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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
クロロホルム
作成日 2008年10月06日
改訂日 2016年3月31日
改訂日 2022年03月15日
1.化学品及び会社情報
化学品の名称クロロホルム
化学品の英語名称Chloroform
製品コードR03-C-059-MHLW
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限フッ素系冷媒、フッ素樹脂の製造、医薬反応溶媒、農薬反応溶媒、溶剤、試薬/フルオロカーボン原料、試薬、抽出溶剤、農薬、 医薬品 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 ※一部、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
急性毒性(吸入:蒸気)区分3
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分1
生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分2
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1(呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓)、区分3(麻酔作用)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1(中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓)
分類実施日
(環境有害性)
ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分3
水生環境有害性 長期(慢性)区分1
GHSラベル要素
絵表示どくろ腐食性健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有害
吸入すると有毒
皮膚刺激
重篤な眼の損傷
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれの疑い
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓の障害
眠気またはめまいのおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓の障害
水生生物に有害
長期継続的影響により水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
直ちに医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
口をすすぐこと。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名クロロホルム
慣用名又は別名トリクロロメタン
メチルトリクロリド
英語名Chloroform
Trichloromethane
Methane trichloride
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)CHCl3 (119.38)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号67-66-3
官報公示整理番号(化審法)2-37
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
直ちに医師に連絡すること。
飲み込んだ場合気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:咳。めまい。嗜眠。頭痛。吐き気。意識喪失。
皮膚:発赤。痛み。皮膚の乾燥。
眼:充血。痛み。
経口摂取:腹痛。嘔吐。他の症状については、「吸入」参照。
短期曝露の影響:眼を刺激する。中枢神経系、肝臓および腎臓に影響を与えることがある。これらの影響は、遅れて現われることがある。医学的な経過観察が必要である。
長期または反復曝露の影響:皮膚の脱脂を起こし、乾燥やひび割れを生じることがある。肝臓および腎臓に影響を与えることがある。人で発がん性を示す可能性がある。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項適切な空気呼吸器、防護服を着用する。
医師に対する特別な注意事項医師が暴露物質名を知り、防護のための注意を払うことを確認する。

5.火災時の措置
適切な消火剤小火災:粉末消火剤、二酸化炭素または散水。
大火災:散水、水噴霧または一般の泡消火剤。
使ってはならない消火剤棒状注水
火災時の特有の危険有害性不燃性。揮発性液体。蒸気は空気より重い。火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。高温面または炎と接触すると分解する。塩化水素、ホスゲン、塩素、有毒で腐食性のフュームを生じる。強塩基、強酸化剤およびアルミニウム、マグネシウム、亜鉛などのある種の金属と 激しく反応する。火災や爆発の危険を生じる。プラスチック類、ゴムおよび被覆剤を侵す。酸素の存在下では暗所でも分解する。
特有の消火方法安全にできるのであれば、火災の場所から損傷していない容器を移動する。
消火後も大量の水を用いて容器を冷却する。
大火災の場合は、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。これが不可能な場合にはその場所から避難し、燃えるままにしておく。
安全弁から音が発生したり、タンクが変色したときは直ちに避難する。火災に巻き込まれたタンクから常に離れる。
タンク、貨車あるいはタンク車が火災に巻き込まれた場合は、すべての方向に、適切な隔離距離と適切な初期避難距離をとる。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具を着用する。
防火服は、熱に対する防護はするが、化学物質に対しては限定的である。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置適切な呼吸器用保護具を着用する。
耐薬品用保護衣を着用する(火災の危険性がない時)

適切な防護衣を着けていないときは、破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
危険でなければ、漏れを止める。
蒸気抑制泡剤は蒸気濃度を低下させるために用いる。
環境に対する注意事項排水溝、下水溝、地下室や閉鎖場所への流入を防ぐ。
封じ込め及び浄化の方法及び機材プラスチックシートで覆いをし、散乱を防ぐ。
乾燥した土、砂や不燃物質で吸収し、あるいは覆って容器に移す。
容器内に水をいれてはいけない。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
安全な容器包装材料消防法及び国連危険物輸送勧告モデル規則で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度3 ppm
許容濃度等
日本産衛学会(2021年版)許容濃度: 3 ppm、14.7 mg/m3(皮)
ACGIH(2022年版)TLV-TWA: 10 ppm
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
作業場では全体換気を行う。
設備は可能であれば密閉系とし局所排気装置を用いる。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を着用する。
防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。
-防毒マスクは、日本工業規格(JIS T8152)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
-濃度に対応した有機ガス用吸収缶を使用する
-作業者が粉塵に暴露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。
手の保護具保護手袋を着用する。
不浸透性手袋の使用を検討すること。
眼の保護具保護眼鏡を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い特異臭、エーテル臭
融点/凝固点-64 ℃(ICSC(2000))
-63 ℃(ICSC(2000))
-63.47 ℃(PubChem(2022))
沸点、初留点及び沸騰範囲62 ℃(ICSC(2000))
61 ℃(ICSC(2000))
61〜62 ℃(760.00mmHg)(PubChem(2022))
可燃性不燃性(ICSC(2000))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界?〜12.9 vol%(推定値)(NITE総合検索 (2015))
引火点引火点なし(PubChem(2022))
自然発火点可燃性ではない(PubChem(2022))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水: 0.8 g/100 ml(20℃)(ICSC(2000)、GESTIS(2022))
水: 7.95X10+3 mg/L(25℃)(PubChem(2022))
PubChem(2022))
n-オクタノール/水分配係数Log Kow: 1.97(ICSC(2000)、GESTIS(2022))
蒸気圧212 kPa(20℃)(ICSC(2000))
209 hPa(20℃)(GESTIS(2022))
197 mm Hg(25℃)(PubChem(2022))
密度及び/又は相対密度1.48 g/cm3(20℃)(GESTIS(2022))
1.484 (20 ℃/20 ℃)(PubChem(2022))
相対ガス密度4.12 (空気=1)(ICSC(2000)、GESTIS(2022))
4.13 (危険物災害等支援システム(2022))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性推奨される保管条件下で安定。
危険有害反応可能性不燃性。揮発性液体。蒸気は空気より重い。火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。高温面または炎と接触すると分解する。塩化水素、ホスゲン、塩素、有毒で腐食性のフュームを生じる。強塩基、強酸化剤およびアルミニウム、マグネシウム、亜鉛などのある種の金属と 激しく反応する。火災や爆発の危険を生じる。プラスチック類、ゴムおよび被覆剤を侵す。酸素の存在下では暗所でも分解する。
避けるべき条件熱、空気、水
混触危険物質強塩基、強酸化剤、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛など
危険有害な分解生成物塩化水素、ホスゲン、塩素

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(4)より、区分4とした。旧分類からEUで急性毒性(吸入:蒸気)のGHS区分に変更があったため、急性毒性項目のみ見直したが、分類結果に変更はない(2021年)。

【根拠データ】
(1)ラット(雄)のLD50:908 mg/kg(OECD TG 401)(NITE初期リスク評価書 (2005)、食安委 清涼飲料水評価書 (2009)、DEF MAK (2000))
(2)ラット(雌)のLD50:1,117 mg/kg(OECD TG 401)(NITE初期リスク評価書 (2005)、食安委 清涼飲料水評価書 (2009)、DEF MAK (2000))
(3)ラット(雄)のLD50:445 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005)、ASTDR ,(1997)、CLH Report (2010))
(4)ラット(雄)のLD50:2,000mg/kg(ASTDR (1997)、DFG MAK (2000)、NITE初期リスク評価書 (2005))
経皮【分類根拠】
(1)より、ウサギのデータを採用し、区分に該当しないとした。旧分類からEUで急性毒性(吸入:蒸気)のGHS区分に変更があったため、急性毒性項目のみ見直したが、分類結果に変更はない(2021年)。

【根拠データ】
(1)ウサギのLD50:> 3,980 mg/kg(AICIS IMAP (2014))

【参考データ等】
(2)マウスのLD50:696〜3245 mg/kgの間(CERI有害性評価書 (2006))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
(1)〜(3)より、有害性の高い区分を採用し、区分3とした。なお、ばく露濃度は飽和蒸気圧濃度 の90%(233,290 ppm)より低いため、蒸気と判断し、ppmVを単位とする基準値より判断した。新たな知見に基づき、分類結果を変更した。旧分類からEUで急性毒性(吸入:蒸気)のGHS区分に変更があったため、急性毒性項目のみ見直した(2021年)。

【根拠データ】
(1)ラットのLC50(6時間):9.2 g/m3(4時間換算値:11.3 g/m3、2310 ppm)(詳細リスク評価書 (2007)、EURAR (2007)、AICIS IMAP (2014))
(2)ラットのLC50(4時間):9,770 ppm(ATSDR (1997)、US AEGL (2012))
(3)ラットのLC50(4時間):47,702 mg/m3(9,775 ppm) (MOE初期評価 (1999))

【参考データ等】
(4)本物質はEU CLHにおいて、区分3に分類されている。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。旧分類からEUで急性毒性(吸入:蒸気)のGHS区分に変更があったため、急性毒性項目のみ見直したが、分類結果に変更はない(2021年)。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質の原液を腹部皮膚に24時間適用した結果、軽度の充血、中等度の壊死及び痂皮形成がみられたとの報告 (EHC 163 (1994) や、NITE有害性評価書 (2008))、本物質の原液適用により重度の刺激性がみられたとの報告が (DFG vol.14 (2000)) ある。また、本物質をウサギの耳に1-4回適用した結果、軽微な充血及び表皮剥離がみられたとの報告がある (EHC 163 (1994)、NITE有害性評価書 (2008))。本物質は皮膚に対して刺激性を示すと記載がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2005)、CICAD 58 (2004))。以上より、区分2とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin. Irrit. 2 H315」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。非可逆的な影響について情報が無いため区分を変更した。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質を適用した結果、散瞳、角膜炎、角膜混濁を伴う強度の刺激性がみられ、4匹は2〜3週間で症状が消えたが、1匹は3週間後以降にも角膜混濁の症状が残ったとの報告がある (EHC 163 (1994))。また、結膜への軽微な刺激及び角膜の障害がみられたとの報告 (EHC 163 (1994)、NITE有害性評価書 (2008)) や、本物質は眼に対して刺激性を持つとの記載がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2005)、CICAD 58 (2004))。以上、投与3週間後に完全に回復性しなかったことから区分1とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
呼吸器感作性データ不足のため分類できない。
皮膚感作性データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性In vivoでは、トランスジェニックマウスの肝臓を用いた遺伝子突然変異試験で陰性、ラットの肝臓、腎臓細胞を用いた小核試験、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陽性あるいは陰性の結果、ラットの骨髄細胞、マウスの骨髄細胞、ハムスターの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で概ね陽性、マウスの骨髄細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果、ラットの腎臓を用いたDNA切断試験で陰性、ラット及びマウスの肝臓、腎臓を用いたDNA結合 (DNA付加体) 試験で弱陽性、陰性の結果、ラット、マウスの肝臓を用いた不定期DNA合成試験で陰性、マウスの肝臓、腎臓を用いたDNA修復試験で陰性である (NITE有害性評価書 (2008)、EU-RAR (2007)、CICAD 58 (2004)、DFGOT vol. 14 (2000)、IARC 73 (1999)、CEPA (2001)、ATSDR (1997))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、陽性の結果、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験で陽性、陰性の結果、染色体異常試験で陰性、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果、不定期DNA合成試験で陰性である (NITE有害性評価書 (2008)、EU-RAR (2007)、DFGOT vol. 14 (2000)、IARC 73 (1999)、ATSDR (1997)、CEPA (2001))。以上より、in vivo体細胞変異原性試験で陽性結果があり、ガイダンスに従い、区分2とした。
発がん性ヒトでは本物質の飲料水を介した経口ばく露による疫学研究において、多部位のがん、特に膀胱がん、結・直腸がんの過剰リスクの報告例があるが、副生物のトリハロメタンによる影響の可能性が高いこと、また、職場での本物質吸入ばく露による発がん影響に関する報告は統計解析による検出力が低く、前立腺がん、肺がんの過剰リスクは信頼性に疑問があることを指摘した上で、IARCは本物質のヒトにおける発がん性の証拠は不十分とした (IARC 73 (1999))。
一方、実験動物ではマウスを用いた経口経路による3試験、及びマウスの吸入経路による1試験において、腎尿細管腫瘍が認められ、1試験では肝細胞の腫瘍も認められたこと、またラットを用いた経口経路での3試験で、腎尿細管腫瘍が認められたことを挙げて、実験動物では発がん性の十分な証拠があるとして、IARCは1999年に「グループ2B」に分類した (IARC 73 (1999))。他の国際機関による本物質の発がん性分類としては、ACGIHが「A3」に (ACGIH (7th, 2001))、日本産業衛生学会が「2B」に (許容濃度の勧告 (2015))、EUが「Carc. 2」に (EU-RAR (2007))、EPAが1998年分類で”細胞毒性と再生性の過形成を生じるような高ばく露状況下では「 L (Likely to be carcinogenic to humans) 」、それ以外では「NL (Not likely to be carcinogenic to humans) 」” (IRIS Summary (Access on August 2015)) に、NTPが「R」 (NTP RoC (13th, 2014)) に、それぞれ分類されている。
以上、IARCを含む国際的な既存分類結果はほぼ合致しており、よって本項は区分2とした。
生殖毒性ヒトでは、本物質職業ばく露と自然流産のリスクの増加との相関性が報告されたが、他の溶媒への同時ばく露を伴う状況であったと記載されている (IRIS Tox Review (2001))。また、飲料水を介した本物質への経口ばく露により、本物質濃度と胎児の子宮内成長阻害との間に相関性がみられたとの報告があるが、塩素消毒により生成したトリハロメタンによる影響の可能性が指摘されている (IRIS Tox Review (2001)) など、本物質ばく露に特異的なヒト生殖能への有害影響について確実な情報はない。
実験動物では、マウスを用いた経口経路 (飲水) による多世代繁殖試験において、高用量群のF1、F2世代の動物では、体重増加抑制、生存率の低下とともに、繁殖指標 (妊娠率低下、同腹児数の減少、出産率の低下) の有意な低下がみられた (DFGOT vol. 14 (2000)、NITE有害性評価書 (2008)) との記述がある。一方、発生毒性影響に関しては、妊娠ラットの器官形成期 (妊娠6〜15日) に吸入ばく露した発生毒性試験において、ラットでは母動物毒性が発現する用量 (30、95 ppm) で、胎児には胎児重量、及び頭尾長の低値、骨格変異 (骨化遅延、波状肋骨)、皮下の浮腫とともに、奇形 (無尾、鎖肛、肋骨欠損) の頻度増加が認められた (DFGOT vol. 14 (2000)、CICAD 58 (2004)、NITE有害性評価書 (2008))。また、妊娠マウスの器官形成期 (妊娠8〜15日) に100 ppmを吸入ばく露 (一濃度のみでばく露時期を可変させた) した試験でも、母動物に体重増加抑制、軽微な妊娠率低下が、胎児に胎児毒性 (胎児重量及び頭尾長の低値、骨化遅延) とともに、奇形として口蓋裂の頻度増加がみられた (DFGOT vol. 14 (2000)、NITE有害性評価書 (2008)) との記述がある。なお、妊娠ラット、又は妊娠ウサギを用いた器官形成期強制経口投与による発生毒性試験では、母動物に一般毒性影響が発現する用量でも、胎児毒性は軽微 (胎児重量の低値、又は骨化遅延のみ)、ないしは無影響であったと報告されている (DFGOT vol. 14 (2000)、CICAD 58 (2004)、NITE有害性評価書 (2008))。
以上、吸入経路では実験動物で母動物毒性が発現する用量で、奇形を含む発生毒性影響が認められていることから、本項は区分2とした。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)本物質は気道刺激性がある (EU-RAR (2007))。ヒト、実験動物ともに多数の急性毒性データがある。ヒトにおいては、麻酔薬として使用された経緯がある。吸入ばく露により、麻酔作用、咳、眩暈、嗜眠、感覚鈍麻、頭痛、吐き気、嘔吐、腹部痛、衰弱、意識喪失、昏睡、痙攣発作、呼吸速迫、呼吸中枢麻痺、意識障害、急性呼吸不全、不整脈、心血管系抑制作用、心室細動、黄疸、肝細胞変性・壊死、腎尿細管壊死、腎不全、経口摂取で腹痛、悪心、嘔吐、下痢、胃腸管刺激、呼吸中枢麻痺、痙攣発作、昏睡、乏尿症、アルブミン尿、腎障害、腎尿細管上皮の腫脹、硝子及び脂肪変性、肝障害、肝細胞壊死の報告がある (NITE有害性評価書 (2008)、DFGOT vol. 14 (2000)、IARC 73 (1999)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、PATTY (6th, 2012)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2005)、EU-RAR (2007)、CICAD 58 (2004)、ATSDR (1997)、ACGIH (7th, 2001)、IPCS, PIM 121 (1993))。
実験動物では、ラット、マウスの経口投与 (区分1相当) で、協調運動失調、鎮静、麻酔作用、肝臓の小葉中心性脂肪浸潤及び壊死、小葉中心性肝細胞壊死、腎皮質の近位尿細管上皮細胞の再生性増殖、腎臓の細胞増殖、腎臓に重度の壊死の報告、ラット、マウスの吸入ばく露 (区分1相当) で、麻酔作用、肝臓の脂肪浸潤、肝細胞壊死、腎近位・遠位尿細管の壊死、腎皮質の石灰化の報告、ウサギの経皮適用 (区分1相当) で、腎尿細管変性がみられている (NITE有害性評価書 (2008)、DFGOT vol. 14 (2000)、IARC 73 (1999)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2005)、EU-RAR (2007)、CICAD 58 (2004)、DFGOT vol. 14 (2000)、ATSDR (1997)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)、CEPA (2001))。
以上より、本物質は気道刺激性、麻酔作用のほか、呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓に影響を与えることから、区分1 (呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓)、区分3 (麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)ヒトでは約1,950 mg/m3の濃度のクロロホルムに最大6ヶ月間ばく露された作業者13人中全員が黄疸を呈し、うち5人から 1〜2.9 mg/Lの血中クロロホルムが検出された (DFGOT vol. 14 (2000)) との記述、他の工場で 80〜160 mg/m3の濃度のクロロホルムに4ヶ月以上ばく露された作業者18人に黄疸が観察された (DFGOT vol. 14 (2000)) との記述、また、14〜400 ppm (68〜1,950 mg/m3) のクロロホルムに1〜6ヶ月間ばく露された作業者では、肝炎の進展、黄疸、悪心、嘔吐などの症状がみられ、肝炎の発症は 2〜205 ppm (9.7〜1,000 mg/m3) のばく露濃度でも生じた (PATTY (6th, 2012)) との記述、さらに製剤工場で 10〜1,000 mg/m3のクロロホルムに 1〜4年間ばく露された作業者68人中17人が肝腫大と診断され、うち3人で肝炎、14人で脂肪肝、10人で脾腫がみられた (環境省リスク評価第2巻 (2003)) との記述がある。
実験動物では、マウスに13週間強制経口、又は飲水投与した試験、ラットに3週間強制経口投与した試験で、区分2相当用量 (ガイダンス値換算: 14.8〜60 mg/kg/day) で肝臓 (肝細胞の腫大、変性、脂肪化、初期肝硬変様変化など)、腎臓 (慢性炎症、近位尿細管の変性、壊死など)、脾臓 (白脾髄の萎縮、抗体産生細胞数の減少) への影響がみられ、またイヌに7.5年間カプセルを介して強制経口投与した試験でも、15 mg/kg/day (ガイダンス値換算: 12.9 mg/kg/day) で、肝臓の脂肪化に加え、血清ALT値の上昇がみられている (NITE有害性評価書 (2008)、環境省リスク評価第2巻 (2003))。さらに、吸入経路では、ラット及びマウスに13週間、又は2年間吸入ばく露 (蒸気と推定) した複数の試験で、区分1該当濃度 (ガイダンス値換算: 0.01〜0.106 mg/L/6 hr/day) から、肝臓、腎臓に上記と同様の組織変化が認められた他、鼻腔への影響 (骨肥厚、嗅上皮の萎縮、化生、嗅上皮及び呼吸上皮の好酸性化) もみられている (NITE有害性評価書 (2008)、産衛学会許容濃度の提案理由 (2005))。
以上、ヒトでの知見より中枢神経系 (悪心、嘔吐) 及び肝臓を、実験動物での知見より呼吸器、肝臓、腎臓を標的臓器と考え、区分1 (中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓) とした。なお、脾臓についてはヒトでの知見も少なく、肝硬変など重篤な肝毒性による二次的影響の可能性を否定できないため、標的臓器からは除外した。
誤えん有害性*データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)藻類(クラミドモナス)72時間EC50 = 13.3 mg/L(ECETOC TR91, 2003、CICAD 58, 2004、EU-RAR, 2007)であることから、区分3とした。
水生環境有害性 長期(慢性)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(14日でのBOD分解度=0%、GC分解度=4.6%、難分解性(通産省公報, 1980))、魚類(ニジマス)の21日間NOEC = 0.059 mg/L(環境省リスク評価第2巻, 2003))であることから、区分1となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく、藻類(クラミドモナス)の72時間EC50 = 13.3 mg/L(ECETOC TR91, 2003、CICAD 58, 2004、EU-RAR, 2007)であることから、区分3となる。
以上の結果を比較し、区分1とした。
残留性・分解性化審法分解度試験:難分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性化審法濃縮度試験:低濃縮性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号1888
品名(国連輸送名)クロロホルム
国連分類6.1
副次危険-
容器等級V
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、消防法、毒物及び劇物取締法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、消防法、毒物及び劇物取締法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*151
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法特定化学物質第2類物質、特別有機溶剤等(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2号、第3の2号、第3の3号)
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項)
作業環境評価基準(法第65条の2第1項)
化審法優先評価化学物質(法第2条第5項)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
毒物及び劇物取締法劇物(法第2条別表第2)
消防法貯蔵等の届出を要する物質(法第9条の3・危険物令第1条の10六別表2−18・平元省令2号第2条)【クロロホルム】
大気汚染防止法有害大気汚染物質、優先取組物質(中央環境審議会第9次答申)
水質汚濁防止法指定物質(法第2条第4項、施行令第3条の3)
海洋汚染防止法有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)
船舶安全法毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1)
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」