安全データシート
スチレン
作成日 2008年10月06日
改訂日 2016年3月31日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称スチレン (Styrene)
製品コードH27-B-078
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限ポリスチレン樹脂・アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体 (ABS) 樹脂・合成ゴム・不飽和ポリエステル樹脂合成原料, 塗料樹脂・イオン交換樹脂・化粧品原料

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
H28.03.18、政府向けGHS分類ガイダンス(H25年度改訂版(ver1.1))を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性引火性液体区分3
健康に対する有害性急性毒性(吸入:蒸気)区分4
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2A
生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分2
生殖毒性区分1B
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1 (神経系、呼吸器、血液系、肝臓)
吸引性呼吸器有害性区分1
分類実施日
(環境有害性)
環境に対する有害性はH18.3.31、GHS分類マニュアル (H18.2.10 版) を使用
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性) 区分2
注)  上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」に該当する。なお、健康有害性については後述の11項に、「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」の記述がある。
GHSラベル要素
絵表示炎感嘆符健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報引火性液体及び蒸気
飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ
皮膚刺激
強い眼刺激
吸入すると有害
呼吸器への刺激のおそれ
眠気又はめまいのおそれ
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれの疑い
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
中枢神経系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、呼吸器、血液系、肝臓の障害
水生生物に毒性
注意書き
安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地すること/アースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合:多量の水と石けん (鹸) で洗うこと。
皮膚 (又は髪) に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
特別な処置が必要である (このラベルの・・・を見よ) 。
無理に吐かせないこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診断、手当てを受けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性データなし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名スチレン
別名フェニルエチレン,エテニルベンゼン,スチロール
濃度又は濃度範囲100%
分子式 (分子量)C8H8 (104.152)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号100-42-5
官報公示整理番号
(化審法)
3-4
官報公示整理番号
(安衛法)
データなし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物データなし

4.応急措置
吸入した場合気分が悪い時は、医師の診断、手当てを受けること。
症状が続く場合には、医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合大量の水で洗うこと。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
眼に入った場合水で15〜20分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
飲み込んだ場合水で口をすすぎ、直ちに医師の診断を受けること。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状データなし
応急措置をする者の保護救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項データなし

5.火災時の措置
消火剤小火災: 二酸化炭素、粉末消火剤、散水、耐アルコール性泡消火剤
大火災: 散水、噴霧水、耐アルコール性泡消火剤
使ってはならない消火剤火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。
特有の危険有害性加熱により容器が爆発するおそれがある。
火災によって刺激性、毒性、又は腐食性のガスを発生するおそれがある。
引火性液体及び蒸気
特有の消火方法散水によって逆に火災が広がるおそれがある場合には、上記に示す消火剤のうち、散水以外の適切な消火剤を利用すること。
引火点が極めて低い: 散水以外の消火剤で消火の効果がない大きな火災の場合には散水する。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
移動不可能な場合、容器及び周囲に散水して冷却する。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置漏洩物に触れたり、その中を歩いたりしない。
直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
関係者以外の立入りを禁止する。
作業者は適切な保護具 ( 「8 .ばく露防止及び保護措置」の項を参照) を着用し、眼、皮膚への接触やガスの吸入を避ける。
漏洩しても火災が発生していない場合、密閉性の高い、不浸透性の保護衣を着用する。
風上に留まる。
低地から離れる。
密閉された場所に入る前に換気する。
少量の場合、乾燥土、砂や不燃材料で吸収し、あるいは覆って密閉できる空容器に回収する。
少量の場合、吸収したものを集めるとき、清潔な帯電防止工具を用いる。
大量の場合、盛土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いて回収する。
大量の場合、散水は、蒸気濃度を低下させる。しかし、密閉された場所では燃焼を抑えることが出来ないおそれがある。
すべての発火源を速やかに取除く (近傍での喫煙、火花や火炎の禁止) 。
環境に対する注意事項河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
環境中に放出してはならない。
封じ込め及び浄化の方法及び機材危険でなければ漏れを止める。
漏出物を取扱うとき用いる全ての設備は接地する。
蒸気抑制泡は蒸発濃度を低下させるために用いる。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8 . ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を
着用する。
安全取扱い注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
すべての安全注意を読み理解するまで取扱わないこと。
周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
容器を転倒させ、落下させ、衝撃を加え、又は引きずるなどの取扱いをしてはならない。
接触、吸入又は飲み込まないこと。
眼に入れないこと。
ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
接触回避「1 0 . 安定性及び反応性」を参照。
衛生対策取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件熱、火花、裸火のような着火源から離して保管すること。- 禁煙。
酸化剤から離して保管する。
容器は直射日光や火気を避けること。
容器を密閉して換気の良い冷所で保管すること。
施錠して保管すること。
安全な容器包装材料消防法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度20 ppm (スチレン)
許容濃度
日本産衛学会
(2015年度版)
20 ppm
85 mg/m3 (スチレン)
ACGIH (2015年版) TLV-TWA: 20 ppm 85 mg/m3
LV-STEL: 40 ppm 170 mg/m3
(スチレン、モノマー)
設備対策指定された防爆の電気・換気・照明機器を使用すること。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行なうこと。
高熱工程でミストが発生するときは、空気汚染物質を管理濃度以下に保つために換気装置を設置する。
密閉された装置、機器又は局所排気を使用しなければ取扱ってはならない。
気中濃度を推奨された管理濃度以下に保つために、工程の密閉化、局所排気、その他の設備対策を使用する。
この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
保護具
呼吸用保護具必要に応じて保護マスクや呼吸用保護具を着用する。
手の保護具手に接触する恐れがある場合、保護手袋を着用する。
眼の保護具眼に入る恐れがある場合、保護眼鏡やゴーグルを着用する。
皮膚及び身体の保護具必要に応じて保護衣、保護エプロン等を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状液体 (20℃,1気圧) (GHS判定)
透明な黄色(ICSC (2006))
臭い甘く鋭いにおい (ACGIH (7th, 2001))
臭いのしきい (閾) 値0.04〜0.08〜0.32 ppm (ACGIH (7th, 2001))
pHデータなし
融点・凝固点-30.6℃ (ICSC (2006))
沸点、初留点及び沸騰範囲145℃ (ICSC (2006))
引火点31℃ (密閉式) (ICSC (2006))
蒸発速度 (酢酸ブチル=1) データなし
燃焼性 (固体、気体) データなし
燃焼又は爆発範囲下限 0.9 vol%
上限 6.8 vol% (ICSC (2006))
蒸気圧0.67 kPa (20℃) (ICSC (2006))
蒸気密度3.6 (空気 = 1) (ICSC (2006))
比重 (相対密度) 0.9016 g/cm3 (25℃) (HSDB (2015))
溶解度水: 0.03 g/ 100mL (20℃) (ICSC (2006))
二硫化炭素、アルコール、エーテル、メタノール、アセトン、トルエン、エタノール、n-ヘプタン、四塩化炭素:可溶。
ベンゼン: 混和する。 (HSDB (2015))
n-オクタノール/水分配係数log Pow = 3.0 (ICSC (2006))
自然発火温度490℃ (ICSC (2006))
分解温度データなし
粘度 (粘性率) 0.696 cP(25℃) (HSDB (2015))

10.安定性及び反応性
反応性引火性液体。
空気に反応する。
爆発性過酸化物を生成することがある。
ゴム、銅および銅合金を侵す。
自然に重合する。
鋼、ステンレス鋼及びアルミニウムは容器として耐久性がある。
化学的安定性わずかに揮発する。
光反応性を有する。
化学的に不安定である。
危険有害反応可能性引火点近傍での加熱時、蒸気と空気の混合物は爆発性を有する。
室温における光などにより自然に重合が開始された場合に、急激に熱を伴う重合が進み、爆発を生じる危険がある。
加温、光の影響下、酸化剤、酸素および過酸化物により重合し、火災や爆発の危険をもたらす。
酸素、強酸、水酸化物、32℃付近での保管、過酸化物、重合促進剤との接触で爆発を生じる危険がある。
ナトリウム、三塩化アルミニウム等との接触で重合する。
酸化剤、鉄・塩素触媒等と危険な反応を生じる。
強酸や強力な酸化剤と激しく反応し、火災や爆発の危険をもたらす。
避けるべき条件加温、光との接触、32℃付近での保管
混触危険物質ゴム、銅および銅合金、ナトリウム、酸塩化アルミニウム、酸素、強酸、酸化剤、水酸化物、過酸化物、重合促進剤、鉄・塩素触媒。
危険有害な分解生成物データなし

11.有害性情報
急性毒性
経口GHS分類: 区分外
ラットのLD50値として、2,650 mg/kg (環境省リスク評価第13巻 (2015))、5,000 mg/kg (環境省リスク評価第13巻 (2015))、5,000 mg/kg (ATSDR (2010)、ACGIH (7th, 2001)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1999)、JECFA FAS 19 (1984))、5,000 mg/kg (環境省リスク評価第1巻 (2002))、5,000 mg/kg (EHC 26 (1983))、5,500 mg/kg (JECFA FAS 19 (1984))、1,000〜5,000 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) との7件の報告がある。最も多くのデータ (6件) が区分外 (うち5件が国連分類基準の区分5に該当) に該当するので区分外 (国連分類基準の区分5) とした。なお、1件のデータは複数データを取りまとめた値であるので、分類には採用しなかった。
経皮GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
吸入:ガスGHS分類: 分類対象外
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気GHS分類: 区分4
ラットのLC50値 (4時間) として、2,770 ppm (環境省リスク評価第13巻 (2015)、ATSDR (2010)、NITE初期リスク評価書 (2007)、ACGIH (7th, 2001)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1999))、2,800 ppm (2件) (NITE初期リスク評価書 (2007))、6,000 ppm (PATTY (6th, 2012)) との報告に基づき、区分4とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (7,206 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミストGHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性GHS分類: 区分2
ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、皮膚の著しい刺激及び部分的な変性 がみられたとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2007)) や、本物質は皮膚を刺激し、皮膚との接触により発赤、痛みを生じるとの記載がある (環境省リスク評価第13巻 (2015))。以上から区分2とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性GHS分類: 区分2A
ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG405) において、結膜の発赤、結膜炎、流涙などがみられ、4匹中1匹で結膜発赤が7日目まで観察されたとの報告がある (ECETOC TR48 (1992))。また、ウサギを用いた複数の眼刺激性試験において、本物質の適用により中等度の結膜刺激及び損傷がみられ症状は7 日間持続したとの記載 (NITE初期リスク評価書 (2007)) や、眼瞼の炎症及び腫脹の報告 (NITE初期リスク評価書 (2007))、及び眼刺激性がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、EHC 26 (1983))。ヒトにおいても本物質ばく露による刺激性が複数報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、EHC 26 (1983))。以上、動物試験における中等度の刺激との記載から、区分2Aとした。
呼吸器感作性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性GHS分類: 区分2
in vivoでは、マウス骨髄細胞の小核試験で陽性、陰性、ラット骨髄細胞及び末梢血リンパ球の小核試験、チャイニーズハムスター骨髄細胞の小核試験で陰性、マウス骨髄細胞の染色体異常試験で陰性、ラット骨髄細胞の染色体異常試験で陽性、陰性、チャイニーズハムスター骨髄細胞の染色体異常試験で陰性、マウス骨髄細胞及びラット末梢血リンパ球の姉妹染色分体交換試験で陽性、マウス骨髄細胞及びラット末梢血リンパ球を用いたDNA鎖切断試験で陽性又は陰性、マウス肝臓の不定期DNA合成試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第13巻 (2015)、ATSDR (2010)、IARC 60 (1994)、IARC 82 (2002))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、小核試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性、陰性の結果がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第13巻 (2015)、IARC 60 (1994)、IARC 82 (2002)、ATSDR (2010))。以上より、ガイダンスに従い、区分2とした。
発がん性GHS分類: 区分2
ヒトではスチレンばく露により白血病、リンパ腫などリンパ造血系腫瘍のリスク増加が指摘され、欧米の繊維強化プラスチック製造業の作業者、又はスチレン-ブタジエンゴム製造工場の作業者を対象としたコホート研究が多数実施されたが、リンパ造血系腫瘍のリスク増加を示唆する結果と過剰リスクはなかったとする結果の両方があり、腫瘍のリスク増加を示す結果は概して過剰は小さく、統計学的検出力が弱く、サブグループでのみ有意差が得られる場合もあった (IARC 23 (2002))。
実験動物では、吸入経路ではラットを用いた1年間及び2年間ばく露試験の2試験において、最大1,000 ppmまでの用量ばく露によっても、腫瘍発生の増加はみられなかった (IARC 23 (2002))。一方、マウスを用いた2年間吸入ばく露試験では、20〜160 ppmの用量範囲で肺胞/細気管支の腺腫の発生頻度の増加が、160 ppmでは加えて雌に肺胞/細気管支のがんの発生頻度の増加がみられた (IARC 23 (2002))。経口経路ではラットを用いた52週間又は78週間強制経口投与による2試験で、各々250 mg/kg/day、又は1,000 mg/kg/dayまでの用量投与で、いずれも腫瘍発生の増加はなく、飲水投与で250 ppmまでの用量を2年間投与した試験でも腫瘍発生の増加はみられなかった。これに対し、マウスを用いた78週間強制経口投与試験では低用量の150 mg/kg/day 群から、肺胞/細気管支の腺腫、及びがんの合計頻度の有意な増加が雄に、統計的に有意ではないが増加傾向が雌にみられた (IARC 23 (2002))。総じて、ラットでは発がん性の証拠はないが、マウスでは吸入、経口のいずれの経路でも肺腫瘍発生の増加が示唆された (IARC 23 (2002))。
以上の結果より、IARCはスチレンばく露による発がん性に関して、ヒト、実験動物のいずれに対しても証拠は限定的であるとして、グループ「2B」に分類した (IARC vol. 23 (2002))。他の国際機関による分類結果としては、ACGIHが1997年以降「A4」 (ACGIH (7th, 2001)) に、NTPが2011年以降「R」 (NTP RoC (13th, 2014)) に、日本産業衛生学会が「2B」 (許容濃度の勧告 (2015)) にそれぞれ分類している。これらのうち、NTP Report on Carcinogens、第13版においても、IARC発行年以降の合成ゴム工場作業者を対象とした新しいコホート研究データなどが追加評価された結果としても、ヒトでのスチレンばく露による発がんの証拠は限定的とされている (NTP RoC (13th, 2014))。
以上、本項はIARCと日本産業衛生学会の分類結果を基に区分2とした。なお、EUは本物質の発がん性については分類区分を付していない (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
生殖毒性GHS分類: 区分1B
スチレン、ビスコースレーヨン製造工場に勤務した女性作業者では自然流産の比率の上昇がみられたとの報告があるが、その後の研究では自然流産の増加は認められなかったとの報告もある (IARC 82 (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由 (2015)、ATSDR (2010))。また、職業的にスチレンにばく露された女性の集団では、月経周期の乱れ、続発性無月経、出産児の誕生時体重の低値 (4%、統計的有意差なし) などがみられたとする報告があるが、女性作業者はスチレン以外にも同時に多くの溶媒にばく露されていたことが判明している (IARC 82 (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由 (2015)、ATSDR (2010))。
実験動物では、スチレンはラット及びマウスで胎盤通過性が明らかで、ラットの胎児中のスチレン濃度は母動物の血中濃度の約50%との報告がある (IARC 82 (2002))。発生毒性影響として、妊娠マウスの器官形成期 (妊娠6〜16日) に本物質 250 ppmを吸入ばく露した試験で、胎児死亡、及び胚/胎児吸収の増加、奇形誘発頻度の増加がみられたとの記述、また、妊娠ラットに最大300 ppmを妊娠7〜21日に吸入ばく露後に自然分娩させ、出生児の神経系発達への影響を評価した試験において、出生時体重の低値、開眼、歯牙萌出など成長指標の遅延、並びに聴覚驚愕反応性低下、立ち直り反射の低下など神経機能、平衡機能の発達遅延が認められ、これらの神経行動学的影響と脳内セロトニン濃度の低下との関連性が窺われたとの記述がある (産衛学会許容濃度の提案理由 (2015)、ATSDR (2010))。
以上、日本産業衛生学会はヒトでは不妊や妊娠出産異常のリスク増加とスチレンばく露について、ばく露濃度に対応したデータは得られておらず、また報告された生殖影響には交絡要因が非常に多く、ヒトでの影響は証拠が十分とはいえないが、動物実験においてはその次世代に対する影響が多くの実験により示されていることから、本物質を「生殖毒性物質第2群」に分類している (産衛学会許容濃度の提案理由 (2015))。したがって、本項は区分1Bとした。なお、EUは本物質を「Repr. 2」 に分類している (EU CL Inventory (Access on September 2015))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) GHS分類: 区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用)
本物質は気道刺激性、高濃度で麻酔作用がある (環境省リスク評価第13巻 (2015)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2010)、PATTY (6th, 2012))。ヒトにおいては、協調運動失調、バランス感覚の不調、軽度の筋力低下、前庭-眼球運動系の障害、急性神経毒性、吸入経路で眩暈、嗜眠、頭痛、吐き気、嘔吐、脱力感、意識喪失、経口経路で悪心、吐き気、嘔吐の報告がある (環境省リスク評価第13巻 (2015))、ATSDR (2010)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))。
実験動物では、ラットの吸入ばく露で活動低下、昏迷、協調運動失調、振戦、昏睡、マウスの吸入ばく露で呼吸数減少、重度の小葉中心性肝細胞凝固壊死の報告がある (ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2010)、PATTY (6th, 2012))。
以上より、本物質は気道刺激性、麻酔作用に加え、中枢神経系影響があり、区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。小葉中心性肝細胞凝固壊死の報告については詳細不明のため採用しなかった。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) GHS分類: 区分1 (神経系、呼吸器、血液系、肝臓)
ヒトにおいて、色覚異常や高周波難聴を含む中枢神経系に対する影響がみられたとの報告 (ACGIH (7th, 2001))、主に神経系に影響がみられたとの報告 (ATSDR (2010))、皮膚及び粘膜、中枢及び末梢神経系及び肝への影響が特に重要である。主な人への影響は色覚障害の他、末梢及び自律神経系障害、神経行動学的な影響、脳波異常、短期記憶障害との報告 (産衛学会生物学的ばく露指標の提案理由書 (2007))。呼吸器への影響として閉塞性肺障害、慢性気管支炎等を引き起こす。また、めまい、頭痛、疲労感、錯乱、不眠などの中枢神経系への作用、反応時間、言語性記憶の低下などの精神神経機能への影響、視覚・聴覚への影響、血液系への影響、AST、ALT、GGT 活性上昇などの肝臓への影響もみられているとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2007)) がある。
実験動物においても、神経系、気道粘膜、血液系、肝臓に対する影響がみられている。肝臓に対する影響は区分1又は2の範囲であったが、その他は高濃度ばく露での影響であり、区分2の範囲を超えていた。
以上のように、ヒトにおいて主に神経系に影響がみられ、その他、呼吸器、血液系、肝臓に対して影響がみられた。
したがって、区分1 (神経系、呼吸器、血液系、肝臓) とした。
吸引性呼吸器有害性GHS分類: 区分1
ヒトでの直接的な事例に基づく証拠はないが、本物質は炭化水素であり、HSDB (Access on September 2015) 収載の数値データ (粘性率: 0.696 mPas (25 ℃)、密度: 0.9016 g/cm3 (25 ℃)) より、動粘性率が0.772 mm2/sec (25 ℃) と算出される。よって、分類ガイダンスに従い区分1とした。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性) GHS分類: 区分2
魚類 (ファットヘッドミノー) の96時間LC50=4.02mg/L (CERI・NITE有害性評価書、2004) 他から、区分2とした。
水生環境有害性 (長期間) GHS分類: 区分外
急速分解性があり (BODによる分解度:100% (既存化学物質安全性点検データ) ) 、かつ生物蓄積性が低いと推定される (log Kow=2.95 (PHYSPROP Database、2005) ) ことから、区分外とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、または地方公共団体が廃棄物処理を行っている場合はそこに委託して処理する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号2055
国連品名STYRENEMONOMER,STABILIZED
国連危険有害性クラス3
副次危険-
容器等級V
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する
国内規制
海上規制情報船舶安全法に従う。船舶安全法に従う。
航空規制情報航空法に従う。航空法に従う。
陸上規制情報消防法、道路法に従う。消防法、道路法に従う。
特別安全対策移送時にイエローカードの保持が必要。
輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
危険物は当該危険物が転落し、又は危険物を収納した運搬容器が落
下し、転倒もしくは破損しないように積載すること。
危険物又は危険物を収納した容器が著しく摩擦又は動揺を起こさな
いように運搬すること。
危険物の運搬中、危険物が著しく漏れる等災害が発生するおそれが
ある場合には、災害を防止するための応急措置を講ずると共に、もよ
りの消防機関その他の関係機関に通報すること。
食品や飼料と一緒に輸送してはならない。
緊急時応急措置指針番号128

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
化審法優先評価化学物質
旧第2種監視化学物質
労働安全衛生法危険物・引火性の物
名称等を表示すべき危険物及び有害物
名称等を通知すべき危険物及び有害物
作業環境評価基準
特定化学物質第2類物質、特別有機溶剤等
特定化学物質特別管理物質
健康障害防止指針公表物質
港則法その他の危険物・引火性液体類
航空法引火性液体
道路法車両の通行の制限
消防法第4類引火性液体、第二石油類非水溶性液体
水質汚濁防止法指定物質
悪臭防止法特定悪臭物質
船舶安全法引火性液体類
大気汚染防止法揮発性有機化合物
有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質
海洋汚染防止法危険物
有害液体物質
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) 第1種指定化学物質
外国為替及び外国貿易管理法輸入貿易管理令第4条第1項第2号輸入承認品目「2の2号承認」
輸出貿易管理令別表第1の16の項
輸出貿易管理令別表第2
特定廃棄物輸出入規制法
(バーゼル法)
廃棄物の有害成分・法第2条第1項第1号イに規定するもの
労働基準法
(疾病、がん原性、etc)
疾病化学物質

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
[注意] 本SDSはJIS Z7253:2012 に準拠して作成しています。