職場のあんぜんサイト

安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
ピリジン
作成日 2002年03月12日
改訂日 2006年10月30日
改訂日 2018年03月16日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称ピリジン (Pyridine)
製品コードR02-B-035
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限医薬反応溶媒,無水金属塩の溶剤,界面活性剤原料,有機合成原料 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性引火性液体区分2
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分4
急性毒性 (経皮)区分4
急性毒性 (吸入: 蒸気)区分4
皮膚腐食性/刺激性区分1
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分1
発がん性区分2
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (中枢神経系)
区分3 (気道刺激性、麻酔作用)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (中枢神経系、血液系、肝臓、腎臓)
誤えん有害性区分1
分類実施日
(環境有害性)
平成29年度、政府向けGHS分類ガイダンス (平成25年度改訂版(Ver.1.1))
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
GHSラベル要素
絵表示炎感嘆符健康有害性腐食性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報引火性の高い液体及び蒸気
飲み込むと有害
飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ
皮膚に接触すると有害
重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷
重篤な眼の損傷
吸入すると有害
呼吸器への刺激のおそれ
眠気又はめまいのおそれ
発がんのおそれの疑い
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
中枢神経系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による中枢神経系、血液系、肝臓、腎臓の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。直ちに医師に連絡すること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。直ちに医師に連絡すること。
飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名ピリジン
別名アザベンゼン
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C5H5N (79.1)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号110-86-1
官報公示整理番号
(化審法)
5-710
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師に連絡すること。
人工呼吸が必要なことがある。
皮膚に付着した場合直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
直ちに医師に連絡すること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
直ちに医師に連絡すること。
飲み込んだ場合直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
コップ1、2杯の水を飲ませる。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 咳、めまい、頭痛、吐き気、息切れ、意識喪失。
皮膚: 吸収される可能性あり!発赤、灼熱感、他の症状については、「吸入」参照。
眼: 充血、痛み。
経口摂取: 咳、咽頭痛、他の症状については、「吸入」参照。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤耐アルコール性泡消火薬剤、水噴霧、粉末消火薬剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性引火性が高い。
火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
蒸気/空気の混合気体は、爆発性である。
特有の消火方法水を噴霧して容器類を冷却する。
消火を行う者の保護情報なし

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に防毒マスクを使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材すべての発火源を取り除く。
下水に流してはならない。
この物質を環境中に放出してはならない。
漏れた液を、密閉式の 気密容器に集める。
残留液を、砂または不活性吸収剤に吸収させる。
地域規則に従って保管処理する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項裸火禁止、火花禁止、禁煙。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
環境への放出を避けること。
充填、取り出し、取り扱い時に圧縮空気を使用してはならない。
ピリジンは?般にTLV 以下の濃度でも臭気は充分に感じられる。しかし臭気に対する知覚は急速に消失する。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
元の容器でのみ貯蔵すること。
強酸化剤および強酸から離しておくこと。
排水管や下水管へのアクセスのない場で貯蔵すること。
安全な容器包装材料消防法、国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)未設定
ACGIH (2020年版)TLV-TWA: 1 ppm, 3.1 mg/m3
設備対策容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
換気、局所排気装置を使用する。
取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に防毒マスクを使用することとの記載あり)
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡や保護面を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い特徴的な臭気
融点/凝固点-41.6℃ (HSDB (Access on May 2020))
沸点、初留点及び沸騰範囲115℃ (NFPA (14th, 2010))
可燃性引火性 (HSDB (Access on May 2020))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界1.8%〜12.4% (NFPA (14th, 2010))
引火点20℃ (c.c.) (NFPA (14th, 2010))
自然発火点482℃ (NFPA (14th, 2010))
分解温度データなし
pH8.5 (0.2M水溶液) (Merck (14th, 2013))
動粘性率データなし
溶解度水: 1.00E-006 mg/L (Hoawrd (1997))
n-オクタノール/水分配係数log Kow = 0.65 (HSDB (Access on May 2020))
蒸気圧20.8 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020))
密度及び/又は相対密度0.98272 (20℃/ 4℃) (HSDB (Access on May 2020))
相対ガス密度2.73 (空気=1) (ICSC (2019))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性燃焼すると、分解し、有毒な窒素酸化物およびシアン化水素のフュームを生じる。
強酸化剤および強酸と 激しく反応する。
火災や爆発の危険を生じる。
避けるべき条件混触危険物質との接触
混触危険物質強酸化剤、強酸
危険有害な分解生成物有毒な窒素酸化物およびシアン化水素のフューム

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 891 mg/kg (MOE初期評価第3巻 (2004)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015)、Patty (6th, 2012)、GESTIS (Access on May 2020))
(2) ラットのLD50: 891〜1,580 mg/kg (ACGIH (7th, 2004)、NTP TR470 (2000)、厚労省リスク評価書 (2018))
(3) ラットのLD50: 1,580 mg/kg (ATSDR (1992)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))
(4) ラットのLD50: 0.8〜1.6 g/kg (800〜1,600 mg/kg) (HSDB (Access on May 2020))
経皮【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ウサギのLD50: 1,120 mg/kg (ACGIH (7th, 2004)、GESTIS (Access on May 2020))
(2) ウサギのLD50: 1,121 mg/kg (MOE初期評価第3巻 (2004)、厚労省リスク評価書 (2018)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015)、Patty (6th, 2012))
(3) ウサギのLD50: 1,000 mg/kg〜2,000 mg/kg (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
(1)〜(9) より、区分4とした。
ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (27,371 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
 
【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (鼻部ばく露、4時間): 15 mg/L〜18 mg/L (4,637 ppm〜5,564 ppm) (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))
(2) ラットのLC50 (1時間): 8,000〜9,000 ppm (4時間換算値: 4,000〜4,500 ppm) (NTP TR470 (2000)、厚労省リスク評価書 (2018)、SCOEL (2004))
(3) ラットのLC50 (1時間): 8,000〜9,020 ppm (4時間換算値: 4,000〜4,510 ppm) (CERI有害性評価書 (2006))
(4) ラットのLC50 (1時間): 8,800 ppm (4時間換算値: 4,400 ppm) (ACGIH (7th, 2004))
(5) ラットのLC50 (1時間): 9,000 ppm (4時間換算値: 4,500 ppm) (ACGIH (7th, 2004)、Patty (6th, 2012)、HSDB (Access on May 2020))
(6) ラットのLC50 (1時間): 雄: 9,010 ppm (4時間換算値: 4,505 ppm) (ATSDR (1992))
(7) ラットのLC50 (1時間): 雌: 9,020 ppm (4時間換算値: 4,510 ppm) (ATSDR (1992))
(8) ラットのLC50 (4時間): > 4,000 ppm (CERI有害性評価書 (2006)、HSDB (Access on May 2020))
(9) ラットのLC50 (4時間): 4,900 ppm (厚労省リスク評価書 (2018)、Patty (6th, 2012)、HSDB (Access on May 2020))
(10) 本物質の蒸気圧: 20.8 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 27,371 ppm)
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 本物質はウサギの皮膚に腐食性を有するが、少量 (10 mg) の適用は軽度の刺激性を示す (ACGIH (7th, 2004))。
(2) ウサギの皮膚に本物質 (0.5 mL) を4時間適用した皮膚刺激性試験において、皮膚に対する非可逆的傷害を認め、本物質は腐食性物質と結論されている。また、別の皮膚刺激性試験でも壊死を伴う軽度から重度の紅斑が観察され、皮膚刺激性インデックスは4.8 (最大8) と報告されている (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))。
(3) 本物質は労規則35条において、皮膚障害、前眼部障害が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。

【参考データ等】
(4) 本物は動物試験において開放適用では軽度の皮膚刺激性を示すが、閉塞適用では強い刺激性を示す (GESTIS (Access on May 2020))。
(5) ウサギの皮膚に500 mgを適用した試験で、弱い刺激性がみられた (NITE初期リスク評価書 (2007)、厚労省リスク評価書 (2018))。
(6) ヒトでの有害性影響としては、皮膚、眼、上部気道に対して刺激性がみられる (NITE初期リスク評価書 (2007)、厚労省リスク評価書 (2018))。
(7) 本物質はウサギを用いた皮膚刺激性試験において軽度の刺激性 (スコア3 (最大スコア10)) を示す (ATSDR (1992))。
(8) 本物質はウサギに対して軽度の皮膚刺激物であり、眼に対しては重度の刺激性を有すると報告されている (Patty (6th, 2012)、HSDB (Access on May 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)〜(7) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 本物質を点眼すると重度の傷害を与える (ACGIH (7th, 2004))。
(2) 本物質 (0.1 mL) を適用した ウサギを用いた眼刺激性試験において、重度の刺激性が確認されている (AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))。
(3) 本物質 (90%) のウサギへの適用は角膜の混濁や結膜の瘢痕化などの重度の反応を引き起こし、永続的な間質の軽度乳白化及び血管新生を生じる (Patty (6th, 2012))。
(4) OECD TG 405に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で2/3例で角膜の適用24/48/72時間後における平均スコアは3を示した (ECETOC 48 (1998))。
(5) ウサギを用いた眼刺激性試験において、中等度刺激性から腐食性の影響がみられ、最大眼刺激性指数は40〜86 (最大110) であった。また、いくつかの影響 (浮腫や角膜への細胞浸潤) は21日間以上持続した (GESTIS (Access on May 2020))。
(6) 本物質は皮膚腐食性 (区分1) に区分されている。
(7) 本物質は労規則35条において、皮膚障害、前眼部障害が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。

【参考データ等】
(8) ウサギの眼に0.1 mLを適用した試験で、刺激性がみられた (NITE初期リスク評価書 (2007)、厚労省リスク評価書 (2018))。
(9) 本物質の蒸気は眼や鼻の粘膜を刺激する (MOE初期評価第3巻 (2004))。
(10) 本物質はウサギを用いた眼刺激性試験において中等度の刺激性 (スコア7 (最大スコア10)) を示す (ATSDR (1992)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015)、Patty (6th, 2012))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)〜(5) のデータはあるが、陽性及び陰性のデータが混在しており、分類できないとした。

【参考データ等】
(1) 本物質はモルモットに感作性を示さない (ACGIH (7th, 2004)、厚労省リスク評価書 (2018)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015)、Patty (6th, 2012)、HSDB (Access on May 2020))。
(2) マウス局所リンパ節試験 (LLNA) で陽性の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、厚労省リスク評価書 (2018))。
(3) 24人の成人ボランティアにおいて、誘導に50%、惹起に10%のピリジン (純度不明) /ワセリンを用いたマキシミゼーション試験で、1例に弱い陽性がみられた (厚労省リスク評価書 (2018))。
(4) 化学の研究室に実験補助員として半年間勤務した女性で、両手の指先や指の間に湿疹がみられた。種々の薬剤によるパッチテストで、カールフィッシャー試薬 (ピリジン、ヨウ素、二酸化硫黄を含む) のみ陽性であった (厚労省リスク評価書 (2018))。
(5) 本物質は光感作性があり、液を直接浴びると薬傷を起こす (MOE初期評価第3巻 (2004))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験及び染色体異常試験で陰性、マウスの肝細胞を用いた不定期DNA合成試験で陰性の結果が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1992)、Patty (6th, 2012)、IARC 119 (2019)、MOE初期評価第3巻 (2004)、CEBS (Access on May 2020))。
(2) in vitroでは、ほ乳類の培養細胞を用いたマウスリンフォーマ試験、遺伝子突然変異試験、染色体異常試験で陰性の報告、姉妹染色分体交換試験で陽性及び陰性の報告がある。また細菌の復帰突然変異試験において陰性の報告がある (同上)。
発がん性【分類根拠】
ヒトでの本物質へのばく露と発がん性に関する明確なデータはない。(1)〜(3) に基づき区分2とした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2B (IARC 119 (2019))、産衛学会で第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (2018年提案))、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2004))、MAK (DFG) で3B (DFG List of MAK and BAT values (2019)) に分類されている。
(2) 雌雄のF344/Nラット及び雄のWistarラットに本物質を2年間飲水投与した発がん性試験において、F344/Nラットの雄で尿細管腺腫の発生率、尿細管腺腫及びがんの合計の発生率に有意な増加がみられ、同雌では単核細胞白血病の発生率の有意な増加がみられた。Wistarラット (雄) では精巣間細胞腺腫の発生率の有意な増加がみられた (NTP TR470 (2000)、IARC 119 (2019)、ACGIH (7th, 2004))。これらより、本物質の発がん性に関して、F344/N雄ラットにはある程度の証拠 (some evidence) が、F344/N雌ラット及びWistar雄ラットには曖昧な証拠 (equivocal evidence) があると結論された (NTP TR470 (2000))。
(3) 雌雄のマウスに本物質を2年間飲水投与した発がん性試験において、雌雄ともに肝細胞腺腫、肝細胞がん及び肝芽腫の発生率の有意な増加が認められた (NTP TR470 (2000)、IARC 119 (2019)、ACGIH (7th, 2004))。これより、本物質の発がん性に関して、雌雄とも明らかな証拠 (clear evidence) があると結論された (NTP TR470 (2000))。

【参考データ等】
(4) 本物質を出発原料として使用している製造工場の作業者に肺がん死亡のわずかな過剰がみられたが、有意差はなく、本物質など特定の化学物質ばく露との関連性はないと考えられた (IARC 119 (2019))。

生殖毒性【分類根拠】
(1) より、区分2とした。なお、新たなデータが得られたため旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた経口投与による簡易生殖毒性試験 (OECD TG 421) において、親動物毒性 (肝臓重量増加) 用量において、授乳1〜4日の生存同腹児数の減少がみられたとの報告がある (REACH登録情報 (Access on June 2020))。

【参考データ等】
(2) ラット又はマウスに13週間飲水投与した試験において、ラットでは高用量 (1,000 ppm: 90 mg/kg/day相当) で雌に性周期の延長、マウスでは250 ppm (50 mg/kg/day相当) 以上で精子運動能の低下がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、NTP TR470 (2000))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(7) より、区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質の主なばく露経路は吸入であり、中枢神経系への軽度の影響による症状はおよそ32 mg/m3 で生じる。400 mg/m3 に1日4時間、1〜2週間ばく露された労働者で、頭痛、めまい、不眠症、吐き気、食欲不振の症状が報告されている (MOE初期評価第3巻 (2004))。
(2) 健常人の症例報告では、ピリジン蒸気のばく露 (ばく露濃度、時間不明) 後に発生した症状には、一過性の頭痛、めまい、嗜眠、頻脈、呼吸促迫がみられた (ATSDR (1992)、NITE初期リスク評価書 (2007)、厚労省リスク評価書 (2018))。
(3) こぼれたピリジンを 15〜20分間にわたって清掃除去した女性で、10 時間後から 3日後まで発話障害とび漫性皮質障害がみられた (NITE初期リスク評価書 (2007)、厚労省リスク評価書 (2018))。
(4) 急性吸入ばく露は中枢神経系に影響を与える (NITE初期リスク評価書 (2007)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))。
(5) 本物質は労規則35条において、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害又は気道障害が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。
(6) ラットに過剰量を経口投与した場合、活動性低下、筋肉脆弱、呼吸困難、鎮静、被毛粗剛、死亡を生じた (ACGIH (7th, 2004))。
(7) ラットに過剰量を吸入ばく露した場合、流涙、鼻炎、不活発、過呼吸、鎮静、呼吸困難、死亡を生じた (ACGIH (7th, 2004))。

【参考データ等】
(8) ヒトへの本物質1.85〜2.46 mL の経口投与で軽度の食欲不振、吐き気、倦怠感、鬱症状を引き起こした。また、多量投与では激しい嘔吐、下痢、せん妄、高熱を引き起こし、うち一人は本物質の摂取後40時間で肝不全及び腎不全により死亡した。この死亡例では、肺水腫と気管支炎も確認されたが、気管支炎については嘔吐物を吸入して起こった二次的なものと考えられた。(MOE初期評価第3巻 (2004)、厚労省リスク評価書 (2018))
(9) コップ半分(約125 mL)の本物質を誤飲した29才の男性の事例では43時間後に死亡しており、喉頭蓋、気管、気管支、肺、食道、胃にうっ血が認められた。(NITE初期リスク評価書 (2007)、MOE初期評価第3巻 (2004)、ATSDR (1992)、NTP TR470 (2000)、厚労省リスク評価書 (2018)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2015))

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)、(2) より、ヒトで肝臓、腎臓、中枢神経系、 (3)〜(5)より、実験動物で区分1の範囲で血液系、肝臓、区分2の範囲で腎臓に影響がみられている。したがって、区分1 (中枢神経系、血液系、肝臓、腎臓) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質をてんかん治療薬として使用した例で、1日あたり1.85〜2.46 mLの用量で約1ヵ月に亘って経口投与した5人のてんかん患者で、投薬期間中に食欲不振、悪心、嘔吐、腹痛及び腹部膨満感、頭痛、昏迷、倦怠感、抑うつ状態がみられた。また、その中の2例では血清総蛋白の減少や窒素血症、アルブミン尿症などが認められ、肝臓ならびに腎臓の障害が示されたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(2) 職業ばく露の例では約125 ppm (405 mg/m3) の濃度のピリジン蒸気を1日4時間、1〜2週間に亘って吸入した労働者で悪心、めまい、頭痛、不眠、神経過敏、頻尿を伴った腰部や腹部の不快感、食欲不振がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(3) ラットを用いた13週間飲水投与試験において、50 ppm (5 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上でヘモグロビン・赤血球数・ヘマトクリット値の減少、100 ppm (10 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で肝臓重量増加、250 ppm (25 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で肝臓の色素沈着、500 ppm (55 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で胆汁酸の増加、肝臓の慢性炎症・色素沈着、小葉中心性肝細胞の肥大・変性、1,000 ppm (90 mg/kg/day、区分2の範囲) で死亡、ALT・SDH の増加、性周期の延長がみられた。なお、雄では、500 ppm以上で腎臓の蛋白円柱・慢性炎症・鉱質沈着・再生尿細管、1,000 ppmで腎臓の顆粒円柱・硝子変性がみられている(全例で腎臓のα2uグロブリン陽性) (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(4) ラットを用いた103〜104週間飲水投与毒性試験において、100 ppm (7 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で肝臓の胆管過形成、肝臓の色素沈着、200 ppm (14 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で体重増加抑制、慢性腎症の増悪、肝臓の小葉中心性肝細胞の巨大細胞化、肝細胞の空胞化、400 ppm (33 mg/kg/day、区分2の範囲) で肝臓の小葉中心性肝細胞の変性及び壊死、腎臓の尿細管上皮過形成がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(5) ラットを用いた103週間飲水投与毒性試験において、100 ppm (8 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で体重増加抑制、肝臓の小葉中心性肝細胞の変性、色素沈着、200 ppm (17 mg/kg/day、区分2の範囲) 以上で生存率低下、肝臓の線維化、小葉周辺性線維化、精巣の間細胞過形成、400 ppm (34 mg/kg/day、区分2の範囲) で肝臓の小葉中心性肝細胞の壊死がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。

誤えん有害性*【分類根拠】
(1) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1)数オンス (1オンス=28.35 g) の経口摂取後に重度の嘔吐、下痢、高体温、せん妄をきたし、死亡した症例を剖検した結果、誤嚥によると考えられる呼吸器傷害 (肺浮腫及び気管・気管支炎) がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、HSDB (Access on August 2017))。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)藻類 (Selenastrum capricornutum) 72時間EC50 (速度法) = 0.10 mg/L (環境省生態影響試験 (2017)) であることから、区分1とした。
水生環境有害性 (長期間)急速分解性があり (良分解性、BODによる分解度:92,94,0% (化審法DB (1998))) 、蓄積性がなく (LogKow: 0.65 (SRC PhysProp Database (2017))) 、藻類 (Pseudokirchneriella subcapitata) の 72時間NOEC (速度法) = 0.01 mg/L (環境省生態影響試験 (2017)) であることから、区分1とした。
オゾン層への有害性データなし

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号1282
国連品名PYRIDINE
国連危険有害性クラス3
副次危険-
容器等級K
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質有害液体物質(Y類物質)
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報消防法、道路法の規定に従う。
特別な安全上の対策消防法、道路法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*129
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)【ピリジン】
労働安全衛生法危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号)【4の3 その他の引火点0℃以上30℃未満のもの】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【467 ピリジン】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【467 ピリジン】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
作業場内表示義務(法第101条の4)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【342 ピリジン】
毒物及び劇物取締法該当しない
化学物質審査規制法旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号1095 ピリジン(平成23年4月1日をもって廃止)】
消防法第4類引火性液体、第一石油類水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)【2 第一石油類水溶性液体】
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【5 第一石油類水溶性液体】
航空法引火性液体(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】1282 ピリジン】
船舶安全法引火性液体類(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】1282 ピリジン】
港則法その他の危険物・引火性液体類(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2ロ ピリジン】
海洋汚染防止法有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)【330 ピリジン】
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)【178 ピリジン】
揮発性有機化合物 法第2条第4項 (平成14年度VOC排出に関する調査報告)【揮発性有機化合物】
特定物質 (法第17条第1項、政令第10条)【16 ピリジン】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用