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安全データシート
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
作成日 2008年10月06日
改訂日 2015年3月31日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(Ethylene glycol monomethyl ether acetate (EGMEA))
製品コードH26-B-023(23B5509)
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限電子材料洗浄用、印刷インキ、塗料、接着剤等の溶剤など

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日H25.8.22、政府向けGHS分類ガイダンス(H25.7版)を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性引火性液体区分3
健康に対する有害性眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性区分2B
生殖毒性区分1A
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) 区分1 (中枢神経系、血液系、腎臓)、
区分3 (麻酔作用)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) 区分1 (血液系、精巣)
分類実施日環境に対する有害性はGHS改訂4版を使用
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分3
水生環境有害性 (長期間)区分2
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」に該当する。なお、健康有害性については後述の11項に、「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」の記述がある。
GHSラベル要素
絵表示炎感嘆符健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報引火性液体及び蒸気
眼刺激
眠気又はめまいのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
中枢神経系、血液系、腎臓の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による血液系、精巣の障害
水生生物に有害
長期継続的影響によって水生生物に毒性
注意書き
安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地すること/アースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
気分が悪い時は医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
漏出物を回収すること。
保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
別名酢酸2-メトキシエチル、酢酸メチルセロソルブ、1-アセトキシメトキシエタン、Acetic acid 2-methoxyethyl、Methyl cellosolve acetate、1-Acetoxy methoxy ethane
濃度又は濃度範囲100%
分子式 (分子量)C5H10O3 (118.13)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号110-49-6
官報公示整理番号(化審法)(2)-740
官報公示整理番号(安衛法)(2)-740
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師に連絡すること。
特別な処置が必要である。(このラベルの…を見よ。)
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診断、手当てを受けること。
皮膚に付着した場合汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。皮膚を流水、シャワーで洗うこと。
医師に連絡すること。
特別な処置が必要である。(このラベルの…を見よ。)
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診断、手当てを受けること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
医師に連絡すること。
特別な処置が必要である。(このラベルの…を見よ。)
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診断、手当てを受けること。
飲み込んだ場合医師に連絡すること。口をすすぐこと。
特別な処置が必要である。(このラベルの…を見よ。)
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診断、手当てを受けること。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:鼻・咽頭粘膜の炎症、咳、頭痛、吐き気、嘔吐、陶酔、チアノーゼ、意識喪失、血尿、麻酔作用。症状(肺水腫、胃腸障害など)は遅くなって現れることがある。
皮膚 : 吸収される可能性あり!皮膚の乾燥、めまい、嗜眠、頭痛。
眼 : 発赤。
経口摂取 : 腹痛、吐き気、嘔吐、脱力感、意識喪失、めまい、嗜眠、頭痛。
この物質の蒸気は眼を軽度に刺激する。骨髄、中枢神経系に血液に影響を与えることがある。血液に影響を与え、血球障害、高濃度では腎臓障害を生じることがある。許容濃度をはるかに超えると、意識を喪失することがある。
この液体は皮膚の脱脂を起こす。骨髄、血液に影響を与え、血球損傷、腎臓障害を生じることがある。 人で生殖・発生毒性を引き起こすことがある。
この物質に暴露したときの健康への影響は 十分に 調べられていないが、類似物質によるものから推測される。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
消火剤粉末消火薬剤、水溶性液体用泡消火薬剤、二酸化炭素、砂、霧状水
使ってはならない消火剤棒状水
特有の危険有害性燃焼ガスには、一酸化炭素などの有毒ガスが含まれるので、消火作業の際には、煙の吸入を避ける。
45℃以上では、蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。
特有の消火方法消火作業は、風上から行う。
周辺火災の場合に移動可能な容器は、速やかに安全な場所に移す。
火災発生場所の周辺に関係者以外の立入りを禁止する。
関係者以外は安全な場所に退去させる。
消火に粉末消火薬剤、水溶性液体用泡消火薬剤、二酸化炭素、砂、霧状水を使用すること。
水を噴霧して容器類を冷却する。
消火を行う者の保護消火作業では、適切な保護具(手袋、眼鏡、マスク等)を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置作業には、必ず保護具(手袋・眼鏡・マスク、個人用保護具:有機ガスおよび蒸気用フィルター付きマスクなど)を着用する。
多量の場合、人を安全な場所に退避させる。
必要に応じた換気を確保する。
環境に対する注意事項漏出物を河川や下水に直接流してはいけない。
この物質を環境中に放出してはならない。
漏出物を回収すること。
封じ込め及び浄化の方法及び機材少量の場合、吸着剤(土・砂・ウエスなど)で吸着させ取り除いた後、残りをウエス、雑巾などでよく拭き取る。大量の水で洗い流す。
多量の場合、盛り土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いてからドラムなどに回収する。
付近の着火源となるものを速やかに除くとともに消火剤を準備する。
床に漏れた状態で放置すると、滑り易くスリップ事故の原因となるため注意する。
漏出物の上をむやみに歩かない。
火花を発生しない安全な用具を使用する。
回収物の収納容器は、内容物の処分を行うまで密封しておく。
換気。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策取扱い場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設置する。
安全取扱い注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
すべての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱、火花、裸火、高温のもののような着火源から遠ざけること。-禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地すること、アースをとること。
防爆型の電気機器、換気装置、照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
粉じん、煙、ガス、ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
取扱後は手などをよく洗うこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋、保護衣、保護眼鏡、保護面を着用すること。
火気厳禁
あらゆる接触を避ける! 
45℃以上では、密閉系、換気、および防爆型電気設備。
換気、局所排気、または呼吸用保護具。
20℃で気化すると、空気が汚染されてやや急速に有害濃度に達することがある。
蒸留前に過酸化物をチェックする。検出された場合は除去する。
接触回避情報なし
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
火気厳禁
強力な酸化剤、強塩基、強酸から離しておく。
暗所に保管。
安全な容器包装材料ステンレス鋼,鋼およびアルミニウムは容器として耐久性がある。銅は腐食される。(ホンメル (1996))

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会(2014年度版)0.1ppm 0.48mg/m3
ACGIH(2014年版)TLV-TWA (0.1 ppm)
TLV-STEL (- ppm)
設備対策蒸気またはヒュームやミストが発生する場合は、局所排気装置を設置する。
取扱い場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設置する。
容器を接地すること、アースをとること。
防爆型の電気機器、換気装置、照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
耐火設備
保護具
呼吸用保護具呼吸器用保護具を着用すること
手の保護具保護手袋、保護衣を着用すること。
眼の保護具保護眼鏡、保護面を着用すること。
皮膚及び身体の保護具保護手袋、保護衣、保護眼鏡、保護面を着用すること。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状液体(IMDG (2010))
無色(IMDG (2010))
臭い快い、甘いエーテル臭(Sax (11th, 2004))
臭いのしきい(閾)値情報なし
pH情報なし
融点・凝固点-65.1℃:HSDB(2014)
沸点、初留点及び沸騰範囲145℃: HSDB(2014)
引火点45℃(密閉式): HSDB(2014)
蒸発速度(酢酸ブチル=1)情報なし
燃焼性(固体、気体)情報なし
燃焼又は爆発範囲上限:8.2%(IMDG (2010))、下限:1.7% (IMDG (2010))
蒸気圧2.0mmHg(20℃)[換算値 266Pa(20℃)] :HSDB(2006)
蒸気密度4.07(空気=1): 計算値
比重(相対密度)1.0067(20℃/20℃): Merck(13th,2001)
溶解度水:混和(20℃):HSDB(2006)
エタノール、ジエチルエーテルに混和。四塩化炭素に僅かに溶ける。(CRC (91st, 2010))
n-オクタノール/水分配係数logP=0.121(ICSC (2003))
自然発火温度394℃: HSDB(2014)
分解温度情報なし
粘度(粘性率)情報なし

10.安定性及び反応性
反応性爆発性過酸化物を生成することがあると推測される。強力な酸化剤、強塩基と反応する。
化学的安定性過酸化物を生成する傾向がある(ホンメル (1996))。
危険有害反応可能性アルカリ性物質と接触の場合,強く発熱するとともに強烈な反応が起こるので注意する(ホンメル (1996))。
避けるべき条件空気または酸素が入るのを防止する(ホンメル (1996))。
混触危険物質強酸化剤、強塩基、強酸、硝酸塩
危険有害な分解生成物燃焼により、一酸化炭素、二酸化炭素、刺激性のヒュームなどを発生する。

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値として、2,900 mg/kg (環境省リスク評価第2巻:暫定的有害性評価シート (2003))、3,390 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、3,930 mg/kg (EHC 115 (1990)、ACGIH (7th, 2006)、DFGOT vol. 6 (1994)、PATTY (6th, 2012))、3,930-4,300 mg/kg (ECETOC TR95 (2005))、4,300 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)) との報告に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
経皮ウサギのLD50値として、5,214 mL/kg (5,285 mg/kg) (DFGOT vol. 6 (1994))、5,290 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、5,557 mg/kg (ACGIH (7th, 2006)、EHC 115 (1990)、ECETOC TR95 (2005))、5,240-5,560 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)) との報告に基づき、区分外とした。
吸入:ガスGHSの定義における液体である。
吸入:蒸気データ不足のため分類できない。なお、旧分類は、ラットのLC50値 (4時間) として、700 ppm との報告 (HSDB (Access on July 2014)) に基づき区分3としているが、HSDB (Access on July 2014) の引用元はPATTY (5th, 2001) であり、PATTY (6th, 2012) への改訂の際に本データが削除されていること、及びPATTY (5th, 2001) の原著 (Journal of Industrial Hygiene and Toxicology. 30, 63, 1948) には、LC50値 (4時間) として、7,000 ppm と掲載されていたため、HSDB (Access on July 2014) の報告を採用せずに、分類できないとした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (2,665 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミストラットのLCLo値 (4時間) として、7,000 ppm (=33.8mg/L) (環境省リスク評価第2巻:暫定的有害性評価シート (2003)) との報告に基づき、区分外とした。なお、LCLo値が飽和蒸気圧濃度(2,665 ppm=12.9 mg/L) より高いため、ミストの基準値を適用した。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (EEC法) において0.5mLを刈毛した腹側部に4時間閉塞適用した結果、刺激性はみられなかったとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2008)) があることから区分外とした。なお、24時間の閉塞適用した試験 (ドレイズ試験法) では軽度の刺激性との結果 (NITE初期リスク評価書 (2008)) がある。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性ウサギを用いた眼刺激性試験において、「軽度の刺激性」と報告されている (ACGIH (7th, 2006)、DEFGOT vol.6 (1996)) ことから、区分2Bとした。
呼吸器感作性データ不足のため分類できない。
皮膚感作性データ不足のため分類できない。なお、58 歳の女性が眼鏡と接触した鼻部で皮膚炎を起こした事例が報告されており、眼鏡本体とパッドを接着するために使われた酢酸 2-メトキシエチルによるものと考えられている (NITE初期リスク評価書 (2008)、PATTY (6th, 2012)) が、1例のみの報告であるため分類に用いるには不十分なデータと判断した。
生殖細胞変異原性ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、チャイニーズハムスターの腹腔内投与による骨髄細胞の小核試験で陰性の結果である (NITE初期リスク評価書 (2008)、ECETOC TR95 (2005)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2009))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陰性並びに陽性結果が存在するが、陽性結果は高い用量で報告されている(NITE初期リスク評価書 (2008)、ECETOC TR95 (2005)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2009)、NTP DB (Access on July 2014))。
発がん性データ不足のため分類できない。
生殖毒性マウスを用いた経口経路 (強制) での催奇形性試験において、母動物影響を及ぼさない用量 (1,225 mg/kg bw/day) において全胚吸収がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008)、ECETOC TR95 (2005))。エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート (EGMEA) の生殖影響に関する情報は少ない。しかし、EGMEAは体内で速やかにエチレングリコールモノメチルエーテル (EGME) に代謝される (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2009))。また、産業衛生学会許容濃度等の勧告(2013) で、生殖毒性第1群物質 (ヒトに対して生殖毒性を示すことが知られている物質) にリストアップされている(2013年提案暫定)。したがって、区分1Aとした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)本物質のヒトへの単回急性影響のデータはない。
ウサギ、ネコに 450 ppmの濃度で 8 時間吸入ばく露した試験で、腎障害により死亡したと報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008))。その他の経路における報告はない。
なお、DFGOT vol. 6 (1994) は、ラット、モルモット、ウサギにおいて、本物質が、急性毒性で死亡した原因として、代謝性アシドーシス、腎毒性、中枢神経系への影響としているが、詳細な記載はない。
ECETOC TR95 (2005) は、「本物質は、急速にエチレングリコールモノメチルエーテル (EGME; CAS No: 109-86-4) に開裂する。EGMEには明らかな中枢神経系への毒性があるため、本物質においても中枢神経系への影響が考えられる。」との記載がある。
エチレングリコールモノメチルエーテルには、中枢神経系、血液系、気道刺激性、麻酔作用が影響として認められる。従って、本物質に関する直接的な情報はないが、EGMEによる影響の可能性があると考えられ、EGMEの区分1 (中枢神経系、血液系、腎臓)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) を本物質の区分とみなすことが合理的と考えられるが、本物質は吸収後EGMEに変化すると想定し、区分3 (気道刺激性) は採用しなかった。以上より、区分1 (中枢神経系、血液系、腎臓)、区分3 (麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)本物質はエチレングリコールモノメチルエーテル (EGME; CAS No. 109-86-4) の酢酸エステルであり、生体内では加水分解され、速やかにEGMEを生成し、さらにアルコール脱水素酵素及びアルデヒド脱水素酵素により酸化されて、2-メトキシ酢酸 (MAA) に転換する。MAA又はMAAのグリシン抱合体が活性代謝物と考えられている (ECETOC TR 95 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008)、CICAD 96 (2010))。すなわち、本物質も体内に吸収後はEGMEと同様の挙動を示し、同様の生体反応を示すと考えられることから、本物質の反復投与毒性はEGMEのそれと差がないものと考えられる。ただし、本物質の反復ばく露による知見は極めて限定されており、ヒトに関して信頼性のある知見はない。
実験動物に関しては、雄マウスに5週間経口投与した試験で、区分外の高用量(500 mg/kg/day: 192 mg/kg/day (90日換算値)) で、精巣萎縮及び白血球数減少がみられたとの報告がある(DFGOT vol. 6 (1994)、ECETOC TR 95 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008)、CICAD 96 (2010))。
ヒトでは実験動物(妊娠ラット及び妊娠サル) より、活性代謝物の消失半減期がかなり長く、体内に残留する時間が長く (CICAD 67 (2010))、実験動物より毒性が強く発現する可能性が考えられることから、マウスのデータ以外に直接的な証拠はないが、EGMEと同様に精巣毒性及び血液影響を生じる懸念があり、よって区分1 (血液系、精巣) とした。
なお、旧分類はList外の実験動物のデータのみから分類され、今回は代謝・体内動態の知見も合わせて判断したため分類結果が異なった。
吸引性呼吸器有害性データ不足のため分類できない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性(急性)魚類(インランドシルバーサイド)の96時間LC50 = 40 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2008)から、区分3とした。
水生環境有害性(長期間)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性があり(2週間でのBODによる分解度:95%(既存点検, 2002))、甲殻類(ネコゼミジンコ)の7日間EC10 = 0.06 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2008))であることから、区分2となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、魚類(インランドシルバーサイド)の96時間LC50 = 40 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2008)であるが、急速分解性があり(2週間でのBODによる分解度:95%(既存点検, 2002))、生物蓄積性が低いと推定される(log Kow = 0.1(PHYSPROP Database, 2009))ことから、区分外となる。
以上の結果を比較し、区分2とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄の前に、可能な限り無害化、安定化及び中和等の処理を行って危険有害性のレベルを低い状態にする。
内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に委託すること。
汚染容器及び包装容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、分類実施中の12項の環境影響情報とに、基づく修正の必要がある。
国際規制
海上輸送はIMOの規則に、航空輸送はICAO/IATAの規則に従う。
国連番号1189
国連品名エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
国連危険有害性クラス3
副次危険 -
容器等級L
海洋汚染物質該当
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質Y類物質
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報消防法の規制に従う。
特別安全対策移送時にイエローカードの保持が必要。
食品や飼料と一緒に輸送してはならない。
輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号129

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法危険物・引火性の物
名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9)
名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)
化学物質排出把握管理促進法
(PRTR法)
第1種指定化学物質
消防法第4類引火性液体、第二石油類水溶性液体
航空法引火性液体
船舶安全法引火性液体類
海洋汚染防止法有害液体物質(Y類物質)

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
<モデルSDSを利用するときの注意事項>
本安全モデルデータシートは作成年月日時点における情報に基づいて記載されておりますので、事業場においてSDSを作成するに当たっては、新たな危険有害性情報について確認することが必要です。さらに、本安全データシートはモデルですので、実際の製品等の性状に基づき追加修正する必要があります。また、特殊な条件下で使用するときは、その使用状況に応じた情報に基づく安全対策が必要となります。