の取扱では安定である。
危険有害反応可能性強酸化剤と激しく反応して発火する。
塩基性物質、還元剤と反応する。
酸化剤との反応により爆発性過酸化物を生成する。
避けるべき条件加熱
混触危険物質酸化剤、塩基性物質、還元剤
危険有害な分解生成物加熱分解により一酸化炭素、ニ酸化炭素を生じる

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値として、2,737mg/kg (環境省リスク評価第6巻 (2008)、IRIS TR (2003)、ATSDR (1992))、5,522 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、IRIS TR (2003)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1992)、EHC 143 (1992))、2,000-6,000 mg/kg (DFGOT vol. 12 (1999)、EHC 143 (1993))、2,600-5,400 mg/kg (SIDS (2011)) との報告に基づき、区分外とした。新たな情報源 (PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価第6巻 (2008)、DFGOT vol. 12 (1999)) を追加し、区分を見直した。
経皮ウサギのLD50値として、> 5,000 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、6,480 mg/kg (環境省リスク評価第6巻 (2008))、> 8,000 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 12 (1999)、EHC 143 (1993)、ATSDR (1992))、6,400-8,000 mg/kg (SIDS (2011))、13,000mg/kg (PATTY (6th, 2012)) との報告に基づき、区分外とした。
吸入:ガスGHSの定義における液体である。
吸入:蒸気ラットのLC50値 (4時間) として、11,700ppm との報告 (PATTY (6th, 2012)、IRIS TR (2003)、EHC 143 (1993)、ATSDR (1992)) に基づき、区分4とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (103,653 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。情報源 (PATTY (6th, 2012)) を更新し、区分を見直した。
吸入:粉じん及びミストデータ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性本物質をウサギの皮膚に適用した結果、軽度から中等度の刺激性ありとの報告や (SIDS (2011)、EHC 143 (1993)、DFGOTvol. 12 (1999))、軽度の刺激性ありとの報告がある (EHC 143 (1993)、DFGOT vol. 12 (1999)、PATTY (6th, 2012)、ATSDR (1992))。また、ヒトでは、ばく露による刺激性はみられなかったとの報告がある (PATTY (6th, 2012))。以上、ウサギの「中等度の刺激」に基づき区分2とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性本物質をウサギの眼に適用した結果、重度の刺激性がみられたとの報告があり (SIDS (2011)、EHC 143 (1993)、DFGOT vol. 12 (1999)) 、角膜障害や強膜の出血、瞼の浮腫、化学火傷がみられたとの報告がある (EHC 143 (1993))。その他に、ウサギへの適用試験において、24時間後の評点の平均値は角膜混濁2.5、結膜発赤2であったが、7日以内にほぼ回復していたとの報告や (ECETOC TR48 (1992))、軽度の刺激性ありとの報告がある (EHC 143 (1992)、DFGOT vol.12 (1999)、PATTY (6th, 2012)、ATSDR (1992))。ヒトでは、本物質のばく露により刺激性がみられたとの報告 (PATTY (6th, 2012))、刺激性はみられなかったとの報告の両方がある (PATTY (6th, 2012))。以上、「重度の刺激」に基づき区分2Aとした。なお、本物質はEU DSD分類において「Xi; R36」、EU CLP分類において「Eye Irrt.2 H319」に分類されている。
呼吸器感作性データ不足のため分類できない。
皮膚感作性データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、マウス及びチャイニーズハムスター骨髄細胞の小核試験で陰性である(環境省リスク評価第6巻 (2008)、SIDS (2011)、EHC 143 (1993)、IRIS TR (2003)、PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 12 (1999))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、染色体異常試験で陰性である (NTP DB (Access on October 2014)、IRIS TR (2003)、環境省リスク評価第6巻 (2008)、ACGIH (7th, 2001)、SIDS (2011)、EHC 143 (1993)、PATTY (6th, 2012))。
発がん性EPAでI (inadequate) に分類されている (IRIS (2003)) ことから、「分類できない」とした。
生殖毒性ラットを用いた吸入経路での催奇形性試験において、母動物に影響 (体重増加抑制) のみられる用量 (3000 ppm) においても胎児に対してわずかな影響 (骨化遅延、過剰肋骨) がみられたのみで、奇形はみられていないとの報告がある (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2011)、 環境省リスク評価第6巻 (2008)、IRIS (2003) ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.12 (1999))。また、マウスを用いた吸入経路での催奇形性試験において、母動物毒性 (肝臓の相対重量増加、腎臓の相対重量増加) がみられる用量 (3,000 ppm) において胎児にわずかな影響 (胎児体重減少) がみられたが有意な奇形の発生はみられていないとの報告がある (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2011)、 環境省リスク評価第6巻 (2008)、IRIS (2003) ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.12 (1999))。
以上、催奇形性はみられていない。旧分類では催奇形性試験の結果のみから区分外と分類していたが、生殖能に関する試験の報告がないことから分類できないとした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)本物質は気道刺激性及び麻酔作用がある(環境省リスク評価第6巻 (2008)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1992))。ヒトにおいては、吸入ばく露で、頭痛、めまい、悪心、嘔吐、運動失調、眼のかすみ、ふらつき、過呼吸、眩暈、嗜眠、中枢神経系抑制作用、代謝性アシドーシス、意識喪失、経口摂取では意識喪失の報告がある (PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価第6巻 (2008)、HSDB (Access on September 2014)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1992)、EHC 143 (1993)、IRIS TR (2003))。
実験動物では、麻酔作用、ラットの経口投与1,080 mg/kgで腎臓の軽度の腎尿細管壊死が認められている (ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1992)、EHC 143 (1993)、PATTY (6th, 2012)、IRIS TR (2003)、HSDB (Access on September 2014))。ラットの腎臓への影響は区分2の範囲の用量で認められた。本物質は腎臓への影響、並びに気道刺激性、麻酔作用を有すると考えられる。
以上より、区分2 (腎臓)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)ヒトでは本物質以外に他の溶媒へのばく露を含まない有害性知見として、慢性的な職業ばく露により、ニューロパシー (神経症) との診断には至らないが、神経伝達速度の低下がみられたとするイタリアでの報告、及び手指と腕の無感覚感を訴えた米国工場作業者の例が報告されており (EHC 143 (1993) , DFGOT vol. 12 (1999))、これらの職業ばく露事例の知見より初期には本物質の反復ばく露影響として、ヒトで神経系障害の発生が懸念された。一方、IRISは関連する症例報告及び疫学研究結果は、ばく露の状況が明確でないこと、他の物質の混合ばく露であることなど問題があり、職場での本物質への反復ばく露が慢性的な神経障害の危険性を増加させるとの証拠は限定的で不確実であると結論している (IRIS TR (2003))。しかし、ACGIH は上気道への刺激のみならず、本物質又は本物質を含む溶媒への吸入ばく露による中枢及び末梢神経系への有害性影響を回避することを目的に本物質のTLV値を設定しており (ACGIH (7th, 2001))、本物質の単独又は他の溶剤との複合反復ばく露による影響として、神経系障害の発生を否定する強固な証拠は依然としてないと考えられる。
一方、実験動物ではラットに本物質蒸気を5,000 ppm (14.7 mg/L: 1 ppm= 2.91 mg/m3 (ACGIH (7th, 2001)) で、90日間吸入ばく露したが、体重増加抑制、肝臓の重量増加 (生体適応反応と考えられた) 以外に、一般毒性学的影響、神経毒性影響ともにみられていない (SIDS (2011)、EHC 143 (1993)、IRIS TR (2003)、環境省リスク評価第6巻 (2008))。この他、神経毒性の有無を検討したラットでの複数の吸入ばく露試験において、いずれも神経毒性は陰性の結果を示し (SIDS (2011))、本物質はn-ヘンキサンのようにジケトン代謝物 (直接的な神経毒性物質) を生成しないため、神経毒性を生じないと考察されている (SIDS (2011))。
以上、ヒトで本物質の単独又は他の溶剤との複合反復ばく露により、中枢及び末梢神経系への有害性影響が生じる懸念は依然として持続していると考えられたため、区分1 (神経系) に分類した。
吸引性呼吸器有害性13を超えない炭素原子で構成されたケトンで、動粘性率が0.50 mm2/sec (25℃、CERI計算値) であり、区分2に該当するため、現行分類ガイダンスに従い分類できない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性(急性)魚類(ヒメダカ)の96時間LC50>100mg/L(環境省生態影響試験、1996)から、区分外とした。
水生環境有害性(長期間)難水溶性でなく(水溶解度=2.23×105mg/L(PHYSPROP Database、2005))、急性毒性が低いことから、区分外とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、分類実施中の12項の環境影響情報とに、基づく修正の必要がある。
国際規制
国連番号1193
国連品名ETHYL METHYL KETONE
国連危険有害性クラス3
副次危険 -
容器等級II
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報消防法の規定に従う。
特別安全対策危険物は当該危険物が転落し、又は危険物を収納した運搬容器が落下し、転倒もしくは破損しないように積載すること。
危険物又は危険物を収納した容器が著しく摩擦又は動揺を起こさないように運搬すること。
危険物の運搬中、危険物が著しく漏れる等災害が発生するおそれがある場合には、災害を防止するための応急措置を講ずると共に、もよりの消防機関その他の関係機関に通報すること。
食品や飼料と一緒に輸送してはならない。
移送時にイエローカードの保持が必要。
緊急時応急措置指針番号127

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
化審法優先評価化学物質
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9)
名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)
危険物・引火性の物
第2種有機溶剤等
作業環境評価基準
毒物及び劇物取締法劇物
消防法第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体
船舶安全法引火性液体類
航空法引火性液体

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
<モデルSDSを利用するときの注意事項>
本安全モデルデータシートは作成年月日時点における情報に基づいて記載されておりますので、事業場においてSDSを作成するに当たっては、新たな危険有害性情報について確認することが必要です。さらに、本安全データシートはモデルですので、実際の製品等の性状に基づき追加修正する必要があります。また、特殊な条件下で使用するときは、その使用状況に応じた情報に基づく安全対策が必要となります。