職場のあんぜんサイト

安全データシート
1,2-ジクロロエタン
作成日 2008年10月06日
改訂日 2016年3月31日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称1,2-ジクロロエタン (1,2-Dichloroethane)
製品コードH27-B-062
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限塩化ビニルモノマー・エチレンジアミン・ポリアミノ樹脂・イオン交換樹脂合成原料、フィルム洗浄剤、有機合成・ビタミン抽出溶剤、殺虫剤、燻蒸剤(NITE初期リスク評価書)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
H28.03.18、政府向けGHS分類ガイダンス(H25年度改訂版(ver1.1))を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性引火性液体区分2
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
急性毒性(吸入:蒸気)区分3
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2B
発がん性区分1B
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓、消化管)、区分3 (麻酔作用)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1 (神経系、肝臓、心血管系、甲状腺)、区分2 (血液系、腎臓)
分類実施日
(環境有害性)
政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分2
水生環境有害性 (長期間)区分2
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」に該当する。なお、健康有害性については後述の11項に、「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」の記述がある。
GHSラベル要素
絵表示炎どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報引火性の高い液体及び蒸気
飲み込むと有害
眼刺激
吸入すると有毒
眠気又はめまいのおそれ
発がんのおそれ
中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓、消化管の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、肝臓、心血管系、甲状腺の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による血液系、腎臓の障害のおそれ
水生生物に毒性
長期継続的影響によって水生生物に強い毒性
注意書き
安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地すること/アースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
環境への放出を避けること
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
気分が悪い時は医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
口をすすぐこと。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
医師に連絡すること。
火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
漏出物を回収すること
保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性データなし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名1,2-ジクロロエタン
別名sym‐二塩化エタン、エチレンジクロリド、グリコールジクロリド
濃度又は濃度範囲100%
分子式 (分子量)C2H4Cl2 (98.96)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号107-06-2
官報公示整理番号
(化審法)
2-54
官報公示整理番号
(安衛法)
2-13-23
分類に寄与する不純物及び安定化添加物データなし

4.応急措置
吸入した場合気分が悪い時は、医師の診断、手当てを受けること。
症状が続く場合には、医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合大量の水で洗うこと。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
眼に入った場合水で15〜20分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
飲み込んだ場合水で口をすすぎ、直ちに医師の診断を受けること。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状データなし
応急措置をする者の保護救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項データなし

5.火災時の措置
消火剤泡消火剤、粉末消火剤、炭酸ガス、乾燥砂類
使ってはならない消火剤棒状放水
特有の危険有害性加熱により容器が爆発するおそれがある。
極めて燃え易く、熱、火花、火炎で容易に発火する。
消火後再び発火するおそれがある。
火災時に刺激性、腐食性及び毒性のガスを発生するおそれがある。
蒸気/ 空気の混合気体は爆発性である。加熱や燃焼により分解し、塩化水素、ホスゲンを含む有毒で腐食性のヒュームを生じる。アルミニウム、アルカリ金属、アルカリアミド、アンモニア、塩基、強力な
酸化剤と激しく反応する。水の存在下で、多くの金属を侵す。プラスチックを侵す。
特有の消火方法危険でなければ火災区域から容器を移動する。
容器が熱に晒されているときは、移動させない。
安全に対処できるならば着火源を除去すること。
消火を行う者の保護適切な空気呼吸器、防護服( 耐熱性) を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置全ての着火源を取り除く。
直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
密閉された場所に立入る前に換気する。
環境に対する注意事項環境中に放出してはならない。
封じ込め及び浄化の方法及び機材不活性材料( 例えば、乾燥砂又は土等) で流出物を吸収して、化学品廃棄容器に入れる。
危険でなければ漏れを止める。
すべての発火源を速やかに取除く( 近傍での喫煙、火花や火炎の禁止) 。
排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気、全体換気を行
う。
安全取扱い注意事項消防法の規制に従う。
取扱い後はよく手を洗うこと。
この製品を使用する時に、飲食または喫煙をしないこと。
屋外または換気の良い場所でのみ使用すること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
すべての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
皮膚と接触しないこと。
飲み込まないこと。
眼に入れないこと。
接触回避「10. 安定性及び反応性」を参照。
衛生対策取扱い後はよく手を洗うこと。
この製品を使用する時に、飲食または喫煙をしないこと。
保管
安全な保管条件熱、火花、裸火、高温のもののような着火源から離して保管すること。− 禁煙。
容器を密閉して保管すること。
換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
安全な容器包装材料データなし

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度10 ppm (1,2-ジクロロエタン)
許容濃度
日本産衛学会
(2015年度版)
10 ppm (40 mg/m3)
(1,2-ジクロロエタン)
ACGIH(2015年版)TLV-TWA: 10 ppm (40 mg/m3)
(ジクロロエチレン)
設備対策この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
消防法の規制に従う。
ばく露を防止するため、装置の密閉化又は防爆タイプの局所排気装置を設置すること。
保護具
呼吸用保護具適切な呼吸器保護具を着用すること。
手の保護具適切な保護手袋を着用すること。
眼の保護具適切な眼の保護具を着用すること。
皮膚及び身体の保護具適切な保護衣を着用すること。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色 (ICSC (2013))
臭い典型的な塩素化された炭化水素のにおい(ACGIH(7th, 2001))
臭いのしきい(閾)値6〜40 ppm (HSDB (2015))
pHデータなし
融点・凝固点-35.7℃ (ICSC (2013))
沸点、初留点及び沸騰範囲83.5℃ (ICSC (2013))
引火点13℃ (密閉式) (ICSC (2013))
蒸発速度(酢酸ブチル=1)データなし
燃焼性(固体、気体)データなし
燃焼又は爆発範囲4.2〜16 vol% (ICSC (2013))
蒸気圧78.9 mmHg (25℃) [換算値 1,0517 Pa( 25℃)] (HSDB (2015))
蒸気密度3.42(空気= 1) (ICSC (2013))
比重(相対密度)1.2 (水= 1) (ICSC (2013))
溶解度水:0.869 g/100mL (20℃) (HSDB (2015))
n-オクタノール/水分配係数logP=1.48 (測定値) (SRC (2015))
自然発火温度440℃ (ICSC (2013))
分解温度データなし
粘度(粘性率)0.84 cP (20℃) (HSDB (2015))

10.安定性及び反応性
反応性引火性が高い。
蒸気と空気の混合物は爆発性を有する。
揮発性が高い。
大気環境化で湿気と光に触れると暗化する。
化学的安定性データなし
危険有害反応可能性加熱により分解する。
アルカリ金属、金属粉、二酸化窒素との接触で爆発を生じる危険がある。
硝酸、酸化剤、アルカリアミドと危険な反応を生じる。(GESTIS(2015))
水との接触により、温度上昇を伴いながら鉄及びその他の金属を腐食する。
炎又は酸化剤、熱に晒されると引火する危険がある。
(HSDB(2015))
比較的弱い静電気火花でも発火することがある。
鋼、ステンレス鋼ならびに亜鉛及びスズめっきした鉄は容器として耐久性がある。
ポリエチレン及びアルミニウムは腐食される。
空気、光及び酸化剤と結合して、アルカリ金属及びアルカリ土類金属と反応する。(Hommel (1997))
アルカリ金属、金属粉末、アンモニア、塩基及び強酸化剤と反応し、火災や爆発の危険をもたらす。
水の存在下で、多くの金属を侵す。
避けるべき条件データなし
混触危険物質データなし
危険有害な分解生成物加熱や燃焼により分解し、塩化水素及びホスゲンを含む有害で腐食性のヒュームを生じる。

11.有害性情報
急性毒性
経口GHS分類: 区分4
ラットのLD50値として、670 mg/kg (環境省リスク評価第2巻 (2003))、680 mg/kg (ATSDR (2001)、EHC 176 (1995)、EHC 62 (1987)、IARC 20 (1979)、JMPR (1965)、JECFA FAS 30)、770 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2004)、ACGIH (7th, 2001)、EHC 176 (1995)、JMPR (1965))、794 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005))、850 mg/kg (EHC 176 (1995)、EHC 62 (1987)、JECFA FAS 30 (Access on October 2015))、967 mg/kg (SIDS (2004)) との報告に基づき、区分4とした。
経皮GHS分類: 区分外
ウサギのLD50値として、2,800 mg/kg (EHC 176 (1995))、4,890 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005)、SIDS (2004))、2,800〜4,900 mg/kg (EHC 176 (1995)) との報告に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
吸入:ガスGHS分類: 分類対象外
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気GHS分類: 区分3
ラットのLC50値 (4時間) として、1,000 ppm (IARC 20 (1979))、約1,900 ppm (SIDS (2004)) との報告に基づき、区分3とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (103,816 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミストGHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない
皮膚腐食性及び皮膚刺激性GHS分類: 区分外
ウサギを用いたドレイズ試験において、本物質0.5 mLを4時間適用した結果、軽度の刺激性がみられたとの報告がある (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。SIDS (2004) では、本物質は皮膚に対して軽度の刺激性をもつと結論されている (SIDS (2004))。以上より、区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性GHS分類: 区分2B
ウサギを用いたドレイズ試験において本物質0.1 mLを適応した結果、軽度の眼刺激性を有したとの報告や刺激性はみられなかったとの報告がある (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。以上より、区分2Bとした。
呼吸器感作性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性GHS分類: 分類できない
In vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、マウスのスポットテストで陽性、マウス骨髄細胞、末梢血赤血球の小核試験で陰性、トランスジェニック齧歯類突然変異試験で陰性、マウス骨髄細胞の姉妹染色分体交換試験で陽性、ラットの肝臓、マウスの肝臓、腎臓、胃、前胃、肺、膀胱、脳、骨髄を用いたコメットアッセイで陽性、ラット、マウスの肝臓、腎臓、胃、前胃、肺のDNA結合試験で陽性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省健康リスク評価第3巻 (2004)、CICAD 1 (1998)、IARC 71 (1997)、JECFA FAS 30 (Access on October 2015)、ATSDR (2001)、SIDS (2004)、EHC 176 (1995)、NTP DB (Access on October 2015)、OECD, Detailed review paper on transgenic rodent mutation assays, ENV/JM/MONO (2009))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、ヒトリンパ球の小核試験でいずれも陽性である(NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省健康リスク評価第3巻 (2004)、CICAD 1 (1998)、IARC 71 (1997)、JECFA FAS 30 (Access on October 2015)、ATSDR (2001)、SIDS (2004)、NTP DB (Access on October 2015))。以上より、陽性としているマウススポット試験はEHCにおいて弱陽性、IARCにおいてはinconclusiveとしており、決定的な知見とはいえない。また、その他のin vivo陽性知見は姉妹染色分体交換試験、コメットアッセイ及びDNA結合試験であり、直接的な知見ではない。また、トランスジェニック齧歯類突然変異試験での陰性知見から、区分2を支持する明確な陽性は認められず、ガイダンスに従い、分類できない。
発がん性GHS分類: 区分1B
ヒトでは、IARC が本物質とエチレンオキシド、クロロヒドリンなど他の物質への同時ばく露を受けた作業者でがん死亡が明らかな集団を対象とした複数のコホート研究、症例対照研究を総括し、3件のコホート研究でリンパ造血系腫瘍による過剰リスク、膵臓がんと胃がんの過剰リスクが各1件の疫学研究で示されたが、他のコホート研究、コホート内症例対照研究ではがんによる過剰リスクは示されなかったこと、全例が複数の化合物への複合ばく露であることを指摘し、本物質に限定したばく露とヒト発がんとの関連性を評価する上で、利用可能なデータは既存の疫学研究報告では不十分と結論した (IARC 71 (1999)、NTP RoC (13th, 2014))。
一方、実験動物ではラット、又はマウスを用いた経口経路での発がん性試験において、ラットでは血管肉腫 (雌雄)、前胃扁平上皮がん (雄)、乳腺の腺がん (雌) が、マウスでは悪性リンパ腫及び細気管支/肺胞腺腫 (雌雄)、肝細胞がん (雄)、乳腺の腺がん、子宮内膜の腫瘍 (雌) が、それぞれ認められており、実験動物では発がん性の十分な証拠があるとして、IARCはグループ2Bに分類した (IARC 71 (1999))。さらに、吸入経路によるラット及びマウスを用いた発がん性試験でも、ラットで乳腺の線維腺腫 (雌雄)、腺腫及び腺がん (雌)、皮下組織の線維腫 (雌雄)、腹膜の中皮腫 (雄)、マウスでは肝臓の血管肉腫 (雄)と肝細胞腺腫(雌)、細気管支/肺胞腺腫とがん (雌) など複数の部位で腫瘍発生が認められ、本物質は吸入経路でも実験動物で発がん性を示すことが証明されている (厚労省委託がん原性試験結果 (Access on August 2015))。
IARC以外の評価機関による分類結果としては、NTPが1981年に「R」に (NTP RoC (13th, 2014))、EPAが1991年に「B2 (probable human carcinogen) 」 に (IRIS Summary (Access on August 2015))、日本産業衛生学会が「2B」に (産衛学会許容濃度の勧告 (2015))、EUが「Carc. 1B」 に (ECHA SVHC Support Document (2011)) それぞれ分類しており、EUはこの分類結果を根拠に本物質を高懸念物質 (SVHC) に指定した。
以上、ヒトでの発がんの証拠はないが、実験動物ではラット、マウスの2種ともに吸入、経口の両経路で多臓器に腫瘍発生を示すことから、EUと同様に本項は区分1Bとした。
生殖毒性GHS分類: 分類できない
ヒトの生殖影響に関して、職業ばく露による流産、早産の報告があるが、女性作業者は本物質以外にガソリン、ジクロロメタンなどとの複合ばく露を受けた (DFGOT vol. 3 (1992)、NITE初期リスク評価書 (2005)) と記述されており、本物質ばく露との関連性が明らかな報告はない。
実験動物では、マウスを用いた経口経路での2世代生殖毒性試験、及びラットを用いた吸入経路での1世代生殖毒性試験では、前者で50 mg/kg/dayまでの用量、後者では 150 ppm (617 mg/m3) までの用量で、いずれもF0、F1世代の親動物に一般毒性影響及び生殖能への影響、児動物の成長、生存率などに有害影響はみられなかった (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。一方、発生毒性試験としては、経口経路では妊娠ラットの妊娠6〜15日に強制経口投与した試験で、母動物に体重増加抑制、死産児産出が生じる用量 (200 mg/kg/day以上) で胎児死亡、吸収胚の増加がみられた (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)) が、吸入経路では妊娠ラットに妊娠6〜15日、又は妊娠6〜20日に吸入ばく露した2試験、及び妊娠ウサギに妊娠6〜18日に吸入ばく露した試験で、いずれも母動物毒性 (体重増加抑制、死亡例発現) が明らかな濃度までばく露されたが、胎児に異常はみられなかった (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。
以上より、SIDSでは経口、及び吸入経路でのマウス又はラットを用いた生殖毒性試験で親動物の生殖能、児動物の出生前後の生存率、生後の成長発達に有害影響は示されず、また、経口、及び吸入経路での妊娠ラット又は妊娠ウサギを用いた発生毒性試験で、母動物に毒性が発現する用量まで胚/胎児への毒性はみられず、全体として本物質は生殖発生毒性物質とは考えがたいと結論した (SIDS (2004))。これに従えば、「区分外」に該当すると考えられる。しかしながら、妊娠ラットの経口経路での発生毒性試験では、母動物毒性が発現する用量で、胎児死亡の増加がみられていること (区分2相当の可能性あり)、経口及び吸入経路でのマウス又はラットを用いた生殖毒性試験では親動物に明確な一般毒性影響が発現する用量まで投与されておらず、生殖発生毒性がないと結論する上で、親動物への投与量が適切であったか検証が必要と思われる。すなわち、「区分外」とするには試験内容に疑問が残り、分類区分を付すに足る決定的証拠もなく、本項は分類できないとした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)GHS分類: 区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓、消化管)、区分3 (麻酔作用)
本物質は多くのヒトデータ及び実験動物データが報告されている。本物質は気道刺激性がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、ACGIH (7th, 2001))。ヒトの中毒事例では、吸入または経口摂取により、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈、麻酔作用、中枢神経抑制、振戦、眼振、自律神経症状、瞳孔散大、脳神経細胞萎縮 (小脳プルキンエ細胞層の核濃縮を伴う萎縮)、腹部疝痛、胃腸管障害、下痢、心臓血管系への影響 (心不整脈、心窩部痛、心臓の狭窄感、心血管不全、心臓の表層点状出血、心筋変性)、血液凝固因子低下、血小板減少、白血球増加、呼吸不全、肺うっ血、肝臓傷害、肝細胞壊死、腎臓傷害、腎尿細管壊死、尿タンパク、チアノーゼ、死亡例の剖検では主要器官の充血や出血、肺水腫の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.3 (1992)、PATTY (6th, 2012)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1984)、CICAD 1 (1998)、EHC 176 (1995)、IARC 20 (1979)、IARC 71 (1997)、ATSDR (2001))。
実験動物では、ラットの吸入ばく露 (区分1相当の用量) で、中枢神経系抑制、体温低下、昏睡、無呼吸、肺水腫、心筋変性、肝臓傷害、腎臓傷害、チアノーゼ、生存例の剖検所見から、肝臓及び腎臓重量増加、プロトロンビン時間延長、ホスファターゼ減少、肝臓の脂質増加、うっ血、実質の出血性壊死、脂肪変性、腎臓のうっ血、出血、皮質変性、ラットの経口投与 (区分2相当の用量) で、自発運動低下、歩行失調、肝臓傷害(脂肪変性、出血性壊死)、腸血管のうっ血など、腎臓傷害(腎臓うっ血、出血、壊死、間質性浮腫、尿細管拡張、尿細管上皮脂肪変性、尿細管細胞肥大)、肺傷害 (肺うっ血、出血、肺水腫、胸水の貯留の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.3 (1992)、PATTY (6th, 2012)、SIDS (2004)、ATSDR (2001))。
以上より、本物質は麻酔作用の他、中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓、消化管への影響があり、区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓、消化管)、区分3 (麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)GHS分類: 区分1 (神経系、肝臓、心血管系、甲状腺)、区分2 (血液系、腎臓)
ヒトでは本物質を扱う飛行機工場で本物質にばく露された作業者に肝臓及び胆管の疾患、神経症状、自律神経失調、甲状腺機能亢進症などの発生率が高いことが米国NIOSHにより報告されたとの記述 (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003))、及び0.5〜5年間にわたり、最高20 mg/m3で本物質にばく露された作業者に自律神経失調、神経筋の障害、徐脈、発汗、疲労、被刺激性、不眠症などの増加が報告されたとの記述 (環境省リスク評価第2巻 (2003)) より、ヒトにおける本物質反復ばく露による標的臓器としては、神経系、肝臓、心血管系、甲状腺が考えられる。
実験動物では、SDラットに13週間強制経口投与した試験では、区分2相当の75 mg/kg/dayで、肝臓及び腎臓相対重量の増加、血液影響 (ヘモグロビン量、ヘマトクリット値の低下) が、F344ラットに13週間強制経口投与した試験では、区分2相当の18〜30 mg/kg/day以上で肝臓、腎臓重量の増加、区分2を超える用量範囲では振戦、流涎、呼吸器困難などの神経症状、呼吸器症状がみられ、240〜200 mg/kg/dayの用量で90〜100%死亡、小脳の壊死、前胃粘膜の炎症、過形成、及び胸腺の壊死がみられている (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003))。これに対し、F344ラットに13週間飲水投与した試験では、強制経口投与時と比べて毒性発現は軽減したが、区分2相当の1,000 ppm (86〜102 mg/kg/day) で、 腎尿細管上皮の再生がみられた (SIDS (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)) との記述がある。一方、吸入経路では12ヶ月齢のラットに対し、本物質を12ヶ月間吸入ばく露した試験において、50 ppm (ガイダンス値換算濃度: 0.17 mg/L/6 hr/day (区分1相当)) 以上で、血清ALT、尿酸、尿素窒素の上昇がみられた (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)) との記述がある。以上の実験動物による試験結果からは、ヒトの標的臓器候補のうち、神経系と肝臓への影響が確認され、その他、腎臓、血液系への影響が区分2の用量範囲でみられた。
以上より、本項は区分1 (神経系、肝臓、心血管系、甲状腺)、区分2 (血液系、腎臓) とした。
吸引性呼吸器有害性GHS分類: 分類できない
本物質は炭化水素でないが、ヒトの急性ばく露事例として、本物質を経口摂取したヒトで肺水腫が生じたとの症例報告5件のうち1件は本物質の吸引による化学性肺炎による可能性がある (ATSDR (2001)) との記述がある 。また、HSDBに収載された数値データ (粘性率: 0.84 mPa・s (20℃)、密度 (比重) : 1.2351 (20℃)) より、動粘性率計算値は0.68 mm2/sec (20℃) である。以上からは「区分1」相当と考えられるが、ATSDR以降の評価書では多量に飲み込んだ場合、又は吸入した場合に肺水腫を起こすことがある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第2巻 (2003)) との記述に留まり、最新のICSCでも吸入すると肺水腫を起こすことがあると記述されている (ICSC (2013)) のみで、吸引による肺傷害を支持する知見が見当たらない。さらに、EU CLP分類にも、本項に該当する有害性警句 (H304) の追加はない (ECHA SVHC Draft Support Document (Access on August 2015))。以上より、本項はデータ不足のため分類できないとした。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性(急性)GHS分類: 区分2
甲殻類(アルテミア属)での72時間LC50 = 6900μg/L(環境省リスク評価第2巻, 2003)であることから、区分2とした。
水生環境有害性(長期間)GHS分類: 区分2
急性毒性区分2であり、急速分解性がない(難分解性、BODによる分解度:0%(既存点検, 1978))ことから、区分2とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄の前に、可能な限り無害化、安定化及び中和等の処理を行って危険有害性のレベルを低い状態にする。
廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号1184
国連品名ETHYLENEDICHLORIDE
国連危険有害性クラス3
副次危険6.1
容器等級K
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する
国内規制
海上規制情報船舶安全法に従う。
航空規制情報航空法に従う。
陸上規制情報消防法、道路法に従う。
特別安全対策移送時にイエローカードの保持が必要。
輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号131

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
化審法優先評価化学物質
旧第2種監視化学物質
労働安全衛生法危険物・引火性の物
健康障害防止指針公表物質
名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9)
名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)
作業環境評価基準
特定化学物質第2類物質、特別有機溶剤等
特定化学物質特別管理物質
港則法その他の危険物・引火性液体類
下水道法水質基準物質
航空法引火性液体
道路法車両の通行の制限
消防法第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体
水質汚濁防止法有害物質
船舶安全法引火性液体類
大気汚染防止法揮発性有機化合物
自主管理指針対象物質
有害大気汚染物質、優先取組物質
海洋汚染防止法有害液体物質
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第1種指定化学物質
外国為替及び外国貿易管理法輸入貿易管理令第4条第1項第2号輸入承認品目「2の2号承認」
輸出貿易管理令別表第2
輸出貿易管理令別表第1の16の項
輸出貿易管理令別表第2
特定廃棄物輸出入規制法
(バーゼル法)
廃棄物の有害成分・法第2条第1項第1号イに規定するもの
労働基準法
(疾病、がん原性、etc)
疾病化学物質
土壌汚染対策法特定有害物質

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
[注意] 本SDSはJIS Z7253:2012 に準拠して作成しています。