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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
メタクリル酸-2,3-エポキシプロピル
作成日 2003年05月06日
改訂日 2018年03月16日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称メタクリル酸-2,3-エポキシプロピル (Methacrylic acid, 2,3-epoxypropyl ester)
製品コードR02-B-023
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限アクリル粉体塗料や溶剤型アクリル塗料などの塗装用樹脂原料、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂 (ABS樹脂) とポリスチレン樹脂の樹脂相溶化剤などの樹脂改質剤等原料、アクリル樹脂エマルジョン系の接着剤樹脂原料 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性引火性液体区分4
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分4
急性毒性 (経皮)区分3
皮膚腐食性/刺激性区分1
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分1
皮膚感作性区分1A
生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分1B
生殖毒性区分1B
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (呼吸器)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (呼吸器)
分類実施日
(環境有害性)
平成29年度、政府向けGHS分類ガイダンス (平成25年度改訂版 (Ver.1.1))
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分2
水生環境有害性 (長期間)区分3
GHSラベル要素
絵表示どくろ腐食性健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報可燃性液体
飲み込むと有害
皮膚に接触すると有毒
重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
重篤な眼の損傷
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
呼吸器の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器の障害
水生生物に毒性
長期継続的影響によって水生生物に有害
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
 保管換気の良い場所で保管すること。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名メタクリル酸-2,3-エポキシプロピル
別名メタクリル酸グリシジル
グリシジルメタクリレート
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C7H10O3 (142.15)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号106-91-2
官報公示整理番号
(化審法)
2-1041
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物添加された安定剤や抑制剤がこの物質の毒性に影響を与える可能性がある。

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師に連絡すること。
半座位。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
医療機関に連絡する。
飲み込んだ場合気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
コップ1、2杯の水を飲ませる。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 咳、咽頭痛、息苦しさ。
皮膚: 発赤、痛み、皮膚熱傷。
眼: 発赤、痛み、熱傷。
経口摂取: 咽頭痛、咽喉や胸部の灼熱感、腹痛。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤粉末消火薬剤、二酸化炭素、泡消火薬剤
使ってはならない消火剤情報なし
特有の危険有害性可燃性。
61℃以上では、蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。
特有の消火方法水を噴霧して容器類を冷却する。
消火を行う者の保護情報なし

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に防毒マスクを使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材漏れた液をふた付きの容器に集める。
この物質を環境中に放出してはならない。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項裸火禁止。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。
施錠して保管すること。
安定化した状態でのみ貯蔵。
涼しい場所。
密封。
暗所に保管。
強力な酸化剤、強力塩基、強酸、食品や飼料から離しておく。
排水管や下水管へのアクセスのない場で貯蔵する。
消火により生じる流出物を収容するための用意。
安全な容器包装材料消防法、国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)0.01 ppm、0.06 mg/m3
ACGIH (2020年版)未設定
設備対策61℃以上では、密閉系および換気。
取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
換気、局所排気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に防毒マスクを使用することとの記載あり)
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡や保護面を着用する。(ICSCには、顔面シールド、または呼吸用保護具と保護眼鏡を併用することとの記載あり)
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い特徴的な臭気
融点/凝固点-41.5℃ (HSDB (Access on April 2020))
沸点、初留点及び沸騰範囲189℃ (HSDB (Access on April 2020))
可燃性可燃性 (HSDB (Access on April 2020))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点76℃ (c.c.) (GESTIS (Access on April 2020))
自然発火点389℃ (RAC (Background Document) (2015))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率5.481 cP (70°F) (21℃) (HSDB (Access on April 2020))
溶解度水: 5 g/100 mL (ICSC (2006))
ベンゼン、エチルエーテル、エタノールに易溶 (HSDB (Access on April 2020))
n-オクタノール/水分配係数log Pow = 0.96 (ICSC (2006))
蒸気圧4.2 hPa (25℃) (GESTIS (Access on April 2020))
密度及び/又は相対密度1.08 (水=1) (ICSC (2006))
相対ガス密度4.9 (空気=1) (ICSC (2006))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性加熱および、光、過酸化物、塩基の影響下で重合することがある。
危険有害反応可能性強酸、強塩基、強力な酸化剤と激しく反応し、火災の危険をもたらす。
避けるべき条件加熱、光、混触危険物質との接触
混触危険物質強酸、強塩基、強力な酸化剤
危険有害な分解生成物61℃以上では、蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(7) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 597 mg/kg (CLH Report (2015)、SIAR (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2018)、HSDB (Access on April 2020))
(2) ラットのLD50: 290〜827 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008))
(3) ラットのLD50: 451 mg/kg (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2018))
(4) ラットのLD50: 500 mg/kg (MOE初期評価第17巻 (2019)、GESTIS (Access on April 2020))
(5) ラットのLD50: 700 mg/kg (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2018))
(6) ラットのLD50: 1,050 mg/kg (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2018))
(7) ラットのLD50: 0.29 g/kg (290 mg/kg) (HSDB (Access on April 2020))
経皮【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分3とした。

【根拠データ】
(1) ウサギのLD50: 480 mg/kg (CLH Report (2015)、SIAR (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2018))
(2) ウサギのLD50: 483〜996 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008))
(3) ウサギのLD50: 484 mg/kg (GESTIS (Access on April 2020))
(4) ウサギのLD50: 450 uL/kg (換算値: 486 mg/kg) (MOE初期評価第17巻 (2019))
(5) ウサギのLD50: 469 mg/kg (HSDB (Access on April 2020))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しないとした。
吸入: 蒸気【分類根拠】
(1) より、区分を特定できず、分類できない。
ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (4,145 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
なお、参考データとしたLC50値45 ppmの情報源はRTECSであり、原典が入手不可能で詳細不明であるため根拠としなかった。

【根拠データ】
(1) ラットの吸入ばく露試験 (4時間): > 412 ppmで死亡例なし (CLH Report (2015))、2,394 mg/m3 (412 ppm) で死亡例なし (SIAR (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2018))、105〜412 ppm (NITE初期リスク評価書 (2008))
(2) 本物質の蒸気圧: 4.2 hPa (25℃) (GESTIS (Access on April 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 4,145 ppm)

【参考データ等】
(3) ラットのLC50 (4時間): 45 ppm (MOE初期評価第17巻 (2019)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2018))
(4) ラットのLC50 (4時間): 45〜> 412 ppm (NITE初期リスク評価書 (2008))
(5) ラットのLC50 (4時間): 0.262 mg/L (45.1 ppm) (GESTIS (Access on April 2020))
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) OECD TG 404と同等のウサギを用いた皮膚刺激性試験において、2/6例に中等度の皮膚壊死がみられている (CLH Report (2015))。
(2) 本物質は腐食性物質であり、0.1 mLの適用により、適用部位には1〜2日後に発赤、浮腫、水疱を生じ、3日後には皮下出血及び潰瘍を生じる (CLH Report (2015)、SIAR (2002))。
(3) ウサギを用いた皮膚刺激性試験(4時間適用)において、壊死及び軽度から重度の浮腫を含む中等度から重度の皮膚刺激性を示す (SIAR (2002))。
(4) OECD TG404に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で腐食性を示した (REACH登録情報(Access on June 2020)) 。

【参考データ等】
(5) 本物質との接触により、皮膚に刺すような痛みや腐食を引き起こす可能性があり、水疱を生じることもあるが、ウサギの試験では中等度の刺激性にとどまる (GESTIS (Access on April 2020))。
(6) ウサギの皮膚に本物質 500μL を24 時間適用した皮膚刺激性試験で、強度の刺激性がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008))。
(7) 本物質は眼、皮膚、気道を重度に刺激する (MOE初期評価第17巻 (2019))。
(8) EU-CLP分類でSkin Corr. 1C (H314) に分類されている (EU CLP分類 (Access on June 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 本物質 (0.02〜0.1mL) はウサギの眼に対し中等度から強度の刺激性を示す (GESTIS (Access on April 2020))。
(2) 本物質は皮膚腐食性 (区分1) に区分されている (令和2年度GHS分類結果)。

【参考データ等】
(3) ウサギの眼に本物質 100μL を適用した眼刺激性試験で、中等度の刺激性がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008))。
(4) 本物質は眼、皮膚、気道を重度に刺激する (MOE初期評価第17巻 (2019))。
(5) 本物質はOECD TG405類似の方法で軽度から中等度の結膜炎、適用後1週間で回復する軽度の角膜損傷を示す (CLH Report (2015))。
(6) OECD TG405に準拠し、ウサギ (3匹) を用いた眼刺激性試験において、角膜混濁、虹彩の適用24時間後から72時間後の平均スコアが1を超える動物は1/3例、結膜発赤あるいは浮腫の平均スコアが2を超える動物は1/3例であり、全ての所見は7日以内に消失した (ECETOC TR 48 (1998))。
(7) EU-CLP分類でEye Dam. 1 (H318) に分類されている (EU CLP分類 (Access on June 2020))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
区分1、区分1Aまたは区分1Bを指示するデータ (2)〜(4) が混在するが、(1) より産衛学会 感作性分類 皮膚第2群に指定されていることから、ガイダンスに従い、区分1Aとした。


【根拠データ】
(1) 本物質は産衛学会 感作性分類 皮膚第2群に指定されている (日本産業衛生学会学会誌 (2018))。
(2) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法、経皮投与 10〜25%) において陽性 (陽性率70〜80%) と報告されている (EU CLP CLH (2015)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。
(3) 本物質を含有する粘着性シーラントの製造に携わる作業者等に対するパッチテストで陽性の報告がある (EU CLP CLH (2015))。
(4) 本物質は人とモルモットに対して中等度の皮膚感作性物質である (CLH Report (2015))。

【参考データ等】
(5) EU-CLP分類でSkin Sens. 1(H317)に分類されている (EU CLP分類(Access on June 2020))。
(6) モルモットに経皮適用あるいは皮内投与した皮膚感作性試験において陰性あるいは陽性と報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2) より、ガイダンスに従い区分2とした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、経口投与、腹腔内投与によるマウスの骨髄細胞を用いた小核試験でそれぞれ陽性、陰性の結果、吸入ばく露によるトランスジェニックラットの嗅上皮細胞、呼吸上皮細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陰性、腹腔内投与によるマウスの生殖細胞を用いた不定期DNA合成試験で陽性であるが用量依存性は認められていない (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2002)、MOE初期評価第17巻 (2019))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、不定期DNA合成試験で陽性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2002)、MOE初期評価第17巻 (2019))。
発がん性【分類根拠】
ヒトでの発がん性に関する情報はない。本物質は、厚生労働省が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針の対象物質である。(1)〜(4) に基づき、区分1Bとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2A (IARC 125 (In prep.))、産衛学会で第2群A (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (2018年提案))、EU CLPで1B (EU CLP分類 (Access on May 2020)) に分類されている。
(2) 雌雄のラットに本物質を104週間吸入ばく露した発がん性試験で、雌雄とも鼻腔の腫瘍 (扁平上皮がん、腺腫、鼻腔神経上皮腫など)、雄では皮下組織の線維腫及び腹膜の中皮腫、雌では乳腺の線維腺腫 の発生増加が認められた (がん原性試験 (2015))。
(3) 雌雄のマウスに本物質を104週間吸入ばく露した発がん性試験で、雌雄とも鼻腔の腫瘍 (血管腫、血管肉腫など)、雄では前胃の扁平上皮乳頭腫、雌では肺の細気管支-肺胞上皮がんと子宮の組織球性肉腫の発生増加が認められた (がん原性試験 (2015))。
(4) 本物質は労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき、厚生労働大臣が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための改正指針の対象物質である (令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第27号)。
生殖毒性【分類根拠】
(1)、(2) より、精子に対する影響と関連したと考えられる受胎能の低下がみられ、(3) より吸収胚の増加もみられていることから区分1Bとした。なお、根拠データについて再検討し旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、親動物毒性 (前胃の組織変化) がみられる用量 で、精子の運動性の低下によるものと考えられる受胎率の低下 (0、10、30、100 mg/kg/day: 81.8、100.0、91.7、16.7%) がみられた (既存点検結果 (Access on June 2017)、NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2002)、CLH Report (2015))。
(2) 雄マウスに5日間腹腔内投与して精子の異常を調べた2つの試験において、精子細胞数減少、精子異常増加がみられている (CLH Report (2015))。
(3) 雌ラットの妊娠5〜15日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制) がみられる用量で吸収胚の増加がみられている (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2002)、CLH Report (2015))。
(4) 日本産衛学会では、(1) において雄ラットの精子運動性の低下によるものと思われる受胎率の低下が報告されていることを根拠として生殖毒性物質第3群 (ヒトに対する生殖毒性の疑いがある物質) としている (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2018))。

【参考データ等】
(5) 雌ウサギの妊娠7〜19日に吸入ばく露した2つの発生毒性試験において、母動物毒性 (鼻腔上皮の変性、びらん、壊死) がみられる用量においても胎児に影響はみられていない (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIAR (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2018))。
(6) EU CLP分類ではRepr.1Bに分類されている (EU CLP分類 (Access on May 2020)) 。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
本物質のヒトでの単回ばく露に関する報告はない。(1)、(2) より、区分1 (呼吸器) とした。

【根拠データ】
(1) ラットの4時間単回吸入ばく露試験において、1.563 mg/L (269 ppm、区分1の範囲) で努力呼吸、体重減少がみられたとの報告がある (SIAR (2002))。
(2) ラット、ウサギ、モルモット、イヌの6時間単回吸入ばく露試験において、1.4 mg/L (4時間換算値: 1.71 mg/L (294.9 ppm、区分1の範囲)) で、肺、胸郭、呼吸に変化がみられたとの報告がある (SIAR (2002)) 。

【参考データ等】
(3) 投与経路や用量の詳細は不明だが、ラット及びマウスで自発運動の低下、努力性呼吸、喘ぎ呼吸、呼吸促迫、筋力低下、痙攣、立毛、体温低下などが報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
本物質のヒトでの反復ばく露に関する報告はない。(1) より、実験動物において区分1の用量で鼻腔への影響がみられたとの情報があったことから、区分1 (呼吸器) とした。

【根拠データ】
(1) ラット、マウスを用いた13週間吸入毒性試験 (蒸気、6時間/日、5日/週ばく露) において、ラットでは20 ppm (90日換算0.084 mg/L、区分1の範囲) で鼻腔の呼吸上皮の再生・過形成・扁平上皮化生・びらん、嗅上皮の壊死・萎縮・再生、マウスでは1 ppm (90日換算0.0042 mg/L、区分1の範囲) 以上で鼻腔の呼吸上皮、嗅上皮及び嗅腺の変化の報告がある (厚労省委託がん原性試験結果 (2015))。他に、ラットで15 ppm (90日換算0.063 mg/L、区分1の範囲) で鼻腔の呼吸上皮過形成の報告がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2018)、CLH Report (2015)、SIAR (2002)、MOE初期評価第17巻 (2019))。
誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、(1)より、動粘性率は21℃で5.1 mm2/secと算出され、40℃の動粘性率が14 mm2/s以下であるが、その他の情報は得られなかった。
【参考データ】
(1)動粘性率は、21℃で5.1 mm2/s(21℃での粘性率5.481 mPa・s(HSDB (Access on April 2020)) と密度1.07 g/cm3 (HSDB (Access on April 2020)) から算出)である。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)魚類 (メダカ) 96時間LC50 = 2.8 mg/L (環境省生態影響試験 (2017)、OECD SIDS (2000)) であることから、区分2とした。
水生環境有害性 (長期間)急速分解性があり (良分解性、BODによる平均分解率: 93.5% (化審法DB: (1991)))、蓄積性がなく (LogKow: 0.81 (SRC PhysProp Database (2017)))、甲殻類 (オオミジンコ) の21日間NOEC (繁殖阻害) = 1.0 mg/L (環境省生態影響試験 (2017)) であることから、区分3とした。
オゾン層への有害性データなし

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号2922
国連品名CORROSIVE LIQUID, TOXIC, N.O.S.
国連危険有害性クラス8
副次危険6.1
容器等級L
海洋汚染物質-
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質-
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報毒物及び劇物取締法、消防法の規定に従う。
特別な安全上の対策毒物及び劇物取締法、消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*154
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法変異原性が認められた既存化学物質(法第57条の5、労働基準局長通達)【217 メタクリル酸グリシジル】
健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項・厚労省指針公示)【メタクリル酸2,3−エポキシプロピル】
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【417 メタクリル酸2,3−エポキシプロピル】
毒物及び劇物取締法劇物(指定令第2条)【18の4 オキシラン−2−イルメチル=メタクリラート及びこれを含有する製剤】
化学物質審査規制法旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号1049 メタクリル酸2,3−エポキシプロピル(平成23年4月1日をもって廃止)】
消防法第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1)【5 第三石油類非水溶性液体】
航空法毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】2922 その他の腐食性物質(液体)(毒性のもの)】
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】2922 その他の腐食性物質(液体)(毒性のもの)】
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)【228 メタクリル酸2,3−エポキシプロピル】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用