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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
チオリン酸O,O-ジエチル-O-(2-イソプロピル-6-メチル-4-ピリミジニル)
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称チオリン酸O,O-ジエチル-O-(2-イソプロピル-6-メチル-4-ピリミジニル) (別名: ダイアジノン) (Diazinon)
製品コードR02-B-084
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限農薬 (殺虫剤) (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分4
急性毒性 (経皮)区分3
急性毒性 (吸入: 粉じん、ミスト)区分4
皮膚感作性区分1
発がん性区分2
生殖毒性区分1B
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (神経系)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (神経系、血液系、肝臓、腎臓、生殖器 (男性))
分類実施日
(環境有害性)
平成28年度、GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有害
皮膚に接触すると有毒
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
吸入すると有害
発がんのおそれの疑い
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
神経系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、血液系、肝臓、腎臓、生殖器 (男性)の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
漏出物を回収すること。
 保管施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名チオリン酸O,O-ジエチル-O-(2-イソプロピル-6-メチル-4-ピリミジニル)
別名ダイアジノン
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C12H21N2O3PS (304.34)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号333-41-5
官報公示整理番号
(化審法)
5-923
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
人工呼吸が必要なことがある。
医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣服を脱がせる。
眼に入った場合数分間多量の水で洗い流し(できればコンタクトレンズをはずして)、医療機関に連絡する。
飲み込んだ場合気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 筋攣縮、縮瞳、筋痙攣、唾液分泌過剰、発汗、吐き気、めまい、痙攣、意識喪失、息苦しさ。
皮膚: 吸収される可能性あり!発赤、痛み、他の症状については、「吸入」参照。
眼: 充血、痛み。
経口摂取: 胃痙攣、下痢、他の症状については、「吸入」参照。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項ばく露の程度によっては、定期検診を勧める。
この物質により中毒を起こした場合は、特別の処置が必要であるため、指示のもとに適切な手段をとれるようにしておく。

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、粉末消火薬剤、泡消火薬剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性可燃性。
火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
製剤が引火性/爆発性溶剤を含む場合火災および爆発の危険性がある。
特有の消火方法水を噴霧して容器類を冷却する。
消火を行う者の保護情報なし

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材この物質を環境中に放出してはならない。
漏れた液やこぼれた液を、密閉式の容器にできる限り集める。
残留液を、乾燥砂または不活性吸収剤に吸収させる。
地域規則に従って保管処理する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項裸火禁止。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
作業衣を家に持ち帰ってはならない。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件施錠して保管すること。
消火により生じる流出物を収容するための用意
強酸化剤、強酸、塩基および食品や飼料から離しておく。
換気のよい部屋に保管
排水管や下水管へのアクセスのない場で貯蔵する。
安全な容器包装材料国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)未設定
ACGIH (2020年版)TLV-TWA: 0.01 mg/m3
(Inhalable fraction and vapor) (Skin; BEIC)
設備対策適切な局所排気装置・換気装置等を使用する。
取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
保護具
呼吸用保護具ミストの吸入を避ける。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡や保護面を着用する。(ICSCには、呼吸用保護具と併用して、顔面シールドまたは眼用保護具を使用することとの記載あり)
皮膚及び身体の保護具保護衣(化学防護服)を着用する。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い特徴的な臭気
融点/凝固点データなし
沸点、初留点及び沸騰範囲125℃ (1 mmHg) (HSDB (Access on May 2020))
可燃性可燃性 (ICSC (2019))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点104.4℃ (c.c.) (ICSC (2019))
自然発火点> 400℃ (HSDB (Access on May 2020))
分解温度120℃ (ICSC (2019))
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水: 40 mg/L (25℃) (HSDB (Access on May 2020))
ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、ジクロロメタン、アセトンに混和 (HSDB (Access on May 2020))
n-オクタノール/水分配係数log Kow = 3.11 (ICSC (2019))
蒸気圧9.01E-005 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020))
密度及び/又は相対密度1.1 (水=1) (ICSC (2019))
相対ガス密度データなし
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性120℃以上で分解し、窒素酸化物、リン酸化物およびイオウ酸化物などの有毒なフュームを生じる。
強酸および強塩基と反応する。
強酸化剤と反応する。
火災や爆発の危険を生じる。
避けるべき条件加熱、混触危険物質との接触
混触危険物質強酸、強塩基、強酸化剤
危険有害な分解生成物窒素酸化物、リン酸化物およびイオウ酸化物などの有毒なフューム、有毒なフュームやガス

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(6) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 300 mg/kg (ATSDR (2008)、IPCS PIM G001 (1998))
(2) ラットのLD50: 300〜850 mg/kg (産衛学会許容濃度提案理由書 (1989))
(3) ラットのLD50: 300〜> 2,150 mg/kg (JMPR (2016))
(4) ラットのLD50: 雌: 485〜822 mg/kg、雄: 521〜868 mg/kg (食安委 農薬・動物用医薬品評価書 (2017))
(5) ラットのLD50: 1,000 mg (MAK (DFG) (2017))
(6) ラットのLD50: 1,160〜1,250 mg/kg (EPA Pesticides RED (2006))

【参考データ等】
(7) ラットのLD50: 雄: 250 mg/kg、雌: 285 mg/kg (産衛学会許容濃度提案理由書 (1989)、ATSDR (2008))
経皮【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分3とした。
なお、情報の精査により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 雌: 876 mg/kg、雄: 1,670 mg/kg (食安委 農薬・動物用医薬品評価書 (2017))
(2) ラットのLD50: > 1,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2003))
(3) ラットのLD50: 雄: 1,440 mg/kg (食安委 農薬・動物用医薬品評価書 (2017))
(4) ラットのLD50: > 2,000 mg/kg (MAK (DFG) (2017))
(5) ラットのLD50: > 2,150 mg/kg (産衛学会許容濃度提案理由書 (1989))

【参考データ等】
(6) ラットのLD50: 雌: 455 mg/kg、雄: 900 mg/kg (産衛学会許容濃度提案理由書 (1989)、ACGIH (7th, 2003)、ATSDR (2008))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
(1)、(2) より、区分4とした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (0.00148 mg/L) よりも高いため、ミストとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): 3.1 mg/L (食安委 農薬・動物用医薬品評価書 (2017))
(2) ラットのLC50 (4時間): 3.5 mg/L (MAK (DFG) (2017)、MOE初期評価第4巻:暫定的有害評価シート (2005)、ACGIH (7th, 2003))
(3) 本物質の蒸気圧: 9.01E-005 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 0.00148 mg/L)

【参考データ等】
(4) ラットのLC50 (4時間): > 2.33 mg/L (MAK (DFG) (2017)、EPA Pesticides RED (2006))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) 本物質はウサギの皮膚に対してわずかな刺激性を有する (EHC 198 (1998)、HSDB (Access on May 2020))。
(2) 本物質はウサギの皮膚に対して軽度の刺激性を有する (JMPR Report (2016)、GESTIS (Access on May 2020)、Canada Pesticides (2007))。
(3) 本物質はウサギの皮膚に対して刺激性を示さない (MAK (DFG) (2017)、食安委 農薬・動物用医薬品評価書 (2017))。
(4) EPA OPPTS 870.2500に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で、最大刺激性スコアは2.8であり、軽度の刺激性と報告されている (EPA pesticides RED (2006))。

【参考データ等】
(5) 本物質は短期間のばく露によって眼、皮膚を刺激し、急性症状として眼や皮膚の発赤、痛み、縮瞳がみられる (MOE初期評価第4巻:暫定的有害評価シート (2005))。
(6) 本物質 (1/10希釈液) のウサギを用いた皮膚刺激性試験 (ドレイズ法) で、軽度の紅斑がみられたが、2日後までに回復した (農薬工業会「日本農薬学会誌」第14巻第1号 (1989))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) 本物質はウサギの眼に対しては刺激性を示さない (EHC 198 (1998)、HSDB (Access on May 2020))。
(2) 本物質はウサギの眼に対して軽度の刺激性を有する (JMPR Report (2016)、GESTIS (Access on May 2020)、MAK (DFG) (2017)、食安委 農薬・動物用医薬品評価書 (2017))。
(3) 本物質はウサギの眼に対してはごく軽度の刺激性を示す (Canada Pesticides (2007))。
(4) EPA OPPTS 870.2400に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験でごく軽度の刺激性と報告されている (EPA Pesticides RED (2006))。

【参考データ等】
(5) 本物質は短期間のばく露によって眼、皮膚を刺激し、急性症状として眼や皮膚の発赤、痛み、縮瞳がみられる (MOE初期評価第4巻:暫定的有害評価シート (2005))。
(6) 本物質 (1/10希釈液) のウサギを用いた眼刺激性試験 (ドレイズ法) で、一過性の極めて軽度の結膜発赤がみられたが、2日後までに回復した (農薬工業会「日本農薬学会誌」第14巻第1号 (1989))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1とした。なお、モルモット試験において陽性/陰性の結果が混在するが、試験法の感度の差を考慮し、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 本物質はモルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) で陽性と報告されている (JMPR Report (2016)、食安委 農薬・動物用医薬品評価書 (2017)、農薬工業会「日本農薬学会誌」第14巻第1号 (1989))。
(2) 本物質は感作性を有する (Canada Pesticides (2007))。

【参考データ等】
(3) 本物質は皮膚感作性を有しない (EHC 198 (1998)、HSDB (Access on May 2020))。
(4) 本物質のモルモットを用いた皮膚感作性試験 (改変ビューラー法、適用濃度 10%) で陰性と報告されている (ACGIH (7th, 2003))。
(5) 本物質にばく露された農夫において、接触皮膚炎が報告されているが、他の報告では本物質 (1%) のパッチには刺激、感作性ともに陰性との報告もある (ATSDR (2008))。
(6) EPA OPPTS 870.2600に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法) で、陰性と報告されている (EPA pesticides RED (2006))。
(7) 本物質が原因のアレルギー性皮膚反応は、ごく希であり、294人の皮膚患者と健常人を対象としたパッチテストやモルモットの試験で、刺激性や感作性は認められていない (GESTIS (Access on May 2020))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分に該当しないとした。新たな情報を追加し分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性の報告がある。ラット末梢血やマウス骨髄細胞を用いた小核試験で陰性、ラット末梢血を用いた小核試験で陽性の報告がある。ウサギの肝臓、腎臓を用いたDNA損傷試験で陽性、マウスの精原細胞、精母細胞、骨髄細胞を用いた染色体異常試験及びマウスの骨髄細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陰性の報告がある(IARC 112 (2017)、EHC 198 (1998)、JMPR addendum (2016))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、姉妹染色分体交換試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、小核試験、染色体異常試験で陽性及び陰性の報告がある(IARC 112 (2017)、EHC 198 (1998)、JMPR addendum (2016)、ACGIH (7th, 2003)、ATSDR (2008)、Patty (6th, 2012) 、JMPR (1993)、CEBS (Access on May 2020))。
(3) 本物質に生体において問題となる遺伝毒性はないものと考えられるとの記載がある (食安委 農薬・動物用医薬品評価書 (2017)、JMPR (2016))

【参考データ等】
(4) 本物質にばく露された労働者の末梢血において染色体異常がみられたとの報告がある (IARC 112 (2017))。
発がん性【分類根拠】
(1) の最新の既存分類結果 (産衛学会で第2群B) 及び (2)、(3) より疫学研究及び動物実験ともに限定的な証拠とされていることから区分2とした。最新の既存分類結果に基づき分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、産衛学会で第2群B (産業衛生学雑誌許容濃度等の勧告 (2018年提案))、IARCでグループ2A (IARC 112 (2017))、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2003))、EPAでNL (Not Likely to be Carcinogenic to Humans) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on September 2020):1997年分類) に分類されている。
(2) ヒトでは本物質ばく露と非ホジキンリンパ腫、白血病及び肺がんとの間に正の相関がみられたが、利用可能な研究の数が比較的少なく、リスク増加要因として他の農薬による交絡を完全に排除することができないことから、IARCはヒトでの発がん性に関し限定的な証拠があると結論した (IARC 112 (2017))。
(3) 実験動物ではラットに混餌投与した2つの試験のうち1つで白血病とリンパ腫の合計発生頻度の増加 (雄のみ、用量相関なし) がみられ、マウスを用いた混餌投与試験では雄の低用量群で肝細胞がんの増加が雄にみられた (IARC 112 (2017))。IARC の作業グループはいずれの所見も雄のみで用量相関性を欠くことから、被験物質投与と明確に関連した影響とは言えず、実験動物での発がん性の証拠は限定的であると結論した (IARC 112 (2017))。

【参考データ等】
(4) IARCは、本物質は作用機序の面からヒト発がん物質として作用する強力な証拠 (ヒトで遺伝毒性物質である可能性、酸化ストレス誘発能) があるとしている (IARC 112 (2017))。
(5) JMPR及び食安委では、本物質は遺伝毒性も発がん性も認められないと評価している (JMPR, 2016、食安委 農薬・動物用医薬品評価書 (2017))。

生殖毒性【分類根拠】
(1) より、親動物毒性がみられる用量であるが交尾率、妊娠率の低下がみられ、同腹児数の減少等がみられた。(2)、(3) より雄性生殖器毒性がみられ、それに起因したと考えられる受胎率の低下や生存胎児数/同腹児数減少、吸収胚数増加等がみられた。(4)、(5) より母動物毒性がみられる用量であるが奇形や児動物に学習と記憶力の低下等がみられた。以上より区分1Bとした。なお、新たな情報源 ((3)〜(5)) の使用により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた混餌投与による2世代繁殖試験において、100 ppmで親動物に体重増加抑制、児動物に死亡、体重増加抑制、500 ppmで親動物に振戦、交尾率及び妊娠率の低下、妊娠期間延長、児動物で同腹児数、生存児数の減少がみられた (食安委 農薬・動物用医薬品評価書 (2017))。
(2) 雄ラットに65日間経口投与した結果、生殖器官重量の減少、形態異常精子の割合の増加、血漿テストステロン濃度の低下がみられ、未処置雌との交配で受胎率の低下が認められた (ATSDR (2008))。
(3) 雄マウスを用いた4週間経口投与毒性試験において、親動物には4.1 mg/kg/day以上の用量で精子の様々な発生段階への影響、精細管の病理組織学的変化、及び性腺刺激ホルモン濃度の低下が認められ、未処置の雌との交配で8.2 mg/kg/dayで生存胎児数/同腹児数減少、早期及び後期吸収胚数及び着床後胚損失増加がみられている (MAK (DFG) (2017))。
(4) 雌ラットの妊娠6〜15日に強制経口投与した発生毒性試験において、3.8 mg/kg/day以上で母動物にコリン作動性症状 (下痢、振戦、衰弱、流涎、活動低下)、体重増加抑制、脳の重量減少、脳アセチルコリンエステラーゼ (AChE) 減少がみられ、胎児に内臓異常数の増加 (心浮腫、内臓肥大、肺水腫)、7.6 mg/kg/dayで母動物に肝臓と妊娠子宮の重量減少、胎児に着床後胚損失増加、1腹当たりの生存胎児数減少、早期吸収増加 、後期吸収増加、体重減少、頭臀長減少、外表、骨格奇形及び内臓異常数増加 (矮小児、内臓ヘルニア、眼の異常、口唇裂、四肢の異常、尾の異常、皮膚浮腫、短肋骨または肋骨欠損、頭蓋骨減少、四肢変形、椎骨減少、心臓浮腫、尿管拡張、内臓肥大、肺水腫) がみられている (MAK (DFG) (2017))。
(5) 雌ラットの妊娠6日から分娩後21日まで混餌投与した発達神経毒性試験 (OECD TG 426) において、2.36 mg/kg/day以上で母動物に:赤血球AChE低下 (12.7%)、脳AChE低下(75.2%) がみられ、児動物では赤血球AChE低下 (58.7%)、24.2 mg/kg/dayで児動物体重及び体重増加量減少 (生後4日)、雄で包皮分離遅延、水迷路試験における学習と記憶力低下、脳AChE活性低下 (71.4%)、雌で膣開口遅延がみられている (MAK (DFG) (2017))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分1 (神経系) とした。また、呼吸器でみられた所見は神経系への影響による二次的影響と考えられるため、不採用とした。

【根拠データ】
(1) 本物質はコリンエステラーゼ阻害剤であり、ヒトの急性症状として、眼や皮膚の発赤、痛み、眼の縮瞳、吐き気、嘔吐、息苦しさ、意識喪失、筋痙直がみられ、吸入では痙攣、めまい、唾液分泌過多、経口摂取では胃痙攣、下痢もみられた (MOE初期評価第4巻:暫定的有害評価シート (2005))。
(2) 本物質による76例の死亡例では、縮瞳、鼻と口からの泡沫 (froth from nose and mouth)、急性肺水腫とうっ血、急性潰瘍、血液混じりの胃内容物 (blood-stained gastric contents)、中枢神経系出血、窒息がみられている (Patty (6th, 2012))。
(3) 本物質 (推定1.5 mg/kg) を摂取した女性で、コリン作動性神経系影響 (吐き気、心窩部痛、頭痛、縮瞳及び非反応性瞳孔、頻脈) がみられた (Patty (6th, 2012))。
(4) 本物質 (240〜986 mg/kg) を故意に摂取した5人で、徐脈、頻脈、クローヌス、昏睡、鼻水症、唾液漏、縮瞳、反射亢進、筋力低下、運動障害、腹痛、吐き気、昏睡、痙攣、不穏状態 (restlessness)、気管支痙攣がみられた (Patty (6th, 2012))。
(5) 本物質 (約2.5〜244 ppm) が残留したオートミールを摂取した子供で、有機リン酸中毒の兆候 (発汗、吐き気、嘔吐、腹部痙攣) がみられた (Patty (6th, 2012))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)〜(6) より、区分1 (神経系、血液系、肝臓、腎臓、生殖器 (男性)) とした。旧分類の分類根拠データで影響がみられた用量についてガイダンス値を適用し、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた13週間の混餌投与試験において、0.3 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上の雌雄で血清コリンエステラーゼ (ChE) 低下が、15 mg/kg/day (区分2の範囲) 以上の雌雄で赤血球AChE低下、雌で脳AChE低下が、168 mg/kg/day (区分2超) の雌雄で多動、触覚や音に対する過敏症、軟便、雄で攻撃性の増加、雌で白血球、網赤血球数増加、ヘモグロビン及びヘマトクリット値の低下、肝重量増加がみられた (MAK (DFG) (2017))。
(2) イヌを用いた強制経口投与による90日間反復投与毒性試験において3 mg/kg/day (区分1の範囲) 以上で赤血球及び脳AChE活性阻害、10 mg/kg/day (区分1の範囲) で血液への影響 (赤血球数、ヘモグロビン及びヘマトクリット値減少)、肝臓への影響 (雄で肝門脈周囲炎症細胞浸潤、AST、ALT、ALP及びγGT活性の増加、雌で肝胆管増生)、腎臓への影響 (雄で腎近位尿細管脂肪化、雌で腎尿細管上皮再生) 等がみられた (食安委 農薬・動物用医薬品評価書 (2017))。
(3) イヌを用いた8ヵ月間の強制経口投与試験では、10又は20 mg/kg/day (区分2の範囲) 投与群で死亡、嘔吐、下痢、筋攣縮等のコリン作動性所見及び骨髄球増加、肝硬変、肝臓の巣状壊死等、精巣萎縮及び精子形成阻害、腎臓の萎縮、尿細管及び糸球体の変性を伴う腎炎が認められた (食安委 農薬・動物用医薬品評価書 (2017))。
(4) ラットを用いた3週間の吸入ばく露試験 (エアロゾル、6時間/日、5日/週) において、151 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.03 mg/L、区分2の範囲) 以上で外眼炎、下痢、脳AChE活性低下が、559 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.09 mg/L、区分2の範囲) 以上で流涎、立毛、強直性痙攣、摂餌量低下、赤血球AChE低下、死亡がみられた (MAK (DFG) (2017))。
(5) 雄ラットに本物質1.5又は3.0 mg/kg/day (90日換算: 1.1又は2.2 mg/kg/day、区分1の範囲) を65日間経口投与した優性致死試験において、生殖器官重量の減少、形態異常精子の割合の増加、血漿テストステロン濃度の低下がみられた (ATSDR (2008))。
(6) 雄マウスを用いた4週間経口投与毒性試験において、4.1 mg/kg/day (90日換算: 1.3 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上の用量で精子の様々な発生段階への影響、精細管の病理組織学的変化、及び性腺刺激ホルモン濃度の低下が認められた (MAK (DFG) (2017))。

誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)甲殻類 (ヨコエビ) EC50 (時間不明) = 0.20 ppb (U.S. EPA: RED (2006)) であることから、区分1とした
水生環境有害性 (長期間)急速分解性がなく (難分解性、BODによる分解度:0% (既存点検 (1979)) 、甲殻類 (オオミジンコ) の21日間NOEC = 0.17 ppb (U.S.EPA: RED (2006)) であることから、区分1とした。
オゾン層への有害性データなし

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号3018
国連品名ORGANOPHOSPHORUS PESTICIDE, LIQUID, TOXIC
国連危険有害性クラス6.1
副次危険-
容器等級L
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質-
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報毒物及び劇物取締法、道路法の規定に従う。
特別な安全上の対策毒物及び劇物取締法、道路法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*152
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)【有機りん化合物】
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【343 チオりん酸O,O−ジエチル−O−(2−イソプロピル−6−メチル−4−ピリミジニル)】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【343 チオりん酸O,O−ジエチル−O−(2−イソプロピル−6−メチル−4−ピリミジニル)】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
作業場内表示義務(法第101条の4)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【248 チオりん酸O,O−ジエチル−O−(2−イソプロピル−6−メチル−4−ピリミジニル)】
毒物及び劇物取締法劇物(法第2条別表第2)【5 2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6−ジエチルチオホスフエイト】
劇物(指定令第2条)【10 2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6−ジエチルチオホスフエイトを含有する製剤】
化学物質審査規制法旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号437 チオりん酸O,O−ジエチル−O−(2−イソプロピル−6−メチル−4−ピリミジニル)(別名ダイアジノン)(平成23年4月1日をもって廃止)】
旧第3種監視化学物質(旧法第2条第6項)【旧番号29 チオりん酸O,O−ジエチル−O−(2−イソプロピル−6−メチル−4−ピリミジニル)(別名ダイアジノン)(平成23年4月1日をもって廃止)】
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【3 ダイアジノン】
航空法毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】3018 殺虫殺菌剤(有機リン系)(液体)(毒性のもの)】
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】3018 有機リン系殺虫殺菌剤類(液体)(毒性のもの)】
港則法その他の危険物・毒物類(毒物)(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2チ 有機リン系殺虫殺菌剤類(液体)(毒性のもの)】
海洋汚染防止法個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)【【国連番号】3018 有機リン系殺虫殺菌剤類(液体)(毒性のもの)】
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)【117 チオりん酸O,O−ジエチル−O−(2−イソプロピル−6−メチル−4−ピリミジニル)】
水質汚濁防止法指定物質(法第2条第4項、施行令第3条の3)【36 チオりん酸O,O−ジエチル−O−(2−イソプロピル−6−メチル−4−ピリミジニル)】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用