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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
O-エチル=O-4-ニトロフェニル=フェニルホスホノチオアート
作成日 2002年11月30日
改訂日 2006年10月16日
改訂日 2018年03月16日
改訂日 2019年03月15日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称O-エチル=O-4-ニトロフェニル=フェニルホスホノチオアート (別名: EPN) (O-Ethyl O-(4-nitrophenyl) phenylphosphonothioate)
製品コードR02-B-007
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限農薬 (殺虫剤) (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性自己反応性化学品タイプG
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分2
急性毒性 (経皮)区分3
急性毒性 (吸入: 粉じん、ミスト)区分1
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (神経系)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (神経系、血液系)
分類実施日
(環境有害性)
平成29年度、 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと生命に危険
皮膚に接触すると有毒
吸入すると生命に危険
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
神経系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、血液系の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
呼吸用保護具を着用すること。
 応急措置ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。直ちに医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名O-エチル=O-4-ニトロフェニル=フェニルホスホノチオアート
別名EPN
エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C14H14NO4PS (323.3)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号2104-64-5
官報公示整理番号
(化審法)
3-2617
官報公示整理番号
(安衛法)
4-(3)-17
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
直ちに医師に連絡すること。
半座位。
人工呼吸が必要なことがある。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
汚染された衣服を脱がせる。
直ちに医療機関に連絡する。
応急処置を行うときは、保護手袋を着用する。
衣服を密閉式の容器に入れる。
眼に入った場合数分間多量の水で洗い流す(できればコンタクトレンズをはずす)。
直ちに医療機関に連絡する。
飲み込んだ場合直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: めまい、縮瞳、筋痙攣、唾液分泌過剰、発汗、筋攣縮、吐き気。
皮膚: 吸収される可能性あり!発赤、痛み。他の症状については、「吸入」参照。
眼: 充血、かすみ眼。
経口摂取: 吐き気、胃痙攣、嘔吐、下痢、嗜眠。 他の症状については、「吸入」参照。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項曝露の程度によっては、定期検診を勧める。
この物質により中毒を起こした場合は、特別の処置が必要であるため、指示のもとに適切な手段をとれるようにしておく。
市販の製剤に用いられている溶剤が、この物質の物性および毒性を変化させることがある。

5.火災時の措置
適切な消火剤粉末消火薬剤、耐アルコール性泡消火薬剤、水噴霧、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性可燃性。
有機溶剤を含む液体製剤は、引火性のことがある。
火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
特有の消火方法水を噴霧して容器類を冷却する。
消火を行う者の保護自給式呼吸器を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材粉じんが発生しないようにして回収する。
その後、エリアを換気し、漏洩場所を洗浄する。
水、排水、下水道、または地面への侵入を防ぐ。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項裸火禁止。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
汚染された衣服を、バッグまたは容器に入れ密閉し、隔離する。
作業衣を家に持ち帰ってはならない。
環境への放出を避けること。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
強酸化剤および食品や飼料から離しておく。
消火により生じる流出物を収容するための用意をする。
排水管や下水管へのアクセスのない場で貯蔵する。
安全な容器包装材料国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)第3種粉じん: その他の無機及び有機粉じん*
吸入性粉じん: 2 mg/m3
総粉じん: 8 mg/m3
* 多量の粉じんの吸入によるじん肺を予防する観点から、この値以下とすることが望ましいとされる濃度。
ACGIH (2020年版)TLV-TWA: 0.008 ppm, 0.1 mg/m3
(Inhalable fraction and vapor)(Skin; BEIC)
設備対策局所排気装置、換気設備を設ける。
床排水口があってはならない。
洗浄設備を設け、大量に取り扱う場合は緊急用シャワーを設置する。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡や保護面を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
黄色
臭い芳香臭
融点/凝固点36℃ (HSDB (Access on April 2020))
沸点、初留点及び沸騰範囲215℃ (5 mmHg) (HSDB (Access on April 2020))
可燃性可燃性 (ICSC (2008))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界該当しない
引火点該当しない
自然発火点該当しない
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率該当しない
溶解度水: 3.11 mg/L (20〜25℃) (HSDB (Access on April 2020))
イソプロパノール、ベンゼン、トルエン、アセトン、メタノールと混和 (HSDB (Access on April 2020))
n-オクタノール/水分配係数log Kow = 4.78 (HSDB (Access on April 2020))
蒸気圧9.50E-007 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020))
密度及び/又は相対密度1.3 g/cm3 (ICSC (2008))
相対ガス密度該当しない
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性加熱すると、分解する。
窒素酸化物、リン酸化物およびイオウ酸化物を含む、有毒で腐食性のフュームを生じる。
強酸化剤と反応する。
火災や爆発の危険を生じる。
塩基の影響下で、分解する。
P-ニトロフェノール (ICSC 0066 参照) を生じる。
避けるべき条件混触危険物質との接触
混触危険物質強酸化剤
危険有害な分解生成物窒素酸化物、リン酸化物およびイオウ酸化物を含む有毒で腐食性のフューム、P-ニトロフェノール

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(6) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 7 mg/kg (MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005)、GESTIS (Access on April 2020)、HSDB (Access on April 2020))
(2) ラットのLD50: 雄: 36 mg/kg、雌: 7.7 mg/kg (ACGIH (7th, 2019))
(3) ラットのLD50: 8 mg/kg (HSDB (Access on April 2020))
(4) ラットのLD50: 14 mg/kg (IPCS PIM G001 (1985))
(5) ラットのLD50: 雄: 36 mg/kg、雌: 24 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2017))
(6) ラットのLD50: 36 mg/kg (HSDB (Access on April 2020))
経皮【分類根拠】
溶媒が水であり、GLP試験結果である (1) に重きを置いて、区分3とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50 (溶媒: 水): 雄: 2,850 mg/kg、雌: 538 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2017)、HSDB (Access on April 2020))
(2) ラットのLD50 (溶媒: アセトン): 雄: 230 mg/kg、雌: 25 mg/kg (ACGIH (7th, 2019)、HSDB (Access on April 2020))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分1とした。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (1.7E-005 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。新たな情報源の使用により、旧分類から区分を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (1時間): 106 mg/m3 (0.106 mg/L) (4時間換算値: 0.0265 mg/L) (ACGIH (7th, 2019)、MOE初期評価第4巻:暫定的有害性評価シート (2005))
(2) ラットのLC50 (1時間): 160 mg/m3 (0.16 mg/L) (4時間換算値: 0.04 mg/L) (HSDB (Access on April 2020))
(3) 本物質の蒸気圧: 0.00000095 mmHg (25℃) (飽和蒸気圧濃度換算値: 1.7E-005 mg/L) (HSDB (Access on April 2020))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) 本物質はウサギを用いた皮膚刺激性試験において僅かな刺激性が認められ、適用24/48/72時間後の平均スコアは0.3/0.1/0.1であった (食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2017))。
(2) 本物質は過剰量で皮膚と眼を刺激する (HSDB (Access on April 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)、(2) の記載はあるが、データ不足により分類できないとした。旧分類の根拠とされたデータは製剤によるデータであること及び原体のデータは動物の死亡により、区分に十分な情報が得られないことから区分を変更した。

【参考データ等】
(1) ウサギを用いた眼刺激性試験において結膜刺激性を有するが、速やかに回復すると判断されたている、しかしながら、本試験で使用したウサギは6例中5例が適用後、18時間以内、残りの1例も48時間以内に死亡している (食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2017))。
(2) 本物質は過剰量で皮膚と眼を刺激する (HSDB (Access on April 2020))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法) において皮膚感作性は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2017))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2) より、in vivo試験で陰性、一部のin vitro試験で陽性であったが、専門家判断に基づき、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性の報告がある (食品安全委員会 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2017))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、ヒトリンパ球の染色体異常試験で陽性の報告がある (食品安全委員会 農薬評価書 (2017)、農薬抄録 (2017))。
発がん性【分類根拠】
(1) の既存分類結果、及び (2)、(3) の実験動物における発がん性試験の結果より区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2019)) に分類されている。
(2) 本物質を雌雄のラットに2年間、マウスに18ヵ月混餌投与した発がん性試験で、投与に関連した腫瘍性病変の発生頻度の増加は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2017))。
(3) 雌雄のラットに本物質を2年間混餌投与した試験でも発がん性の証拠は認められなかった (ACGIH (7th, 2019))。
生殖毒性【分類根拠】
(1) より、親動物毒性用量において児動物の生存率低下がみられたことからガイダンスに従い区分2とした。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた混餌投与による2世代繁殖試験において、親動物毒性 (体重増加抑制) がみられる用量で、児動物の生存率低下がみられた (食安委 農薬評価書 (2017))。

【参考データ等】
(2) 雌ラットの妊娠6〜15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (振戦、虚脱、円背位、鼻汁、流涙) がみられる用量においても胎児に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2017))。
(3) 雌ウサギの妊娠7〜19日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (死亡 (2/15例)、摂餌量減少) がみられる用量において、胎児に低体重がみられている (食安委 農薬評価書 (2017))。
(4) 雌ラットの妊娠6〜哺育10日に強制経口投与した発達神経毒性試験において、母動物毒性 (振戦、体重増加抑制) がみられる用量において、胎児に体重増加抑制がみられたが、発達神経毒性はみられていない (食安委 農薬評価書 (2017))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1 (神経系) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質は有機リン系殺虫剤であり、コリンエステラーゼ阻害作用を示す (ACGIH (7th, 2019)、食安委 農薬評価書 (2017))。
(2) ヒトでは本物質の中毒症状として、流涎、流涙、尿と便失禁、胸のしめつけ感、疲労感、虚弱、体重減少、筋萎縮、眼の中膜の退色が現れ、これらの症状は神経障害によるものであり、急性又は慢性ばく露後、複数年に亘ってみられるとの報告がある (ACGIH (7th, 2019)、MOE初期評価第4巻: 暫定的有害性評価シート (2005))。

【参考データ等】
(3) ラットの単回経口投与試験において、5 mg/kg以上で、自発運動の低下、流涙、流涎、尿量増加、血圧低下、緩徐呼吸、感覚受容の低下や顕著な活動低下、致死量の20 mg/kg以上で、これらの症状に加えて、協調不能、円背位、振戦、嗜眠が認められた (食安委 農薬評価書 (2017))。
(4) 「労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物 (合金を含む。) 並びに労働大臣が定める疾病を定める件」 (平成8年労働省告示第33号) において、本物質の別名であるフェニルホスホノチオン酸o-エチル=o-パラ-ニトロフェニル (EPN) について労働大臣 (現厚生労働大臣) が定める疾病として、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、意識混濁等の意識障害、言語障害等の神経障害、錯乱等の精神障害、筋の線維束攣縮、痙攣等の運動神経障害又は縮瞳、流涎、発汗等の自律神経障害が記載されている (労規則35条別表 (1996))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)、(2) より、ヒトにおいて神経系への影響が、(3)〜(5) より、実験動物において区分1の範囲で神経系、血液系への影響がみられていることから、区分1 (神経系、血液系) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質の中毒による症状として、流涎、流涙、尿失禁、脱糞、胸のしめつけ感、疲れやすさ、虚弱、体重減少、筋萎縮、眼の中膜の退色が現れ、これらの症状は神経障害によるものであり、短期及び長期ばく露後、複数年に亘ってみられる (MOE初期評価第4巻: 暫定的有害性評価シート (2005))。
(2) 本物質9 mg/day (約0.13 mg/kg/day) を56日間カプセル投与したボランティア5名で、血漿及び赤血球コリンエステラーゼ活性の低下がみられた (ACGIH (7th, 2019))。
(3) ラットを用いた混餌による90日間反復経口投与毒性試験において、25 ppm (雄: 1.48 mg/kg/day、雌: 1.89 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で赤血球コリンエステラーゼ活性阻害 (20%以上)、125 ppm (雄: 7.34 mg/kg/day、雌: 11.6 mg/kg/day、区分1の範囲あるいは上限近傍) で赤血球数・ヘモグロビン量・ヘマトクリット値・血糖減少、脳コリンエステラーゼ活性阻害、脾臓のヘモジデリン沈着がみられた (食安委 農薬評価書 (2017))。
(4) ラットを用いた90日間吸入毒性試験 (6時間/日、5日/週) において0.0008 mg/L (90日換算: 0.00058 mg/L、区分1の範囲) 以上の雌、0.008 mg/L (90日換算: 0.0058 mg/L、区分1の範囲) の雄で赤血球コリンエステラーゼ活性阻害がみられた (食安委 農薬評価書 (2017))。
(5) ラットを用いた21日間経皮ばく露毒性試験において、1.5 mg/kg/day (90日換算: 0.35 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で赤血球コリンエステラーゼ活性阻害、5.0 mg/kg/day (90日換算: 1.2 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で脳コリンエステラーゼ活性阻害、15.0 mg/kg/day (90日換算: 3.5 mg/kg/day、区分1の範囲) で振戦、円背位、削そう、体重増加抑制、多巣性肝細胞変性・壊死等がみられている (食安委 農薬評価書 (2017))。

誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)甲殻類 (オオミジンコ) 26時間EC50 (遊泳阻害) = 0.00006 mg/L (環境省環境リスク評価 (第2巻) (2003)) であることから、区分1とした。
水生環境有害性 (長期間)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく (難分解性、BODによる分解度: 3% (化審法DB (1983))) 、魚類 (ファッドヘッドミノー) の31-34日間NOEC (成長) = 0.0111 mg/L (環境省環境リスク評価 (第2巻) (2003)) であることから、区分1となる。
 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく (難分解性、BODによる分解度: 3% (化審法DB (1983)))、甲殻類 (オオミジンコ) 26時間EC50 (遊泳阻害) = 0.00006 mg/L (環境省環境リスク評価 (第2巻) (2003)) であることから、区分1となる。
 以上の結果から、区分1とした。
オゾン層への有害性データなし。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物特別管理産業廃棄物に該当する。
特別管理産業廃棄物処理基準に従って処理を行うか、特別管理産業廃棄物の許可業者に運搬又は処分を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号2783
国連品名ORGANOPHOSPHORUS PESTICIDE, SOLID, TOXIC
国連危険有害性クラス6.1
副次危険-
容器等級J
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質-
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報毒物及び劇物取締法、道路法の規定に従う。
特別な安全上の対策毒物及び劇物取締法、道路法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*152
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)【有機りん化合物】
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【67 エチル−パラ−ニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【67 エチル−パラ−ニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
作業場内表示義務(法第101条の4)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)-
毒物及び劇物取締法毒物(法第2条別表第1)【1 エチルパラニトロフエニルチオノベンゼンホスホネイト】
劇物(指定令第2条)【14 エチルパラニトロフエニルチオノベンゼンホスホネイト1.5%以下を含有する製剤】
毒物(指定令第1条)【2 エチルパラニトロフエニルチオノベンゼンホスホネイトを含有する製剤】
化学物質審査規制法旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号428 O−エチル=O−4−ニトロフェニル=フェニルホスホノチオアート(別名EPN)(平成23年4月1日をもって廃止)】
旧第3種監視化学物質(旧法第2条第6項)【旧番号13 O−エチル=O−4−ニトロフェニル=フェニルホスホノチオアート(別名EPN)(平成23年4月1日をもって廃止)】
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【3 EPN】
航空法毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】2783 殺虫殺菌剤(有機リン系)(固体)(毒性のもの)】
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】2783 有機リン系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】
港則法その他の危険物・毒物類(毒物)(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2チ 有機リン系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】
海洋汚染防止法個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)【【国連番号】2783 有機リン系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】
下水道法水質基準物質(法第12条の2第2項、施行令第9条の4)【3 有機燐化合物】
水質汚濁防止法有害物質(法第2条、施行令第2条、排水基準を定める省令第1条)【3 有機燐化合物(エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト)】
土壌汚染対策法特定有害物質(法第2条第1項、施行令第1条)【26 有機りん化合物】
廃棄物処理法特別管理産業廃棄物(法第2条第5項、施行令第2条の4)【5 有機燐化合物を含有する特定有害産業廃棄物】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用