職場のあんぜんサイト

安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
アクリル酸エチル
作成日 2008年10月06日
改訂日 2016年03月31日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称アクリル酸エチル (Acrylic acid ethyl ester)
製品コードR02-B-021
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限アクリル繊維原料、塗料・接着剤原料 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性引火性液体区分2
自己反応性化学品タイプG
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分4
急性毒性 (経皮)区分4
急性毒性 (吸入: 蒸気)区分3
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2A
皮膚感作性区分1A
発がん性区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分3(麻酔作用、気道刺激性)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (神経系、呼吸器)
分類実施日
(環境有害性)
平成27年度、 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分2
水生環境有害性 (長期間)区分2
GHSラベル要素
絵表示炎どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報引火性の高い液体及び蒸気
飲み込むと有害
皮膚に接触すると有害
皮膚刺激
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
強い眼刺激
吸入すると有毒
呼吸器への刺激のおそれ
眠気又はめまいのおそれ
発がんのおそれの疑い
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、呼吸器の障害
水生生物に毒性
長期継続的影響によって水生生物に毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱,高温のもの,火花,裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。医師に連絡すること。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名アクリル酸エチル
別名エチル=アクリラート
2-プロペン酸エチル
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C5H8O2 (100.12)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号140-88-5
官報公示整理番号
(化審法)
2-988
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合医師の診察/手当てを受けること。
口をすすぐこと。
コップ1、2杯の水を飲ませる。
吐かせない。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 灼熱感、咳、息切れ、咽頭痛。
皮膚: 発赤、痛み。
眼: 充血、痛み、かすみ眼。
経口摂取: 腹痛、下痢、吐き気、嘔吐。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、粉末消火薬剤、アルコール耐性泡消火薬剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性引火性が高い。
蒸気/空気の混合気体は、爆発性である。
特有の消火方法水を噴霧して容器類を冷却する。
消火を行う者の保護情報なし

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器を使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材危険区域から立ち退く!
専門家に相談する!
すべての発火源を取り除く。
この物質を環境中に放出してはならない。
漏れた液やこぼれた液を、密閉式の容器にできる限り集める。
残留液を、砂または不活性吸収剤に吸収させる。
地域規則に従って保管処理する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
充填、取り出し、取り扱い時に圧縮空気を使用してはならない。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
耐火設備で保管すること。
容器を接地しアースをとること。
暗所に保管すること。
安定化した状態でのみ貯蔵すること。
安全な容器包装材料消防法、国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)未設定
ACGIH (2020年版)TLV-TWA: 5 ppm, 20 mg/m3
TLV-STEL: 15 ppm, 61 mg/m3
設備対策容器を接地しアースをとること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
適切な局所排気装置・換気装置等を使用する。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器を使用することとの記載あり)
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡や保護面を着用すること。(ICSCには、呼吸用保護具と併用して、保護眼鏡を着用することとの記載あり)
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い刺激臭
融点/凝固点-71.2℃ (HSDB (Access on April 2020))
沸点、初留点及び沸騰範囲99.4℃ (HSDB (Access on April 2020))
可燃性引火性が高い (ICSC (2003))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界1.4〜14 vol% (空気中) (ICSC (2003))
引火点8℃ (c.c.) (ホンメル (1991))
自然発火点372℃ (NFPA (14th, 2010))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水:15,000 mg/L (25℃) (HSDB (Access on April 2020))
ジメチルスルホキシドに微溶、クロロホルムに可溶、エタノール・エチルエーテルに混和 (HSDB (Access on April 2020))
n-オクタノール/水分配係数log Kow = 1.32 (HSDB (Access on April 2020))
蒸気圧38.6 mmHg (25℃)(HSDB (Access on April 2020))
密度及び/又は相対密度0.9234 g/cm3 (20℃) (HSDB (Access on April 2020))
相対ガス密度3.45 (空気=1) (ICSC (2003))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性加温や光の影響、過酸化物との接触により、自然に重合することがある。
危険有害反応可能性加熱すると発生する有毒で刺激性の蒸気を生成する。蒸気が発火源まで達し、フラッシュバックするおそれがある。
避けるべき条件熱、光、混触危険物質との接触
混触危険物質酸化剤、過酸化物
危険有害な分解生成物加熱すると発生する有毒で刺激性の蒸気を生成する。

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(11) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 461〜731 mg/kg (CLH Report (2019))
(2) ラットのLD50: 500〜5,000 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2007))
(3) ラットのLD50: 500〜2,000 mg/kg (厚労省リスク評価書 (2010))
(4) ラットのLD50: 554 mg/kg (SIAR (2008)、CLH Report (2019))
(5) ラットのLD50: 760〜1,120 mg/kg (AICIS IMAP (2015))
(6) ラットのLD50: 0.83 mL/kg (767 mg/kg bw) (JECFA FAS 54 (2006))
(7) ラットのLD50: 800 mg/kg (MOE初期評価第11巻 (2013)、CLH Report (2019))
(8) ラットのLD50: > 900 mg/kg (CLH Report (2019))
(9) ラットのLD50: 1,020 mg/kg (JECFA FAS 54 (2006)、SIAR (2008)、CLH Report (2019)、ACGIH (7th, 2001))
(10) ラットのLD50: 1,120 mg/kg (SIAR (2008)、CLH Report (2019))
(11) ラットのLD50: 2,000 mg/kg (SIAR (2008))
経皮【分類根拠】
(1)〜(4) より、ウサギの知見を用い、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ウサギのLD50: 126〜2,000 mg/kg (厚労省リスク評価書 (2010))
(2) ウサギのLD50: 1,790 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))
(3) ウサギのLD50: 1,790〜2,000 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2007))
(4) ウサギのLD50: 1,800 mg/kg (CLH Report (2019))

【参考データ等】
(5) ラットのLD50: 1,800〜5,000 mg/kg (AICIS IMAP (2015))
(6) ラットのLD50: 2,000〜5,000 mg/kg (厚労省リスク評価書 (2010)、NITE初期リスク評価書 (2007))
(7) ラットのLD50: 3,049 mg/kg (MOE初期評価第11巻 (2013)、CLH Report (2019)、SIAR (2008))
(8) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (SIAR (2008)、CLH Report (2019))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しないとした。
吸入: 蒸気【分類根拠】
(1)〜(10) より、区分3とした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (50,793 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): 1,000〜2,000 ppm (ACGIH (7th, 2001))
(2) ラットのLC50 (4時間): 1,000〜2,180 ppm (厚労省リスク評価書 (2010)、NITE初期リスク評価書 (2007))
(3) ラットのLC50 (4時間): 4.1〜8.2 mg/L (1,002 ppm〜2,004 ppm) (CLH Report (2019))
(4) ラットのLC50 (4時間): 1,414 ppm (MOE初期評価第11巻 (2013))
(5) ラットのLC50 (4時間): 1,500〜2,180 ppm (AICIS IMAP (2015))
(6) ラットのLC50 (4時間): > 1,500 ppm (SIAR (2008))
(7) ラットのLC50 (4時間): 2,180 ppm (SIAR (2008)、CLH Report (2019)、MOE初期評価第11巻 (2013))
(8) ラットのLC50 (4時間): < 9.137 mg/L (2,233 ppm) (CLH Report (2019))
(9) ラットのLC50 (4時間): 25.8 mg/L (6,305 ppm) (CLH Report (2019))
(10) ラットのLC50 (4時間): < 165 mg/L (40,322 ppm) (CLH Report (2019))
(11) 本物質の蒸気圧: 38.6 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 50,793 ppm)
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(4) より、OECD TGに準拠した動物試験成績を優先し、区分2とした。

【根拠データ】
(1) 本物質はウサギの皮膚に4時間閉塞適用した皮膚刺激性試験において重度の紅斑と浮腫がみられている。また、ヒトの皮膚に対して刺激性を示す (厚労省リスク評価書 (2010)、SIDS Dossier (2008)、ECETOC JACC 28 (1994))。
(2) 本物質は皮膚及び眼粘膜に対して刺激性を有する (MAK (DFG) (2018)、MOE初期評価第11巻 (2013)、ATSDR (2001))。
(3) OECD TG 404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験において適用24時間後から72時間後の紅斑及び浮腫の平均スコアはそれぞれ2.2及び 0であり、反応は14日以内に回復した (SIDS Dossier (2008)、AICIS IMAP (2015))、REACH登録情報 (Access on June 2020))。
(4) 本物質は労規則35条において、皮膚障害又は粘膜刺激が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。

【参考データ等】
(5) 本物質をウサギの皮膚に4 時間閉塞適用した皮膚刺激性試験で、痂皮、壊死塊、瘢痕を伴う強度の紅斑と浮腫が2 週間後も継続して認められ、腐食性を示した (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(6) OECD TG 431に準拠し、人工皮膚モデルを用いたin vitro皮膚腐食性試験において3min、60minばく露後、生存率はそれぞれ88%、7%であり、腐食性 (区分1B/C) ありと判定されている (SIDS Dossier (2008)、AICIS IMAP (2015)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。
(7) EU CLP分類でSkin Irrit. 2 (H315) に分類されている(EU CLP分類 (Access on July 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)〜(6) より、区分2Aとした。

【根拠データ】
(1) 本物質 (0.1 mL) をウサギに投与した眼刺激性試験において中等度の刺激性を示す。また、ヒトの眼に対して刺激性を示す (厚労省リスク評価書 (2010))。
(2) 本物質は皮膚及び眼粘膜に対して刺激性を有する (MAK (DFG) (2018)、MOE初期評価第11巻 (2013)、ATSDR (2001))。
(3) 本物質 (0.1 mL) をウサギの眼に適用した眼刺激性試験において、24 時間後に壊死がみられた (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(4) 本物質 (0.1 mL) をウサギの眼に適用した眼刺激性試験 (ドレイズ法)において、24時間後に軽度〜重度の結膜の炎症及び角膜混濁と虹彩炎がみられ、1例は重度の傷害のため屠殺されたが、その他の動物は72時間後までに回復した。適用24/48/72時間後の平均スコアは角膜混濁、虹彩、結膜発赤、結膜浮腫の平均スコアはそれぞれ0.07、0.07、2、1であった (SIDS Dossier (2008)、AICIS IMAP (2015)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。
(5) 本物質は労規則35条において、皮膚障害又は粘膜刺激が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。
(6) 本物質は皮膚、眼及び粘膜に対して強い刺激性を有する (Patty (6th, 2012))。
(7) EU CLP分類でEye Irrit. 2 (H319) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2020))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
区分1、区分1Aまたは区分1Bを指示するデータが混在するが、(1) より産衛学会 感作性分類 皮膚第2群に指定されていることから、ガイダンスに従い区分1Aとした。

【根拠データ】
(1) 本物質は産衛学会 感作性分類 皮膚第2群に指定されている (日本産業衛生学会学会誌 (2017))。
(2) 本物質はモルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法及びFCA test) において感作性が認められているが、マキシマイゼーション法及非閉塞パッチテストで陰性と報告されている。なお、陽性と判定されたビューラー法での適用濃度は0.4%で陽性率は60%であった (MAK (DFG) vol.16 (2001)、SIDS Dossier (2008)、ECETOC JACC 28 (1994))。
(3) 本物質はモルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法) において感作性が認められている。また、種々のアクリル酸エステルと交差感作性を示す (厚労省リスク評価書 (2010))。
(4) 本物質を1%含有するメタノールで194人中39人に、5%含有する溶液の48時間パッチテストで約半数に、4%含有するワセリンで24人中10人にそれぞれ感作性がみられたとの報告がある (厚労省リスク評価書 (2010))。
(5) 本物質は複数のヒトパッチテストで陽性と報告されている (MAK (DFG) (2018))。
(6) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法及びマキシマイゼーション法) で、陽性の結果が得られた。なお、マウス局所リンパ節増殖試験では5%溶液は陰性を示した (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(7) TG 429に準拠したマウス局所リンパ節試験 (LLNA) において陽性と判定され、EC3は36.8%と報告されている (REACH登録情報 (Access on June 2020))。
(8) EU CLP分類でSkin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2020))。

生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2) より、 区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoにおいて、マウス骨髄細胞を用いた小核試験で陽性、陰性の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価第11巻 (2013)、SIAR (2008) 、 IARC 122 (2019))。なお、この陽性結果が得られた小核試験には方法的欠陥があるとされている (SIAR (2008))。 マウス脾臓細胞を用いた小核試験及び姉妹染色分体交換試験で陰性 (NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価11巻 (2013)、SIAR (2008)、IARC 122 (2019))、 ラット前胃、マウス末梢血を用いたDNA切断試験、ラット前胃及び肝臓を用いたDNA付加体形成試験でいずれも陰性の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価第11巻 (2013)、IARC 122 (2019))。
(2) in vitroにおいて、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、Hgprt遺伝子突然変異試験で陰性、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価第11巻 (2013)、SIAR (2008)、IARC 122 (2019))。

【参考データ等】
(3) IARCは本物質の実験動物での発がん性機序として、遺伝毒性機序を否定していないものの、本物質が細胞増殖や細胞死を促進させる強い証拠があると報告している (IARC 122 (2019))。
発がん性【分類根拠】
(1)〜(3) より最新のIARC及び産業衛生学会の既存分類結果に基づき区分2とした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2B (IARC 122 (2019))、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2001))、産衛学会で第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (1991年提案、2019年再検討)) に分類されている。
(2) 雌雄のラット及びマウスに本物質を103週間強制経口投与した試験で、前胃の扁平上皮がん、又は乳頭腫発生率の用量相関的な増加が両種、両性のいずれにも認められ (IARC 122 (2019)、ACGIH (7th,2001))、雄ラットに本物質を12ヵ月間強制経口投与し、その後12ヵ月間回復後に屠殺剖検した追加試験でも、前胃扁平上皮の腫瘍発生率の増加が確認された (IARC 122 (2019))、ACGIH (7th,2001))。
(3) 雌雄のラット及びマウスに本物質の蒸気を27ヵ月間吸入ばく露した発がん性試験では、雄マウスで甲状腺濾胞腺腫の増加、雄ラットで甲状腺の濾胞細胞腺腫又はがんの合計の発生率に有意な増加がみられた (IARC 122 (2019))。

【参考データ等】
(4) ACGIHは吸入ばく露では雄マウスで甲状腺濾胞腺腫の増加が示された以外に、いずれの試験でも呼吸器を含む諸臓器に腫瘍発生率の増加はみられておらず、甲状腺腫瘍については原著者らが本物質ばく露に関連した変化ではないと主張していることを記載した上で、吸入経路では本物質は発がん性を示さないとしている (ACGIH (7th,2001))。
(5) NTPは当初は本物質をR (reasonably anticipated to be a human carcinogen) に分類していたが、経口経路で認められた前胃の腫瘍発生は高濃度の本物質を強制経口投与したことによる粘膜への局所刺激性、及び反復刺激による細胞増殖作用により誘発されたもので、ヒトでは生じないと考えられるとして、2001年のReport on Carcinogens.第9版で発がん性物質リストから削除し (SIAR (2008)、NTP (2001))、最新の改訂版でも「リストからの除外物質」として付属資料に掲載している (NTP RoC 14th (2016))。
(6) MAKも本物質は発がん性のカテゴリーには該当しないと結論した (MAK (DFG) (2018))。

生殖毒性【分類根拠】
(1)〜(3) より、発生影響はみられていない。しかし、性機能・生殖能に関するデータがないことからデータ不足のため分類できないとした。

【根拠データ】
(1) 雌ラットの妊娠6〜15日に吸入ばく露した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少等) がみられる用量で、胎児に統計学的有意差のないわずかな奇形の増加がみられている (ACGIH (7th, 2001)、MOE初期評価第11巻 (2013)、MAK (DFG) (2018)、NTP TR259 (1986))。なお、この試験での胎児の影響について、NITE初期リスク評価書 (2007) では胎児に影響なしとし、MOE初期評価第11巻 (2013) では胎児の影響についてNOAELの根拠としていない。また、NTP TR259 (1986) では催奇形性はないとしている。
(2) 雌ラットの妊娠6〜20日に吸入ばく露した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制) がみられる用量で、胎児重量の低値のみがみられ奇形はみられていない (NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価第11巻 (2013)、MAK (DFG) (2018)、SIAR (2008))。
(3) 雌ラットの妊娠0〜19日に強制経口投与し、帝王切開あるいは自然分娩させた発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、前胃の肥厚、胃と他器官との癒着) がみられる用量で、胎児死亡率の増加傾向がみられたが、胎児の外形、骨格、内部器官の異常発現頻度の増加はない。また、生後21日目までの新生児の発育に影響はみられていない (NITE初期リスク評価書 (2007))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
ヒトでは(1)〜(3) 及び (6) より麻酔作用と気道刺激性、実験動物においても (4)、(5) より麻酔作用と気道刺激性がみられたため、区分3(麻酔作用、気道刺激性) とした。

【根拠データ】
(1) ヒトでは、本物質50〜75 ppm (mL/m3) のばく露で眠気、頭痛、吐き気がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(2) 男性9名、女性10名 (それぞれ平均年齢25.2歳、22.4歳) を対象に、本物質を0、2.5、5 mL/m3の一定濃度、または0〜5 mL/m3 (時間加重平均濃度 (CTWA) 2.5 mL/m3)、0〜10 mL/m3 (CTWA 5 mL/m3) の可変濃度でそれぞれ4時間ばく露したところ、全てのばく露条件で臭気の強さや不快感の訴えがあり、一定濃度条件と可変濃度条件の両CTWA 5 mL/m3条件で、鼻腔の神経性炎症や行動影響のパラメータへの影響がみられたとの報告がある (MAK (DFG) (2018))。
(3) 本物質はヒトで皮膚、眼の粘膜及び気道に刺激性を示す(MAK (DFG) (2018))。
(4) ラットの単回経口投与試験では、最小ばく露濃度である710 mg/kg (区分2の範囲、致死量) 以上で中枢神経抑制 (元気喪失、運動失調) や呼吸抑制 (チアノーゼ、腹式呼吸) がみられた (SIDS Dossier (2008))。
(5) ラットの単回吸入ばく露試験では、最小ばく露濃度である1,538 ppm (6.30 mg/L相当、区分1の範囲、致死量) 以上で眼と呼吸器の刺激症状がみられたとの報告がある (SIDS Dossier (2008))。
(6) 本物質は労規則35条において、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害又は粘膜刺激が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)、(3) より、ヒトにおいて神経系への影響がみられるとの情報があり、実験動物においては (2) より、区分1の用量で呼吸器への影響がみられるとの情報があったことから、区分1 (神経系、呼吸器) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質0.98〜14.21 ppm及びアクリル酸ブチル9.54 ppmに平均5年間ばく露された労働者33人中14人が自律神経失調を訴えた (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(2) ラットの12ヵ月間吸入ばく露試験では25 ppm (0.104 mg/L、区分1の範囲) で鼻腔粘膜の炎症や嗅上皮変性がみられたとの報告がある。また、ラットの27ヵ月間吸入ばく露試験においても同濃度で鼻腔粘膜基底細胞の増生、嗅上皮の呼吸上皮化生がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(3) 本物質は労規則35条において、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害又は粘膜刺激が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。
誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)魚類 (メダカ) 96時間LC50 = 1.16 mg/L (NITE初期リスク評価書 (2007) 、環境省リスク評価第11巻 (2013)) であることから、区分2とした。
水生環境有害性 (長期間)急速分解性がなく (14日でのBOD分解度=51.5%、TOC分解度=92.6%、GC分解度=100% (通産省公報 (1975))) 、甲殻類 (オオミジンコ) の21日間NOEC (GRO/REP) = 0.19 mg/L (環境省リスク評価第11巻 (2013)) であることから、区分2とした。
オゾン層への有害性データなし

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号1917
国連品名ETHYLACRYLATE, STABILIZED
国連危険有害性クラス3
副次危険-
容器等級K
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質有害液体物質(Y類物質)
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報消防法の規定に従う。
特別な安全上の対策消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*129P (P:爆発的な重合を起こすおそれ)
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)【アクリル酸エチル】
感作性を有するもの(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号、平8労基局長通達、基発第182号)【アクリル酸エチル】
労働安全衛生法危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号)【4の3 その他の引火点0℃以上30℃未満のもの】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【3 アクリル酸エチル】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【3 アクリル酸エチル】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
作業場内表示義務(法第101条の4)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【3 アクリル酸エチル】
毒物及び劇物取締法-
化学物質審査規制法優先評価化学物質(法第2条第5項)【32 アクリル酸エチル】
旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号1044 アクリル酸エチル(平成23年4月1日をもって廃止)】
消防法第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)【2 第一石油類非水溶性液体】
航空法引火性液体(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】1917 アクリル酸エチル(安定化されたもの)】
船舶安全法引火性液体類(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】1917 アクリル酸エチル(安定剤入りのもの)】
港則法その他の危険物・引火性液体類(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2ロ アクリル酸エチル(安定剤入りのもの)】
海洋汚染防止法有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)【4 アクリル酸エチル】
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)【3 アクリル酸エチル】
揮発性有機化合物 法第2条第4項 (平成14年度VOC排出に関する調査報告)【揮発性有機化合物】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用