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安全データシート
N,N-ジメチルアニリン
作成日 2002年12月25日
改訂日 2006年08月03日
改訂日 2018年03月16日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称N,N-ジメチルアニリン (N,N-Dimethylaniline)
製品コードH29-B-010
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限塩基性染料・有機ゴム薬品(加硫促進剤)中間体、溶剤

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
H30.3.16、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性引火性液体区分4
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
急性毒性(経皮)区分4
急性毒性(吸入:蒸気)区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2A
発がん性区分2
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1 (中枢神経系、血液系)
区分3 (麻酔作用)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1 (血液系)
分類実施日
(環境有害性)
環境に対する有害性はH18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)を使用
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分2
水生環境有害性 (長期間)区分2
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」又は「分類できない」に該当する。なお、これらに該当する場合は後述の11項に記載した。
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報可燃性液体
飲み込むと有害
皮膚に接触すると有害
強い眼刺激
吸入すると生命に危険
眠気又はめまいのおそれ
発がんのおそれの疑い
中枢神経系、血液系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による血液系の障害
水生生物に毒性
長期継続的影響によって水生生物に毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
注)【】の文言は、化学品の使用時に関する追加的な情報が、安全な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している場合に使用できます。
 応急措置飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
直ちに医師に連絡すること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
漏出物を回収すること。
特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名N,N-ジメチルアニリン
別名N,N-ジメチルフェニルアミン
ジメチルアミノベンゼン
濃度又は濃度範囲100%
分子式 (分子量)C8H11N (121.18)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号121-69-7
官報公示整理番号
(化審法)
3-114(官報公示名称 N,N−ジアルキル(C=1〜2)アニリン )
3-129(官報公示名称 ジアルキル(C=1〜5)アニリン )
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び
安定化添加物
情報なし

4.応急措置
吸入した場合新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させる。医療機関に連絡する。
皮膚に付着した場合多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
飲み込んだ場合口をすすぐこと。水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。安静にする。気分が悪いときは医師に連絡すること。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:腹痛、紫色(チアノーゼ)の唇や爪、紫色(チアノーゼ)の皮膚、錯乱、痙攣、めまい、頭痛、息苦しさ、吐き気、意識喪失、嘔吐、耳鳴り、視覚障害
皮膚:吸収される可能性あり。発赤
眼:発赤、痛み
経口摂取:「吸入」参照
応急措置をする者の保護救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項ばく露の程度によっては、定期検診を勧める。
この物質により中毒を起こした場合は、特別の処置が必要である。

5.火災時の措置
消火剤水噴霧、泡消火薬剤、粉末消火薬剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性火災時に刺激性あるいは有毒なヒュームやガスを放出する。
特有の消火方法火元への燃焼源を断ち、消火剤を使用して消火する。
延焼の恐れのないよう水スプレーで周囲のタンク、建物等の冷却をする。
消火活動は風上から行う。
火災場所の周辺には関係者以外の立ち入りを規制する。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火を行う者の保護消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服(耐熱性)を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置関係者以外の立ち入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(化学保護衣、空気中濃度に応じた有機ガス及び蒸気用フィルター付きマスク等)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。
漏れた液やこぼれた液を密閉式の金属又はガラス容器にできる限り集める。
残留液を砂又は不活性吸収剤に吸収させて安全な場所に移す。
この物質を環境中に放出してはならない。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
呼吸用保護具を着用すること。
汚染された衣類を再使用する場合には洗濯すること。
接触回避「10. 安定性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件容器を密閉し、換気の良い涼しい場所で保管すること。
施錠して保管すること。
強酸化剤、食品や飼料から離しておく。
床面に沿って換気する。
排水管や下水管へのアクセスのない場で貯蔵する。
安全な容器包装材料消防法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会(2017年度版)5 ppm、25 mg/m3 (経皮吸収)
ACGIH(2017年版)TLV-TWA: 5 ppm、25 mg/m3
TLV-STEL: 10 ppm、50 mg/m3
(Skin)
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄剤のための設備を設ける。
高温下や、ミストが発生する場合は換気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具呼吸用保護具を着用する。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡/保護面を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
淡黄色ないし淡茶色の油状液体 (ホンメル (1991))
臭い情報なし
臭いのしきい(閾)値情報なし
pH7.4 (GESTIS (2017))
融点・凝固点2.1℃ (HSDB (2017))
沸点、初留点及び沸騰範囲193℃ (HSDB (2017))
引火点62.78℃ (c.c.) (ACGIH(2001))
蒸発速度(酢酸ブチル=1)情報なし
燃焼性(固体、気体)該当しない
燃焼又は爆発範囲情報なし
蒸気圧0.0244 mmHg (25℃ EST) [換算値 3.25 Pa (25℃ EST)] (SRC PhysProp (2017))
蒸気密度4.17 (空気 = 1) (HSDB (2017))
比重(相対密度)0.9537 g/cm3 (20℃) (HSDB (2017))
溶解度水:1.454 mg/L (25℃) (HSDB (2017))
アルコール、クロロホルム、エーテルに可溶;アセトン、ベンゼン、有機溶媒に可溶;含酸素溶媒及び塩素化溶剤に可溶 (HSDB (2017))
n-オクタノール/水分配係数2.31(実測値)(環境省有害性評価書第7巻 (2009))
自然発火温度371℃ (ICSC (J) (1998))
分解温度情報なし
粘度(粘性率)1.300 mPa.s (25℃) (HSDB (2017))

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性通常の取扱い条件下では安定である。
危険有害反応可能性加熱すると分解し、非常に有毒なヒューム(アニリン、窒素酸化物)を生じる。酸化剤と反応する。
避けるべき条件裸火、高温、混触危険物質との接触
混触危険物質酸化剤
危険有害な分解生成物加熱すると分解し、非常に有毒なヒューム(アニリン、窒素酸化物)を生じる。

11.有害性情報
急性毒性
経口GHS分類: 区分4
ラットのLD50値として、1,300 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 3 (1992))、1,348 mg/kg (DFGOT vol. 3 (1992))、1,410 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)) の報告に基づき、区分4とした。
経皮GHS分類: 区分4
ウサギのLD50値として、1,692 mg/kg (DFGOT vol. 3 (1992))、1,770 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)) の2件の報告に基づき、区分4とした。
吸入:ガスGHS分類: 分類対象外
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気GHS分類: 区分2
LC50値の報告はないが、ラットの単回吸入ばく露試験において、380 ppm、4時間の吸入ばく露後に40%が4日以内に死亡したとの報告 (DFGOT vol. 3 (1992)) があり、LC50値は100〜500 ppmの範囲に入ると考えられる。したがって区分2とした。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (924 ppm) の90%より低いため、ミストがほとんど混在しないものとして、ppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミストGHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性GHS分類: 区分外
ヒトのパッチテストで刺激性なしとの報告や (HSDB (Access on May 2017)) 、ウサギを用いた刺激性試験で軽度の刺激性との報告がある (BUA 91 (1992)) ことから、区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性GHS分類: 区分2A
ヒトの眼に対して刺激あるいは熱傷を引き起こすとの報告や (HSDB (Access on May 2017)) 、ウサギの眼への適用試験で中等度の刺激性との報告がある (HSDB (Access on May 2017)) ことから、区分2Aとした。
呼吸器感作性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、小核試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性である (DFGOT vol. 21 (2005)、DFGOT vol. 3 (1992)、ACGIH (7th, 2001)、IARC 57 (1993)、NTP DB (Access on May 2017)、NTP TR360 (1989)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1993))。
発がん性GHS分類: 区分2
ラット及びマウスに2年間強制経口投与した発がん性試験において、ラットでは高用量群の雄で3/50例に脾臓の肉腫、1/50例に骨肉腫がみられた、脾臓の肉腫の発生率は自然発生率より高く、本物質投与による影響と考えられた。一方、マウスでは高用量群の雌で前胃乳頭腫の発生率のわずかな増加がみられた (NTP TR360 (1989))。雄ラットの脾臓肉腫及び雌マウスの前胃乳頭腫に対して、NTPはそれぞれ発がん性のある程度の証拠及び不確かな証拠とした (NTP TR360 (1989)) が、IARCは実験動物での発がん性の証拠は限定的と結論し、グループ3に分類した (IARC 57 (1993))。その他、ACGIHがA4に分類した (ACGIH (7th, 2001)) のに対し、EUはCarc. 2に分類している (ECHA CL Inventory (Access on May 2017))。本物質の基本骨格のアニリン (CAS番号 62-53-3: 本物質と肝ミクロソームとの in vitro培養実験で副代謝物としてアニリンが生成 (HSDB (Access on May 2017)) は脾臓腫瘍を誘発し、区分2に分類されている (平成28年度分類結果、平成21年度分類結果) ことを踏まえ、本項は区分2とした。
生殖毒性GHS分類: 分類できない
ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、一般毒性影響 (血液系等への影響) がみられる100 mg/kg/day まで生殖発生影響はみられなかった (経済産業省による安全性試験結果 (2011))。また、妊娠マウスの器官形成期 (妊娠6〜13日) に365 mg/kg/day を強制経口投与した結果、母動物が6%死亡したが、出生児には生後3日まで異常はみられなかった (IARC 57 (1993)、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009))。以上、反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験はスクリーニング試験であり、この結果のみで区分外とはできない。また、妊娠マウスを用いた発生毒性試験は1用量のみの試験で、発生影響なしと結論するには不十分な試験と考えられ、本項は分類できないとした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)GHS分類: 区分1 (中枢神経系、血液系)、区分3 (麻酔作用)
ヒトでは本物質による中毒症状は頭痛、チアノーゼ、めまい、努力呼吸、麻痺及び痙攣であるとの記載がある (HSDB (Access on May 2017))。事故によるばく露の症例としては、本物質とフェノールの混合物の入った桶から高温の蒸気に数分間ばく露した労働者が、直後に虚脱して、8時間にわたり意識喪失し、その後、視覚障害、耳鳴り、強度の腹痛を訴えたとの報告及び本物質を容器間で移す作業を7時間行った労働者が、中毒症状を示したとの報告がある (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009))。これらの2症例の症状はアニリンの中毒症状に酷似していると記述されている ((ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009))。
実験動物では、イヌへの本物質50 mg/kgの単回経口投与 (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 3 (1992)、BUA 91 (1992))、ネコへの本物質48 mg/kgの単回経口投与 (BUA 91 (1992)) によりメトヘモグロビン生成が認められ、ネコでの中毒症状はチアノーゼ、呼吸困難及び運動失調であったとの報告がある (BUA 91 (1992))。これらの試験での用量はガイダンスの区分1の範囲に相当する。また、モルモットの単回経口投与試験において、区分2相当の2,000 mg/kgの用量で、衰弱、振戦、持続性及び間代性痙攣、緩徐呼吸を示して死亡したとの報告がある (HSDB (Access on May 2017))。
以上の情報を総合すると、本物質は中枢神経系、血液系を標的臓器とすると考えられる。また中枢神経系に作用することから麻酔作用も有する可能性がある。したがって区分1 (中枢神経系、血液系)、区分3 (麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)GHS分類: 区分1 (血液系)
ヒトについては、長期に本物質製造に従事していた作業者 (ばく露された人数及びばく露濃度不明) において、メトヘモグロビンレベルは5.2%にまで達するものがいたが、一方対照群 (18名) では1名でのみみられメトヘモグロビンレベルは2%であったと報告されている。また、作業者において貧血 (赤血球数の減少、ヘモグロビンの減少)、網状赤血球の増加が認められたと報告されている (DFGOT vol. 3 (1992)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1993))。
実験動物については、ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、区分1のガイダンス値の範囲内である1 mg/kg/day (90日換算値: 0.47 mg/kg/day) 以上で骨髄の赤芽球系細胞の過形成、脾臓のうっ血、10 mg/kg/day (90日換算値: 4.7 mg/kg/day) 以上で脾臓の髄外造血の亢進、区分2のガイダンス値の範囲内である100 mg/kg/day (90日換算値: 47 mg/kg/day) で赤血球数・ヘモグロビン量・ヘマトクリット値・平均赤血球血色素濃度の低値、肝臓の髄外造血亢進、脾臓の白脾髄萎縮、骨髄の赤芽球系細胞の過形成等の報告がある (経済産業省による安全性試験結果 (2011))。このほか、ラット、マウスを用いた強制経口投与による13週間反復投与毒性試験及び2年間発がん性試験が実施されており、ラットの方がマウスよりも影響が強くみられている。ラットでは、13週間試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である31.25 mg/kg/day (90日換算値:22.57 mg/kg/day) 以上で脾臓の腫脹・造血亢進、脾臓・腎臓のヘモジデリン沈着、62.5 mg/kg/day (90日換算値: 45.14 mg/kg/day) 以上で肝臓のヘモジデリン沈着、骨髄の造血細胞過形成、125 mg/kg/day (90日換算値: 90.28 mg/kg/day) 以上で運動量低下がみられ、2年間発がん性試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である3 mg/kg/day以上で脾臓のヘモジデリン沈着、造血亢進、区分2のガイダンス値の範囲内である30 mg/kg/dayで脾臓の脂肪変性、線維化がみられている (NTP TR360 (1989)、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009)、DFGOT vol. 3 (1992)、ACGIH (7th, 2001))。
なお、ラットを用いた吸入経路の試験の報告があり、100日間連続ばく露した試験では血液系のほかに脳や肝機能に影響がある旨報告されているが、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009) には詳細不明との記載があり、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1993) には、ばく露技術の信頼度の低さ、及び用量反応関係の不十分さから脳、肝が標的臓器であるとは考え難いとの記載がある。また、ラットに4ヵ月間 (6時間/日、6日/週) ばく露した試験において血液系への影響のほか肝機能に影響がみられたとの報告があるが、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009) に詳細不明との記載があり、DFGOT vol. 3 (1992) では不十分な記載の試験とされていることからこれらについては分類に用いなかった。
以上、メトヘモグロビン生成、溶血性貧血と関連する二次的あるいは適応性の所見が脾臓、肝臓、骨髄、腎臓等にみられており、区分1 (血液系) とした。
吸引性呼吸器有害性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on May 2017) に収載された数値データ (粘性率: 1.300 mPa・s (25℃)、密度: 0.9537 g/cm3 (20℃)) より、動粘性率は1.363 mm2/sec (25/20℃) と算出される。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性(急性)甲殻類 (オオミジンコ)の48時間EC50 = 5 mg/L (IUCLID (2000))から、区分2とした。
水生環境有害性(長期間)急性毒性が区分2、生物蓄積性が低いものの (BCF = 13.6 (既存化学物質安全性点検データ))、急速分解性がない (BODによる分解度:1.9%(既存化学物質安全性点検データ))ことから、区分2とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号2253
国連品名N,N-DIMETHYLANILINE
国連危険有害性クラス6.1
副次危険-
容器等級K
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及び
IBCコードによるばら積み
輸送される液体物質
該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報消防法の規定に従う。
特別な安全上の対策消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*153
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2008 Emengency Response Guidebook (ERG 2008)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
化審法旧第3種監視化学物質(旧法第2条第6項)
労働安全衛生法変異原性が認められた既存化学物質(法第57条の5、労働基準局長通達)
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
消防法第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1)
港則法その他の危険物・毒物類(毒物)(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)
航空法毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
[注意] 本SDSはJIS Z7253:2012 に準拠して作成しています。