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安全データシート
2,4-トリレンジイソシアネート (別名: 2,4-トルエンジイソシアネート)
作成日 2001年03月12日
改訂日 2006年03月15日
改訂日 2018年03月16日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称2,4-トリレンジイソシアネート (別名: 2,4-トルエンジイソシアネート) (2,4-Tolylene diisocyanate)、(2,4-Toluene diisocyanate)
製品コードH29-B-049
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限ポリウレタン原料

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
H30.3.16、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性自己反応性化学品タイプG
健康に対する有害性急性毒性(吸入:蒸気)区分1
急性毒性
(吸入:粉塵、ミスト)
区分2
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2
呼吸器感作性区分1
皮膚感作性区分1
発がん性区分2
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1 (呼吸器)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1 (呼吸器)
分類実施日
(環境有害性)
環境に対する有害性はH18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)を使用
環境に対する有害性-
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」又は「分類できない」に該当する。なお、これらに該当する場合は後述の11項に記載した。
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報皮膚刺激
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
強い眼刺激
吸入すると生命に危険
吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ
発がんのおそれの疑い
呼吸器の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器の障害
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
注)【】の文言は、化学品の使用時に関する追加的な情報が、安全な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している場合に使用できます。
 応急措置皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断、手当てを受けること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
直ちに医師に連絡すること。
呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名2,4-トリレンジイソシアネート
別名2,4-トルエンジイソシアネート
4-メチル-1,3-フェニレン=ジイソシアナート
2,4-ジイソシアナトトルエン
m-トリレンジイソシアネート
濃度又は濃度範囲100%
分子式 (分子量)C9H6N2O2 (174.16)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号584-84-9
官報公示整理番号
(化審法)
3-2214
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び
安定化添加物
情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。半座位をとる。人工呼吸が必要なことがある。直ちに医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断、手当てを受けること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
飲み込んだ場合口をすすぐ。水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。医療機関に連絡する。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:腹痛、咳、吐き気、息切れ、咽頭痛、嘔吐(症状は遅れて現われることがある)
皮膚:発赤、灼熱感、痛み
眼:発赤、痛み、かすみ眼
経口摂取:「吸入」参照
応急措置をする者の保護救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項医師又は医師が認定した者による適切な吸入療法の迅速な施行を検討する。
喘息の症状は 2〜3 時間経過するまで現われない場合が多く、安静を保たないと悪化する。したがって、安静と経過観察が不可欠である。
この物質により喘息の症状を示した者は、以後この物質に接触しないこと。

5.火災時の措置
消火剤粉末消火薬剤、二酸化炭素
大量の場合のみ水を用いる
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性火災時に刺激性あるいは有毒なヒュームやガスを放出する。
水と反応し、可燃性、毒性又は腐食性のガスを放出し、漏洩する。
加熱により蒸気が空気と爆発性混合気をつくるおそれがある:屋内:屋外又は下水溝で爆発のおそれがある。
蒸気が着火源まで達し、発火するおそれがある。
特有の消火方法火元への燃焼源を断ち、消火剤を使用して消火する。
延焼の恐れのないよう水スプレーで周囲のタンク、建物等の冷却をする。
消火活動は風上から行う。
火災場所の周辺には関係者以外の立ち入りを規制する。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火を行う者の保護消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服(耐熱性)を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び
緊急措置
関係者以外の立ち入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(自給式呼吸器付完全保護衣等)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材すべての着火源を取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。
大量にこぼれた場合は専門家に相談する。
漏れた液をふた付きの容器に集める。
残留液をアンモニア (4〜8%)、洗剤 (2%)、水の混合物で処理する。
残留液を砂又は不活性吸収剤に吸収させて安全な場所に移す。
固形の場合はこの物質を容器に集める。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
注)【】の文言は、化学品の使用時に関する追加的な情報が、安全な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している場合に使用できます。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件食品や飼料から離しておく。
乾燥した換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
安全な容器包装材料消防法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度0.005 ppm (トリレンジイソシアネート)
許容濃度
日本産衛学会(2017年度版)0.005 ppm、0.035 mg/m3
(最大許容濃度) 0.02 ppm、0.14 mg/m3
(トルエンジイソシアネート類 (TDI))
ACGIH(2017年版)TLV-TWA: 0.001 ppm、0.007 mg/m3 (Inhalable fraction of the aerosol)*
TLV-STEL: 0.005 ppm、0.035 mg/m3 (Inhalable fraction of the aerosol)*
* Toluene-2,4-or 2,6-diisocyanate
(Skin; DSEN; RSEN)
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄剤のための設備を設ける。
高温下や、ミストが発生する場合は換気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具局所排気、呼吸用保護具を使用する。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具顔面シールド、又は呼吸用保護具と眼用保護具を併用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
水色〜淡黄色液体 (HSDB (2017))
臭い刺激臭 (HSDB (2017))
臭いのしきい(閾)値0.4〜2.14 ppm (HSDB (2017))
pH情報なし
融点・凝固点20.5℃ (HSDB (2017))
沸点、初留点及び沸騰範囲251℃ (HSDB (2017))
引火点127℃ (c.c.) (GESTIS (2017))
蒸発速度(酢酸ブチル=1)情報なし
燃焼性(固体、気体)該当しない
燃焼又は爆発範囲0.9〜9.5 vol% (GESTIS (2017))
蒸気圧3 Pa (30℃) (GESTIS (2017))
蒸気密度6.0(空気= 1) (HSDB (2017))
比重(相対密度)1.2244 (20℃/4℃) (HSDB (2017))
溶解度水と反応する (ICSC (J) (1995))
アセトン、ベンゼン、エチルエーテルには非常によく溶ける (HSDB (2017))
n-オクタノール/水分配係数0.21 (ICSC (J) (1995))
自然発火温度620℃ (GESTIS (2017))
分解温度情報なし
粘度(粘性率)3.769 cP (85 deg F) (HSDB (2017))

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性水中で分解する。
危険有害反応可能性塩基、第三級アミン、塩化アシルの影響下で重合することがあり、火災又は爆発の危険を伴う。燃焼すると、有毒な蒸気やガス(窒素酸化物やイソシアナートなど)を生成する。水、酸、アルコールと容易に反応して、圧力上昇による爆発の危険をもたらす。
避けるべき条件水、活性な化学物質との接触
混触危険物質強酸化剤、水、酸、塩基、アミン、アルコール等
危険有害な分解生成物火災時に刺激性あるいは有毒なヒュームやガスを放出する。

11.有害性情報
急性毒性
経口GHS分類: 区分外
ラットのLD50値として、5,800 mg/kg (ACGIH (7th, 2004)、PATTY (6th, 2012)、NITE初期リスク評価書 (2008)) との報告に基づき、区分外とした。
なお、市販のm-トリレンジイソシアネート (TDI) は、本物質と異性体の2,6-トリレンジイソシアネート (2,6-TDI、CAS番号 91-08-7) の混合物 (一般的には本物質と2,6-異性体の混合比80:20) であり、2,4-異性体と2,6-異性体間に重要な毒性学的差異は認められていないとの記載がある (ACGIH (7th, 2004))。
経皮GHS分類: 区分外
ウサギのLD50値として、10,000 mg/kg、> 16,000 mg/kg (いずれもNITE初期リスク評価書 (2008)、DFGOT vol. 20 (2003)) に基づき、区分外とした。
吸入:ガスGHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。なお、融点が20.5℃ (HSDB (Access on June 2017)) であるため、それ以上の温度では液体と考えられる。
吸入:蒸気GHS分類: 区分1
GHSの定義における固体ではあるが、融点が20.5℃ (HSDB (Access on June 2017)) であるため、それ以上の温度では液体と考えられる。本物質単独のLC50値の情報はないが、本物質と2,6-TDIの混合物であるTDI市販品 (以下TDI。通常2,4-TDIと2,6-TDI の混合比80:20) では、ラットの4時間吸入ばく露試験のLC50値として、13.9〜49.8 ppm (0.1〜0.36 mg/L) との報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008)) 。2,4-異性体と2,6-異性体間に重要な毒性学的差異は認められていないとの記載 (ACGIH (7th, 2004)) があるため、TDIの情報を本物質の分類にも用いることが可能と考えられる。最小値の13.9 ppm は、TDIの飽和蒸気圧濃度 (26.4 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用すると、区分1に該当する。したがって、区分1とした。
吸入:粉じん及びミストGHS分類: 区分2
GHSの定義における固体ではあるが、融点が20.5℃ (HSDB (Access on June 2017)) であるため、それ以上の温度では液体と考えられる。本物質単独のLC50値の情報はないが、本物質と2,6-TDIの混合物であるTDI市販品 (以下TDI。通常2,4-TDIと2,6-TDI の混合比80:20) では、ラットの4時間吸入ばく露試験のLC50値として、13.9〜49.8 ppm (0.1〜0.36 mg/L) との報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008)) 。2,4-異性体と2,6-異性体間に重要な毒性学的差異は認められていないとの記載 (ACGIH (7th, 2004)) があるため、TDIの情報を本物質の分類にも用いることが可能と考えられる。最大値の49.8 ppm (0.36 mg/L) は、TDIの飽和蒸気圧濃度 (26.4 ppm) よりも高いため、ミストとしてmg/Lを単位とする基準値を適用すると、区分2に該当する。したがって、区分2とした。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性GHS分類: 区分2
ヒトにおいて強い皮膚刺激性物質であるとの記述 (HSDB (Access on June 2017)) や、ウサギ及びモルモットを用いた皮膚刺激性試験において、本物質が皮膚刺激性を示すとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2008)) から、区分2とした。 なお、EU CLP分類において本物質はSkin Irrit. 2 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。また、異性体の区別はないが「労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物並びに厚生労働大臣が定める疾病」に、トリレンジイソシアネート (別名:TDI) が、皮膚障害を起こす化学物質として記載されている。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性GHS分類: 区分2
ヒトの眼刺激性試験において、本物質により鋭い眼の痛み (stinging in the eyes) を生じるとの報告 (DFGOT vol. 20 (2003))、及びウサギを用いた眼刺激性試験において本物質が眼瞼結膜に中等度の刺激性と角膜上皮に軽度の損傷を生じるとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2008)) から、区分2とした。なお、EU CLP分類において本物質はEye Irrit. 2に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。また、異性体の区別はないが「労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物並びに厚生労働大臣が定める疾病」に、トリレンジイソシアネート (別名:TDI) が、前眼部障害を起こす化学物質として記載されている。
呼吸器感作性GHS分類: 区分1
ヒトでは、本物質 (2,4-TDI) 及び異性体 (2,6-TDI、CAS番号 91-08-7) の混合物であるTDI市販品I (2,4-TDIと2,6-TDIの混合比は通常80:20) は、喘息を発症させ、呼吸器刺激性と呼吸器感作性を示し、慢性気管支炎、限局性呼吸器疾患などを生じるとの記載 (NITE初期リスク評価書 (2008)) がある。日本産業衛生学会において、トルエンジイソシアネート類は感作性物質の気道第1群に分類されており (日本産業衛生学会許容濃度等の勧告 (2016))、本物質はトルエンジイソシアネート類に含まれる。よって、区分1とした。なお、EU CLP分類において本物質はResp. Sens. 1 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。
皮膚感作性GHS分類: 区分1
日本産業衛生学会において、トルエンジイソシアネート類は感作性物質の皮膚第2群に分類されており (日本産業衛生学会許容濃度等の勧告 (2016))、本物質はトルエンジイソシアネート類に含まれる。よって、区分1とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin. Sens. 1 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。
生殖細胞変異原性GHS分類: 分類できない
TDI市販品 (本物質80%及び2,6-異性体20%) を用いたin vivo試験では、ラット、マウスの骨髄細胞小核試験で陰性、ラットの肝臓細胞を用いた不定期DNA合成試験で陰性 (IARC 71 (1999)、DFGOT vol. 20 (2003))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、染色体異常試験で陰性、姉妹染色分体交換試験で不明確な結果である (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第14巻 (2016)、DFGOT vol. 20 (2003)、ATSDR (2015))。以上より、ガイダンスに従い分類できないとした。
発がん性GHS分類: 区分2
TDI市販品 (本物質約86%及び2,6-異性体14%) をラット、又はマウスに2年間強制経口投与した発がん性試験において、ラットでは雌雄に皮下組織の良性及び悪性腫瘍 (線維腫及び線維肉腫) の合計頻度の増加、雄に膵臓の良性腫瘍 (腺房細胞腺腫) の頻度増加、雌に乳腺の線維腺腫、膵臓の良性腫瘍 (ラ氏島細胞腺腫) の頻度増加がみられた (IARC 39 (1986)、NTP RoC (14th, 2016))。マウスでは雄には腫瘍発生率の増加はなかったが、雌には血管の良性及び悪性腫瘍 (血管腫及び血管肉腫) の合計頻度増加、及び肝臓腫瘍 (肝細胞腺腫) の頻度増加が認められた (IARC 39 (1986)、NTP RoC (14th, 2016))。IARCは実験動物では発がん性の十分な証拠があるとして、グループ2Bに分類した (IARC 71 (1999))。その他、ACGIHはA3に (ACGIH (7th, 2016))、NTPはRに (NTP RoC (14th, 2016))、EUはCarc. 2に (ECHA CL Inventory (Access on June 2016))、また日本産業衛生学会はトルエンジイソシアネート類 (CAS番号 26471-62-5) に対し第2群Bに (許容濃度の勧告 (2016): 1991年提案) 分類している。以上、各機関の既存分類結果に基づき、区分2とした。
生殖毒性GHS分類: 分類できない
TDI市販品 (本物質80%と2,6-異性体20%のTDI混合物) をラットに吸入ばく露した2世代試験において、F0及びF1親動物には雌雄とも0.02 ppm以上で鼻腔の炎症、0.08 ppm以上で体重増加抑制、一般状態の変化 (鼻周囲の痂皮など) がみられたが、生殖能に有害影響はなく、児動物への影響も軽微な影響 (F2の0.08 ppm以上で体重の低値) だけであった (環境省リスク評価第14巻 (2016)、NITE初期リスク評価書 (2008))。また、妊娠ラットの器官形成期 (妊娠6〜15日) にTDI (80:20) を吸入ばく露した試験では母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少など) がみられた0.5 ppmで胎児には軽微な影響 (第5頸椎の骨化遅延) がみられただけであった (環境省リスク評価第14巻 (2016)、NITE初期リスク評価書 (2008))。
以上、吸入経路では区分外の可能性も考えられるが、他の経路での毒性情報がなく、データ不足のため分類できないとした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)GHS分類: 区分1 (呼吸器)
ヒトではボランティアによる本物質の吸入試験で、0.08 ppm、30分の吸入により鼻の穿痛感がみられたとの報告がある (DFGOT vol. 20 (2003))。また、本物質と異性体の2,6-TDI (CAS番号 91-08-7) の混合物であるTDI市販品 (以下TDI。通常2,4-TDIと2,6-TDI の混合比80:20) のばく露の影響が報告されている。事故によるTDIの大量ばく露により、急性の呼吸器不全を発症した症例が複数報告されている (DFGOT vol. 20 (2003))。更にTDIの急性ばく露は粘膜、気道を刺激し、高濃度のばく露により、重篤な気管支痙攣、肺炎、肺水腫を伴う化学性気管支炎を引き起こす可能性があるとの記載がある (ACGIH (7th, 2004))。実験動物では、マウス、ラット、モルモット、ウサギを用いたTDIの4時間単回吸入ばく露試験において、2 ppmで気管及び気管支表面上皮の巣状凝固壊死と痂皮形成が認められ、5 ppmでは気管及び気管支上皮の凝固と壊死及び発症部位周辺への急性炎症細胞の凝集に引き続いて、ばく露後4週間で細気管支の重度の損傷と線維組織による完全な閉塞が認められたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。実験動物での用量は区分1に相当する。2,4-異性体と2,6-異性体間で重要な毒性学的差異は認められていないとされている (ACGIH (7th, 2004)) ため、混合物TDIの毒性情報を根拠とすることは妥当と考えられる。したがって、区分1 (呼吸器) とした。
なお、異性体の区別はないが、トリレンジイソシアネート (別名:TDI) は「労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物並びに厚生労働大臣が定める疾病」に、気道・肺障害を起こす化学物質として記載されている。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)GHS分類: 区分1 (呼吸器)
ヒトについては、本物質 (2,4-TDI) 及び異性体 (2,6-TDI) の混合物であるm-トリレンジイソシアネート (TDI) (2,4-TDIと2,6-TDIの混合比は通常80:20) の情報があり、「TDIはヒトに対して、喘息を発症させ、呼吸器刺激性と呼吸器感作性を示し、慢性気管支炎、限局性呼吸器疾患などを生ずる。」との記載がある (NITE初期リスク評価書 (2008)) 。
実験動物については、ラットを用いた21日間吸入毒性試験 (6時間/日、5日/週) において、区分1のガイダンス値の範囲である0.24 ppm (1.74 mg/m3) (90日換算: 0.00041 mg/L) 以上で呼吸困難、喉頭の修復性過形成・扁平上皮化生、鼻炎、肺のわずかな影響 (組織球増殖症)、0.67 ppm (4.85 mg/m3) (90日換算: 0.0011 mg/L) で気管の修復性過形成、壊死性気管支炎/細気管支炎、過形成・化生、肺の水腫・肺胞炎、2.83 ppm (20.49 mg/m3) (90日換算: 0.0048 mg/L) で死亡率増加 (25%)、体重減少、尿量及び尿中蛋白質減少、血中尿素窒素増加、ヘモグロビン・ヘマトクリット値・赤血球数増加、血小板数・白血球数減少の報告がある (DFGOT vol. 20 (2003))。ラットを用いた79日間吸入毒性試験 (6時間/日) において区分1のガイダンス値の範囲内 (蒸気) である1.5 ppm (10.8 mg/m3) (ガイダンス値換算: 0.0094 mg/L) で気管支炎、30日間吸入毒性試験 (6時間/日) において区分1のガイダンス値の範囲内 (蒸気) である1 ppm (7.2 mg/m3) (ガイダンス値換算: 0.0024 mg/L) 以上で気管・気管支炎の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。
以上のうち、血液系への影響については赤血球パラメータは増加であること、血小板数・白血球数減少についても、25%の動物が死亡する濃度での所見であることから分類根拠としなかった。
したがって、区分1 (呼吸器) とした。
なお、異性体の区別はないが、トリレンジイソシアネート (別名:TDI) は「労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物並びに厚生労働大臣が定める疾病」に、気道・肺障害を起こす化学物質として記載されている。
吸引性呼吸器有害性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性(急性)魚類 (ファットヘッドミノー)96時間LC50 = 164,500 μg/L (環境省リスク評価第1巻 (2002))他から、区分外とした。なお、本物質の異性体混合物であるメチル-1,3-フェニレン=ジイソシアネートは、急性毒性区分1に分類されている。
水生環境有害性(長期間)急性毒性は区分外 (水溶解度までの濃度で急性毒性が報告されておらず)生物蓄積性が低い (BCF = 380 (既存化学物質安全性点検データ))ことから区分外とした。なお、本物質の異性体混合物であるメチル-1,3-フェニレン=ジイソシアネートは、慢性毒性区分1に分類されている。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号2078
国連品名TOLUENE DIISOCYANATE
国連危険有害性クラス6.1
副次危険-
容器等級K
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書K及び
IBCコードによるばら積み
輸送される液体物質
該当する(Y)
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報消防法の規定に従う。
特別な安全上の対策消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*156
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2008 Emengency Response Guidebook (ERG 2008)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法作業環境評価基準(法第65条の2第1項)
特定化学物質第2類物質、特定第2類物質(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2,3号)
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
消防法第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1)
港則法その他の危険物・毒物類(毒物)(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)
航空法毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)
海洋汚染防止法有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
[注意] 本SDSはJIS Z7253:2012 に準拠して作成しています。